フリースタイルボードからハンマーヘッドまで
集まれ!カービングボード!
MOJANEが取り扱うスノーボードラインナップはオールマウンテンフリースタイルが中心ですが、チューンナップではカービングボードも数多く集まります。
この記事では、カービングボードの特徴とチューンナップのポイント、実際の施工事例をご紹介します。
カービングターンに行き詰っている方、ぜひご参考ください!
どんな種類のボードも、カービングしやすく
カービングターンは、雪面をエッジで切り裂いていくようなターンのこと。ハイレベルのライディングスキルを要する「高得点が出るカービング」を目標に練習している方も多いと思います。
カービングの為のチューンナップは、技術レベルや取り組み方によって様々な考え方がありますが、MOJANEでは、一般的なフリースタイルボードのカービング性能を向上させることから、テクニカル競技やバッジテストに挑む方のご要望まで、幅広くお引き受けしています。
カービングボードの特徴
カービング用のスノーボードは、日本の大会フォーマットに合わせ、独自の発展を遂げてきました。
一般的な海外製のフリースタイルボードとは違い、アルペンボード特有の四角いシルエット(ハンマーヘッド)を取り入れ、有効エッジは長く、キックなどの遊びの要素はそぎ落とされています。
また、レーシーなターンのために、一定の重量も必要です。ハイスピードで踏み込めるだけの強度を持たせるために、金属が使われることもあります。
板のカービング性能を引き出す第一歩は、エッジ!
カービングボードに定評のある国産ブランドは、ボードの硬↔柔や、サイドカーブ / サイドカットラジアス(ターンのサイズを決める数値)によってターンクオリティーを提案しています。
そして、実際のターンで雪面を捕らえ、サイドカーブを機能させるのがエッジの役割。深く鋭いカービングターンを行うには、シャープなエッジであることが肝心です。
どれだけターンに特化したハイスピードマシンであっても、エッジの角が丸まっていては、せっかくの性能は発揮されません。
逆に、カービングボードではなくても、エッジをシャープに整えるだけで驚くほどカービングがしやすくなります。
自分のスタイルを確立するまでは、特定の角度でレベルアップを意識するよりも、とにかくエッジをシャープに保つことをおすすめしています。
目指すは“考える余裕”を生むエッジ
カービングボードに乗る方の多くは、よりハイレベルなターンを目指していると思います。
本格的な練習では意識すべき項目が多く、苦戦している方も少なくありません。例えば、ボードを立てようと集中しているうちに、他の動作がおろそかになってしまう…という経験はありませんか?
そんな時、シャープなエッジを取り入れると、難しく考えなくとも自然なフォームでターンの動作ができてしまう場合があります。
無駄な力をかけずリラックスして乗れるので、考える余裕も出てきます。ターンの楽しさが増すだけでなく、体力的にも楽に滑れるはずです。
特に、高速域・急斜面での練習は、怪我のリスクも加わります。エッジをシャープに保つことで不安要素をひとつでも減らし、頭をクリアに挑みましょう。
新品ボードならチューン不要?
国産ブランドの多くは、工場出荷時にエッジが立っている状態ですが、一定の技術を習得した方にとっては新品の状態では少し物足りないかもしれません。
また、工場では余分なエッジを落とすダリングの作業がされていないので、ボードの特徴やスキルに合わせてダリングを施した方がより良いと考えています。
MOJANEにカービングボードをお持ち込み頂く方は、プレチューン(新品のボードに最初に行うチューンナップ)で初めからエッジ調整と滑走面のベース作りを行う割合が高いです。
カービングのためのフルチューンナップ工程
①エッジ角度付け
エッジにはベース側とサイドウォール側の2面があり、用途によってそれぞれの角度を決めていきます。
ベースエッジは雪面からの“エッジ離れ”具合を調整する角度です。多くのブランドはベースエッジが1°に設定されています。角度を付けていくと、安全で逆エッジにもなりにくくなりますが、その分レスポンスやかかるGのインパクトは弱まります。
サイドエッジは1°、2°と落としていくほどエッジバイトは強くなりますが、作った角度の持続性は低くなります。
また、スライドターンを繰り返すとエッジが削れて丸まるので、サイドエッジの具合は本番用のボードか、練習用かを考慮して施工する例もあります。
ダリング
スタイルに応じて、不要なエッジを丸める作業を、ダリングと言います。
フリースタイルボードのチップのそり上がった部分はほぼダリングして良いでしょう。
ハンマーヘッドの場合、ポイントになるのは先端のわずかなチップ部分です。
人によっては先端までピンピンにエッジを立てる方もいれば、チップは丸めて遊びをつくる方もいます。
安全性の観点から「チップのエッジは丸める」を基本としていますが、深く丸めさえしなければシャープに復活させる事も出来ます。いずれ復活させたいというご希望があれば、軽く丸める程度にしますので、ご依頼時にお知らせください。
モロ仕上げ
ノーズ、テールの最も太い部分を、僕はトランジションエリアと呼んでいます。
このトランジションエリアを、その人の希望や、ボードの特性を考慮して調整するのが諸橋流の「モロ仕上げ」です。
ノーズはターンの入り口、テールは出口となり、スノーボードを立たせる時に負荷がかかる部分です。
この部分もピンピンに立たせる方もいますが、シャープな角度を残しつつ、足元よりも滑らかなエッジを作る事で、安全設計に。もちろん、また復活させる事も出来ます。
盲点になりがちなサイドウォールの仕上げ
エッジと板の間にあるサイドウォールは、ターンの最中、エッジと共に雪に埋まります。
エッジに角度を付けるためにサイドウォールを削ることがありますが、その際、削りっぱなしにするのと、削り痕を滑らかに研磨するとでは、ターンの感触がずいぶん変わります。
このひと手間を惜しまず、抵抗のないサイドウォールに仕上げます。
②滑走面のサンディング
カービングボードは常にエッジで滑るため、エッジ際のワックスが抜けやすくなります。
滑走面のエッジまわりが白っぽくカサカサしている状態は、滑走面のワックスが抜けきり、雪面との摩擦によって生じたもので、ベースバーンと呼ばれています。
特に、ハンマー形状のボードでは、このエッジ際のサンディングとワクシングを重点的に行います。
サンディングはベースエッジを整える作用もあるので、使い込んだボードには、サンディングをお勧めしています。
③ワクシング
カービングターンは身体に負荷がかかるので、ワックスの滑走効果を最大限に活用したいところです。
「キレるエッジ + 走るソール」の組み合わせは、体の使い方次第で力を逃すことも出来るからです。
MOJANEでは、できるだけベースバーンを防ぐようにエッジ際に硬いワックスを仕込み、強い滑走面作りを意識しています。ドミネーターワックスをブレンドしたPOWDER FAST WAX (POW WAX)も好評です。
※ワクシングは使用頻度に応じシーズン中に何度か施工する必要があります。セルフワクシングの為のツールやワックス選びもご相談ください。
みんなのカービングボード施工例
ここからは「カービングの質を上げたい」というテーマで行ったチューンナップをいくつかご紹介します。
スタイルや考え方は人それぞれで、極端なご要望も珍しくはありません。これぞ、カービングボードの奥深さです。
カービングボード
佐藤祥吾くん HEAD LYT等
テクニカル・カービング選手のしょうごくん。
大会では、ハードなカービングターンの他、トリックを織り交ぜたライディングも求められます。
使用しているボードは、ハンマーヘッドではなくフリースタイルボードですが、有効エッジの限界ギリギリまでシャープに立てつつ、ノーズテールキックは、グランドトリックに対応する様にダリングをしっかり施します。彼の高いスキルに合わせて、トランジションエリアは極狭、1cm未満です。
Sさま GRAY デスペラード等
「ノーズの先端からビンビンに尖らせて欲しい」というご要望は、僕にとって新しい切り口でした。
「先端が決まれば、あとは自動的に乗って行けるから楽なんです」という考え方です。また、多少荒れたコンディションでもズバズバ切り裂いて行くのだとか。おもしろい!ただ、自分のボードに施工しようとは思いません笑
Aさま OGASAKA CT等
フリースタイルボードも使い分ける、通なAさんのセミハンマーヘッドボード。カービングボードでもややマイルドな仕上げがお好みです。
重点を置いたのはエッジ離れの良さと、ダリングとトランジションエリアの「モロ仕上げ」。ターンの入り口となるキック部分には少しだけダリングを施し、わずかに丸めます。
エッジ全体はシャープにするものの、90°のベーシック角度で、極端に尖らせることはしません。
Yさま BURTON CUSTOM-X
CUSTOM-Xでカービングを極めようと奮闘中のYさま。エッジはやはりトランジションエリアギリギリまで、キンキンに仕上げています。
BURTONは基本的にフリースタイルボードなので、工場出荷時にはダリング済みです。それを研ぎ直してエッジを立たせていきます。また、BURTONは予めベースエッジが2°落ちているので、角度を作るためにサイドエッジを2°~3°削り落とします。
滑走面は、ハイシーズン中のワクシング作業の負担を減らすべく、ベースワクシングを繰り返し施工し、次のシーズンに備えます。
Tさま BURTON CUSTOM、SPEED DATE
オーンズのナイターやカチコチバーンしか滑らない(!?)という飛世さんのボードは、強烈なアイスバーンにも対応できる様に足元のエッジを重視しています。
BURTONのフロストバイトエッジ(REFポジションのエッジが噛む様に飛び出ている構造)に焦点を当て、エッジを鋭く立てています。
ベースの角度はデフォルトで2°落ちていたので、サイドエッジを2°落として90°に仕上げ、トランジションエリアは少しだけ遊びを作ります。
ロッカーボード等をカービング向けに
カービング用ボードではなくても、チューンナップでカービングが劇的にしやすくなった!というリピーターも多くいらっしゃいます。
新たにカービングボードを購入する前に手に、まずは今お使いのボードをカービング向けに施工して、性能を引き出し切ってからステップアップする、という選択も◎です。
Nさま BURTON FLAT TOP
今後の上達への進路がはっきりしたN様、ギアをステップアップする前に、持っているギアをしっかり昇華させることをご提案させて頂き、変化を楽しんでもらいました。
キャンバーアーチのないボードですが、エッジチューニングによる効果を感じていただけたようです。
ベースを2°落とし、サイドを1°にする91°。ロッカー部分はモロ仕上げにより、足元でしっかりエッジングができるボードを作りました。
Sさま BURTON CUSTOM
アルペンボードからフリースタイルボードへ乗り換える際、ターン性能 + フリースタイルを感じられるCUSTOMをご購入いただきました。
ホームエリアの環境を考慮したエッジチューニングで、アルペンボードの時と変わらずに、カービングターンを楽しんで頂いています。
ベースは2°サイドエッジを1°落とし、91°に。また、BURTONのボードはトランジションエリアが予めダリングされているので、その部分を再びシャープにしています。
Hさま FIELD EARTH Umlaut Twin
求められていたのは、浮力とキレのバランス。
フルサンディングでベースエッジを一旦0°に戻し、2°に再調整、サイドエッジは1°落としています。
乗り手のボードコントロール技術が卓越しているので、ロッカーエリアもエッジを立たせています。
所有ボードの中で2軍落ちとなっていたボードでしたが、このモデルに合うセッティングが完成し、1軍へ復帰!喜んでいただけました。サイドウォールを滑らかに整え直した効果もあったかもしれません。
このほか、Instagramのストーリーに施工事例を随時投稿しています。
モロのつぶやき
スノーボードのチューンナップは、磨き、磨いて、磨く。磨き込む作業に尽きます。
エッジのサビや傷は心地良いターンのノイズです。そのノイズをできるだけ排除し、適したワックスを丁寧に入れる。そうすることで、1つ1つのターンの感触まで心地よく、ライディングクオリティーを上げることができると考えています。
MOJANEのチューンナップは、理想のスノーボーディングを目指すユーザーからのフィードバックに支えられ、改良を続けています。
日頃からご協力頂いている皆様に感謝。
MOJANE TUNEUP
フルチューンナップ 15,400円税込(2024年内のご返却は6/31で受付終了)
エッジチューン 5,500円税込
※2025シーズンより価格改定
※ビンディングを外し、ボードのみを店頭にお持ち込みください。