適切なセッティングはスノーボード上達の近道
ひとりひとりの体格や技術レベル、滑りのスタイルに合わせてバインディングを調整し、スノーボードに取り付ける作業を”セッティング”といいます。
「スノーボード購入時にお店で取り付けてもらったまま何年も乗っている」という方も多いと思いますが、その状態が乗り手に適しているかというと、ほとんどの場合はNO。せっかく高価な道具を揃えても、セッティングを疎かにしては、それぞれの道具の性能を生かすことは出来ません。
セッティング次第で滑りやすさ、スノーボードの上達にも大きく影響します。実際にやってみると難しいものではありません。ぜひ方法を覚えて、今の自分に合ったセッティングを追求してみませんか。
セッティングの仕組みを知ろう
スノーボードは、体型・レベル・滑り方に合わせて、両足の幅や角度などを自由に変えることができます。
そこでポイントとなるのが①スタンス②スタンス幅③アングル④センタリング⑤バインディングの調整です。
今回はフリースタイルボードを使用し、セッティングに必要な項目と基本的なセッティング方法を解説します。
①まずは自分のスタンスを確認
スノーボードでのスタンスとは、どちらの足を前にして滑るか、という事です。左足を前にして滑ることをレギュラースタンス、右足を前にして滑ることをグーフィースタンスと呼びます。
スタンスによってバインディングの取り付け方が変わりますので、スノーボードを選びに行く前に自分のスタンスがどちらなのかを確認しておきましょう。
自分のスタンスを知る方法は様々ですが、目を閉じて立ち、誰かに背中を押してもらった時、とっさに出た側の足を前足に決めると間違いがありません。一般的に、利き手・利き足であることが多いです。
例えば「サッカーボールを右足で蹴り、バスケットボールのレイアップシュートを右手で打つ」という方は正真正銘のレギュラースタンスです。どちらも左だという方はグーフィースタンスと言えるでしょう。
中には、普段は右利きだけれど野球は左バッターボックスだ、という方や、利き手と利き足が逆の方もいます。
②スタンス幅を決めよう
スタンスが決まったら次はスタンスの幅(左右のバインディングの中心から中心までの距離)を考えましょう。
スタンス幅の基本は肩幅とされていますが、自分が滑りやすいと感じる幅が正解なので、特に決まりはありません。ゲレンデで観察していると、大股開きの人や、ものすごく狭い幅で滑っているスノーボーダーもいます。
スタンス幅を広く設定すると、安定感が生まれる代わりに、足に負担がかかり疲れやすくなります。逆に、狭いスタンスはボードに力を伝えやすくターンが楽になりますが、フォームが棒立になりがちで不安定になります。また、フリーランやジャンプをメインとする人は狭め、グランドトリックは広め、という傾向があります。
スタンス幅を決める(測る)際は、実際にボードの上に足を置き、膝を曲げてみたり、滑りをイメージしながら幅を調整してください。メジャーで測りながら数値と感覚のイメージを掴みましょう。
僕の場合を例に挙げると、身長180cm、レギュラースタンスで、スタンス幅は54~56cm。この2cmの差はボードの種類や滑る環境によって変わる幅です。たった2cmですが、ターンのグリップ感でその差を感じることが出来ます。
③自分に合ったアングルをの設定
バインディングをボードに取り付ける角度をアングルと呼びます。アングルはバインディングのベースプレートにある”ディスク”という丸いパーツを回すことで、3°刻みで調整できます。
ボードの上に立った時、サイドエッジに対してつま先が垂直の状態を0°、つま先を進行方向に向けると(+)後方に向けると(-)となります。
アングルは、体型や性別、レベルや競技によっても滑りやすい設定が変わりますし、感じ方にも個人差があります。色々試して感触を得ることが一番ではありますが、過度に角度をつけることは怪我の原因となりますのでレベルに合ったアングル設定を行いましょう。
初心者の方は、横向きのまま前進するスノーボード特有の動きに馴れるまで、前後共に進行方向に開いて取り付ける事が多いです(1.)。
つま先が両方外に向いている(後ろ足がマイナスアングル)ガニ股の状態をダッグスタンスと呼びます。アヒルが歩く様子から付いた名前です。レギュラースタンスの人が進行方向を逆に乗り換えるスイッチや、ジャンプ、フリースタイルに適しています(2.)。
ノーマルスタンスの角度を更にプラスに向けると、スピードに強くカービングやターンがしやすくなります。ディレクショナルボードやパウダーボードでセッティングされることが多いです(3.)。
そして両足がサイドエッジに対して垂直になる0°の状態は、最も滑りにくいアングルとい言われてきましたが、このセッティングで頭角を現すニュージェネレーションが出てきています。試す価値はあるかも知れません(4.)。
④センタリングの役割を知ろう
センタリングとは、実際にブーツを履いてボードに乗った時、重心がボードの中心にくるようにバインディングの取り付け位置を調整する作業です。
ボードの真ん中に乗ることは、バランスが最も取りやすい基本の状態です。
初心者の方が、かかと側やつま先側にビンディングを取り付けた場合、ボードに乗った途端に片方のエッジに乗ることになり、滑ることが難しくなります。また、バインディングの位置が偏っていると、ブーツがボードからはみ出し転倒の原因に。センタリングもレベルや競技によって変わるものだと覚えておきましょう。
僕は今シーズンカービングに力を入れているので、センタリングはつま先側に寄せ、かかと側はエッジから離れるようにセッティングしています。
センタリングの調節は、バインディングのディスクにあるビス穴の位置によって行います。また、バインディングサイズとブーツサイズのマッチングによっても調整が変わるので、自分のギアのサイズを予め確認しておきましょう。
⑤バインディングの調整
スノーボードにバインディングを取り付ける前に、実際に使用するブーツとバインディングを合わせて、バインディングの各所を調整しておきましょう。
バインディング本体の調整は、ボードに取り付けたままでは行うことが出来ませんので、この作業を事前に行うことで何度も付け外しする手間が省けます。
サイズが同じだとしても、ブーツが変われば調整が必要になります。ブーツを買い替えた際は、一度バインディングを外して調整しましょう。チェックポイントは以下の通りです。
ストラップ:つま先のトゥストラップと足首のアンクルストラップがあります。多くのトゥストラップはつま先を包み込むデザイン(キャップ形状)ですが、上から押さえつけるタイプもあります。ブーツを実際に当ててそれぞれのストラップが正しい位置で機能しているかをチェックしてください。ストラップを止めるスライダー(穴があいている方)を調整し、ブーツのつま先に合わせましょう。
アンクルも同様にストラップのセンターが足首の中心にくるようにセットしましょう。ストラップの長さも調整可能です。ストラップを繋ぐビス等の取り付け位置を変えてフィットさせてください。また、ヒールカップのビスの位置を変えて、バインディング全体のフィット感を広げたり縮めたりすることもできます。
フォワードリーン:ハイバックの傾斜のことです。フォワードリーンを入れる(ハイバックを傾ける)と、膝を曲げた状態を維持することになり足に負担がかかりますが、自然と前傾姿勢になりエッジが立ちやすく迅速な動作が可能になります。スピードを出したい人にはおすすめの設定です。フォワードリーンの角度はハイバックの後ろにあるパーツで調整します。
ツインチップの場合は、両方とも起こすか、少し入れる。ディレクショナルの場合、前は起こし後ろのハイバックは倒す。パウダーボードではディレクショナルと同様のフォワードリーンにする場合が多いです。
ハイバックローテーション:ハイバックの位置は右左にずらすことが出来ます。バインディングの角度が21°以上だとヒールエッジへの荷重が伝わりにくく、パワーが必要になります。そこでハイバックをヒールエッジに平行になる様に移動させると、力のロスが軽減されます。
またローテーションにはエアトリック中に足を突き出しやすくなる(ポーク)効果もあります。主にダッグスタンスのセッティングにハマります。
MOJANE取り扱いブランドの中ではBURTONとUNIONのバインディングでローテーションを調整できますが、UNIONのローテーションはブーツへの圧迫を感じる場合がありますので確認しながら調整してください。
ガスペダル(トゥランプ)の調整:ガスペダルとは、ちょうどつま先の下にくるバインディングパーツです。
ブーツとバインディングをセットすると、ブーツの先端が飛び出ることがあります。つま先側とかかと側の飛び出し具合を均等に調整します。バインディングの先端が足の指の付け根に合うと、足の力がボードへ伝わりやすくなります。
ガスペダルにはスライド式(BURTON REFLEX,UNION BINDING)と取り付け式(BURTON EST)があります。
取り付け式は、ブーツ・ビンディングサイズによってガスペダル自体がボードからはみ出てしまう可能性があります。その場合、無理にガスペダルをセットしないようにしましょう。NOW BINDINGではガスペダルの調整機能はありません。
ボードにバインディングを取付けてみよう。
上記を元に、実際にセッティングを行ってみましょう。
必要な道具はメジャー、プラスドライバー(2番・3番)、メーカーによってレンチが必要な場合があります。
日頃から、色々なセッティングを試すためにも、最低限の工具は用意しておきましょう。
コンディションに合わせて設定を変えれるように、車内に1セット置いておいたり、携帯用のコンパクトな工具をウェアのポケットに入れておくと便利です。
※フリースタイルボードは、ノーズとテールがほぼ同じ形をしているのが特徴ですが、その中でツインチップかディレクショナルに分かれます。ツインチップは、ノーズとテールが同じ形状ですから左右どちらを進行方向にしても構わないのですが、ディレクショナルは、ノーズ(進行方向が)強調されている事が多いので、メインスタンスの方向をノーズに置くようにしましょう。
初めてのボードは推奨スタンスで
スノーボードのビス穴の一つには印が付いています。これはブランドが推奨するリファレンスポジションを示すものです。
特にニューボードはこの印にバインディングを取り付け、乗り心地を試してからスタンス幅を調節する事をお勧めします。もしもビス穴に表示が無い場合、内側から2つ目のビス穴が推奨スタンスであることが多いです。
1.自分のセッティングを決める
上記の①~④を参考に、自分のセッティング(スタンス、スタンス幅、アングル)を決めましょう。今回は、僕のセッティングを例に実際に取り付けてみます。 ボード : Fjell Snowboards Mt1230 / スタンス : レギュラー / スタンス幅 : 56cm / アングル : 前24° 後6°
2.スタンス幅のセット
セッティングの数値が決まったら、スタンス幅の調整から始めましょう。
ボードに並ぶネジ穴がスタンス幅の調節の為のインサートホールです。4×4、4×2などブランドやモデルによってその数は様々です。
まずは左右のビンディングのベースプレートから円形のパーツ”ディスク”を取り出してボードの上に置き、自分のスタンス幅に合わせましょう。
メジャーを使い、ディスクの中心から中心までを測ってビス穴を決めます。ディスクの中心からノーズまで、ディスクの中心からテールまでを測った時、ノーズ側がテール側よりも短い場合はノーズに寄っている証拠で、調整しなおす必要があります。ノーズ側に乗るととても滑りにくい為です。
逆に、テール寄りにバインディングを取り付けることを「セットバック」といいます。重心を後ろにすることで滑走性やコントロール性が上がり、パウダースノーも滑りやすくなる効果があります。パウダーボードでは、バインディング取り付け位置が始めからセットバックに設計されているボードもあります。
3.アングルの設定
バインディングを取付けるビス穴が決まったら、次はアングル角度の設定です。
バインディングのベースプレートを見ると、ディスク(丸いパーツ)には矢印、ベースプレートには目盛りがあります。この矢印と目盛りを合わせれば、3°刻みで角度をつけることが出来ます。
この仕組みは全メーカー共通ですが、0°の状態が若干内側に入るものもあります。ボードの上に立った時、サイドエッジに対してつま先が垂直の状態を0°、つま先を進行方向に向けると(+)後方に向けると(-)となります。事前に決めた角度に合わせて前後の設定を行ってください。
4.センタリングチェック
ボードにバインディングをビスで固定する際、通常、ディスク並ぶビス穴のそれぞれの真ん中のビス穴で仮止めを行います。
仮止めの後ブーツを装着し、ブーツのつま先やかかとがボードから極端にはみ出していないかを確認します。偏ったはみ出しは、ディスクプレートのビス穴の位置を変えることで解消できます。
ディスクの後ろの穴にビスを入れてると、ビンディングがつま先に寄り、前の穴を使ってビスを取り付けると、ビンディングがカカトに寄ります。センタリングが決まれば、仮止めだったビスをしっかりと締め直して完成です。
レベルやスタイルに応じたセッティング例
基本のセッティング
前15°〜18° 後ろ0°〜3°
ビギナーからプロフェッショナルまで、オールマイティなセッティングです。メインスタンスがはっきりしているので、ターンのポジションが取りやすいと思います。これから始める人も、スノーボードに慣れるまではこのセッティングで練習しましょう。
ゲレンデ中心のフリーライディング
前15°〜21° 後3°〜−6°
メインスタンスを軸とし、フェイキーも取り入れたフリースタイルボードを代表するセッティングです。ビギナーから一歩抜け出し、メインスタンスでのスピードを得たら是非トライしてください。
サイドカントリー向きフリーライディング
前21°〜27° 後6°〜12°
フリーランに強く、カービングやタイトなツリーランにも最適な大人のセッティング。カービングの重心移動もスムースにでき、滑り慣れた圧雪バーンも気持ちよさも変わるはずです。このスタンスでフェイキーも滑れたら上級者の仲間入りです。トリックやアクロバティックなスノーボードに限界を感じた方々に是非トライしてもらいたいセッティングです。
パークスタイル
前9°〜15° 後0°〜−12°
ガニ股に乗るセッティングで、トリックを意識した滑りを求める人におすすめです。メインスタンス、スイッチスタンスの両方でスノーボードしたいパークライディングにも適したスタンスです。ジビングアイテムやプレス系の技もしやすく、アクションに対するリカバリーもこのスタンスだと簡単にバランスを取ることができます。
アルペンスタイル
前30°以上 後12°以上
スラロームやダイナミックなターン、そしてスピードが命。アルペンボードのセッティングはフリースタイルとは別次元。ですが、ディレクショナル要素が強く、硬いフリースタイルボードにこのセッティングを取り入れると、カービングでエッジが入りやすくなります。新たな感覚を模索している方は是非お試しください。
困ったときは専門店へ!
様々なセッティングを試すことは、スノーボードの楽しみの一つです。仲間と意見交換をしたり、上級者からアドバイスをもらったり、専門店で相談しながら沢山のセッティングを体験して自分の身体やスキルに合った数値を見つけてください。
MOJANEでボード、ブーツ、ビンディングのいずれかをお買い上げいただいた方には、セッティングを無料で行っています。セッティングのみをご希望の場合は、3.000円(税抜)で承っています。
質問させて頂きます。
ビンディングのホールパターンは4×4です、スノーボードのホールパターン2×4に
装着可能でしょうか?
角田 小織さん
はい、可能です。ピッチは変わらないので、ワッシャーがディスクにしっかりはまればそのままお使い頂けます。ビスの長さによってはボードに凹みが付いてしまう可能性もありますが、あまり気にするポイントではないと僕は考えています。