TUNE UP平山雅一フルチューンナップ

MOJANEレビュアー 平山雅一くんのフルチューン

みんなのフルチューン|フリーライディングボード乗り分け編

複数のボードを余すところなく活かすチューンナップ

ニューモデルのレビューやチューンナップモニターとしてMOJANEの活動に協力してくれている平山雅一くん。当ブログの読者にはお馴染みの存在ですね。

彼が約半年間のスノーシーズンを滑り切るために、MOJANEがチューンナップを行っているボードは6本。この数のボードを乗り分けるとなると、メンテナンスやギアマッチングはかなり複雑化するものですが、平山くんのプランは見事なものです。

今回は、彼がどのようにボードの使い分けを考えているか、そしてそのために僕が仕込んでいるチューンナップを公開します。

「増えてきたボードを活かし切れていない」という方、「手放すか・維持するか」迷い中の方にも、きっと参考になるはずです。

季節、場所、雪質。どの板で、どう滑ろうか。

平山雅一 BURTON CUSTOM X FV

平山くんのボードのチューンナップは、シーズン全体を考えて話し合うところから始まります。

「今シーズンは何をどう使ったか」「チューンの効果は出ているか」「次のシーズンはどうしたいか」といった話から発展して、「この要素をもっと引き出せる?」「もしかして、このボードの可能性ってここにあるのでは⁉」と新たな見解に到達することも。

ボードを維持するためのお手入れを基本に、好みの乗り味に近づけたり、時には実験的なチューンを行うこともあります。

25-26版 平山チューンの施工メモ

平山くんの所有ボード

平山くんは、ボードの特性や状態によって1軍、2軍にクラス分けし、スターティングメンバーを編成しています。

ニューボードは1軍スタートですが、2軍に移行したボードがチューンによって1軍復帰!ということもあります。

乗り込むことで起きるボードの変化や、新しいボードのフィーリングが加わると、それぞれのボードの役割が変わってくるので、毎年スタメンが再編されます。

NEVER SUMMER PROTO ULTRA 23-24

乗り分けテーマ:アイシーコンディションや、春のうっすら凍ってるコンディションで、ハイパフォーマンスダッグスタンスカービング。

「しばらく降雪が無いピステンバーンでカービングをして、逆エッジギリギリのヒリヒリする感じを楽しみたい!」という、新たなリクエストがありました。カービング勢からのフィードバックと過去の施工例をヒントに完成させていく予定です。

PROTO ULTRAはロッカーベースのトリプルキャンバーなので、噛ませる力とスルスルした動きの両立を期待して、昨シーズンはベース2° サイド2° =90°のエッジ角を施工しました。

ところが、動きが簡単になり過ぎて、平山くんが求めていたインパクトが薄れてしまいました。(僕にとっては乗りやすく良い感触だったので、レベルに合わせたチューニングの重要さを再認識。)

25-26シーズンは前回の改善+リクエストを考慮してベース 0 or 0.5° サイド2° = 88°or 88.5°にします。

サンディングマシンでフルサンディングをしてベースエッジを0に戻し(できれば0.5°できなければ1°) 、サイドは2°(必要に応じて変更)を予定。また、今までダリングを入れていた部分のエッジも全て立たせます。

ワクシングは、昨シーズンサーモバックでじっくり仕込んでみたところ、シーズンアウトまでピカピカだったので、シーズン中に2〜3回ホットワクシングができれば最高の状態で4月を迎えられると思います。

UMLAUT TWIN

乗り分けテーマ:パウダーコンディションを、楽に気持ちよく。

23-24に施工したチューン(ロッカー部分のエッジを少し伸ばし、フルサンディング)がハマり、使用頻度が上がったボード。カービングが最高だったと嬉しいレビューをいただきました。

ボードの特徴と用途、チューニングが噛み合った良い事例です。その内容を継続中。

フルサンディングから2シーズンが経ちましたが、滑走面の状態はとても良く、平山くん的にも「完成されたボード」として満足してもらえています。

ただ、エッジが少し荒れてきたので、これまでのベース2° サイド1° = 91°から、更にネクストレベルに引き上げるチャレンジがしたいと提案しました。

僕が考えているのはベース2° サイド2° = 90°。ハイブリッド・キャンバー構造なので、ロッカー部分のエッジからベース角度を設定してみます。

滑走面は、今季入った傷をごく薄くサンディングして直し、POW WAX2.0(仮)のテストをします。

今回のワックスレシピは、山嶺と山麓で雪質が変化する3月頃を狙ったもの。雪の汚れが目立つ前の段階で生じる摩擦に対抗できるか!?効果を期待しています。

CAPITA SUPER DOA 21-22

乗り分けテーマ:春、中山峠や長嶺でかっ飛ばすボード。ストラクチャーが入ってるので、春に走らせたい時は絶対ハズせない1本。

春に的を絞ったボードで、状態もよく特に問題がないので、痛んできたエッジを磨く程度の作業です。ベース1°サイド1° =90°を維持します。

BURTON TRICK PONY 15-16 3代目

乗り分けテーマ:パウダー、シャバ雪、アイシーまで様々なコンディションで使えるトータルバランスに長けたTRICK PONYにしたい。ボードチェンジがしにくく、雪の状態が読めない(混在する)3月上旬のルスツのような場で活躍するボードに。

元々は、パウダーでスルスルと足元が振れる様に動かすことを目的としていたので、エッジはベース2° サイド1° =91°を作っていました。

さて、今回。度重なる滑走とワクシングで滑走面が乱れてきているのと、本人のスキルも上がっているので、25-26はフルサンディングでベースを1.5°に、サイドは2° =89.5°に調整して、よりカービングが楽しめる仕様に戻してみたいと思います。

ベースは1°でもよいかもしれませんが、山麓エリアのシャバシャバ雪や山頂のパウダーでの動きを考えると、やや遊びの幅が失われるかな?と考え、よりアイシーコンディションを意識してベース1.5°にしました。

この角度バランスは初めての試みですが、戻せる範囲なのでトライしてみます。

BURTON CUSTOM XFV 156 20-21

乗り分けテーマ:底あたりのないディープパウダーでトリックを繰り返す為に、シャープなエッジで反応よく。

新品の時と比べ「張り」はだいぶ柔軟になってきたものの、まだまだ1軍。

これまでベース2° サイド1° =91°にして、エッジはキャンバーの山の外側を立たせるよう施工していました。

このチューニングに最初は違和感があったそうですが、エッジが短く感じられるダブルキャンバーの有効エッジが長く使える様になるとのこと。ダブルキャンバー系で短かさを感じている人に良い加工かもしれません。25-26もエッジ角は継続します。

滑走面は、使い倒した感をフルサンディングでリフレッシュ!

このボードは彼の本気のスノーボーディングを支える一本なので、「新たなワクシングテストは行わず、確実性の高いPOW WAXでいってくれ」との要望がありました。

エッジの角度も変更せずに、ロッカーの部分は遊びを作り、キャンバーの山外側のエッジをシャープに整える。目標は、XFV156よりも走らせること、です。

BURTON CUSTOM XFV156 23-24

乗り分けテーマ:主にハイシーズンのメインボード。20-21年版よりもロッカーはゆるいが、カービングも含めて楽しむ。

XFV 154と同じくベース2° サイド1° =91°ですが、XFV 154とは逆に内側のFVを立たせています。

XFV 154と比べてレングスが長い分、エッジ外側をルーズに仕上げることで、長さを感じさせない狙いがあり、うまく効果が出せました。

ロッカーベースのダブルキャンバー/トリプルキャンバーのエッジングの一つの答えになったと思います。

25-26はエッジを維持し、POW WAXを施工するのみ。

25-26に向けたチューンのポイントはエッジ角

エッジ角確認:エッジチューン

ベースのエッジを2°を落とすエッジチューンは、パウダーライディング、ジビング、フリーライディング、初心者にも扱いやすい万能なエッジ角です。

BURTONやSEASON、K2といった人気ブランドでも、ファクトリーチューンの段階で2°落としているモデルが見られます。

ベースエッジがスルスルと抜ける乗り味がフリースタイルボードに向いている、ということで平山くんのボードラインナップでも数本にセットしていました。

ただ、スキルの向上や乗り方、用途の変化により、来季は2°落としていたボードのベース角度を0.5°~1°に戻してみることにしました。

滑走面の素材は厚さ数ミリなのでベースエッジを戻すフルサンディングは限度がありますが、2回くらいなら十分耐えてくれます。

ベースエッジが0°に近いと、逆エッジのリスクが高まりますが、その分、エッジングの反応が良くなります。ベースの角度を戻すことで、より精度の高いライディングが求められるということです。

特に、NEVER SUMMER PROTO ULTRAでは「ヒリヒリとしたライディングを味わいたい!」という平山くんのテーマに合ったベース角になるはず。

また、僕の挑戦としては平山くんの滑りをイメージしながらダリングに頼らない施工方法を試みます。

平山くんが求める乗り味とチューンナップの関係

平山雅一

平山くんのボードコレクションを見ると、同じモデルを乗り継いでいたり、年代違いで所有していることが分かると思います。

ただ、同じモデルであっても年式で生じる違いや、同じ年式でも起こる個体差まで見抜いてしまう感覚の鋭さにより、試行錯誤している姿も見てきました。

僕はショップとしてそれらのボードの購入も見届けてきたので、どのボードにも思い入れがあります。

例えば初代のTRICK PONYは膝くらいのパウダーコンディションでのファーストプライオリティーでした。その乗り味を失いたくない!という思いで買い足したTRICK PONY16-17は、すでに初代と違ったテイストになっていた為、使い方を模索しながらチューンナップのテストを続けてきました。

平山くん

TRICK PONYは初代の方が浮き感と軽さがあり取り回しも良く、16-17モデルはより固さと重量感がありました。

初代のようにパウダー専用機として乗ろうとした時、僕のスタイルで比べた場合は劣ると感じてしまいました。

ただ、16-17には安定性が感じられたので、薄いパウダーや荒れたコンディションにも対応できると思い、よりオールラウンドな使い方に振りました。

結果的に、1日の中でコンディションが変わりやすい3月などに使うようになりました。

そうすると自ずと希望するチューンナップも変わってくるわけで、最終的には全然違うオーダー(ツルツルと足元を立てる)になりました。

その後リリースされたCUSTOM X FVがファーストPONYの座に入れ替わるも、今やX FVも廃版に…。ラストモデルをサイズ違いで揃え、気に入った乗り味をキープしています。

好きなモデルの乗り味が毎年マイナーチェンジされていくことや、モデルそのものが変わっていく。その中で、自分好みのニューボードを探していくには…。

こうしてMOJANEブログのある種狂気的な試乗レビューや、チューンナップのテストといった取り組みに繋がっていきました。

平山くん

どのモデルも年式が違うとスペックに変化があり、気に入って乗り込んできたモデル程、細かな変化にも気づいてしまうという悲しき性。

違う!!と感じたときの落胆も大きいのでしょうね。

おそらくそのモデルに初めて乗った人なら気にならないだろうな、と最近分かってきました(笑)。

僕の場合は、朝~晩まで、初冬~GWまでと時間帯や季節のレンジが広いので、狙い通りに使えなくても違うシチュエーションでの適正が見えてくることが多いです。

スタイル的にも、パウダー、ターン、ジャンプとやりたいことが多く、一軍を大切に使うために二軍制を採用しているので、自ずと本数が必要になってくるので必ずどこかのシチュエーションには当てはまる感じになっていますね。

そこに合わせてモロさんにチューンをお願いするようにしています。

平山くんからのフィードバックはいかに…!?

平山雅一 never summer

平山くんと共にチューンナップに取り組み始めて、はや10年。

毎年課題と疑問が生まれ、すぐに答えが見つかることもあれば、未だ解決できないものもあります。

その時々で感じ方も変わり、リクエストも変化していく。 そして、毎年少しづつですが、チューンナップの結果が出せていると実感できるのも嬉しいです。

僕たちの目標は、どんなコンディションでもベストフィーリングを得ること。

全ての平山ボードを理想通りに仕上げることは未だできていませんが、今後も意見交換をしながら向上させていきたいと思っています。

モロのつぶやき

平山くんの所有ボード

スノーボードにのめり込んでいくと、徐々にボードが増えていくのは仕方のないこと。

年数が経っているから。乗り味に飽きたから。新しいボードが欲しいから。

様々な理由で手放すことを考えている人も多いと思います。

良質なスノーボードにはコンセプトがあります。乗り味が多少合わないと感じても、乗り方や合わせるギアをボードのコンセプトに少し寄せたり、チューンナップ次第で新たな楽しさが発見できる可能性があります。(フレックスだけは変えられませんが。)

この先も乗り続けたいと思える自分の一本をチューンナップで完成させる。そんなアプローチもあることを知ってもらえたら嬉しいです。

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  1. 2025年内にご返却するチューンナップの受付は、6月15日を以て終了しました。
    受付は毎年3月末~6月頃、上限に達し次第締め切りとさせていただいております。

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