藤谷瞭至くんの”個性を際立たせるチューン”を大公開
今回は、FIS公認のコンペCOWDAY2022を制したスロープスタイル選手 藤谷瞭至くんのボードに施工したフルチューンをご紹介します。
小学3年生でMOJANEチームに加入した瞭至くんも、高校最後の冬を迎えようとしています。
2017年にJSBAプロ資格を取得した後、彼が掲げた目標は「オリンピックでの金メダル」。現在はナショナルチーム入りを目指して奮闘中です。
この記事でシェアする瞭至くんのチューンナップは、決してプロレベルでしか乗れない内容ではありません。ジビングを練習している方はもちろん、気持ちよくパウダーを滑りたい方まで広く応用できます。
店頭にマイボードをお持ちいただければ、目的に合わせてご案内いたします。
成長期のギアとチューン
身体がぐんぐん成長するキッズ~ユース時代は、モデル探しやサイズ選びが悩ましいところ。若いスノーボーダーの誰もが、身体に合わない道具を使うシーズンを過ごすことと思います。
瞭至くんも例にもれず、中学時代は本来扱いにくいオーバーサイズのボードに乗っていました。
大人の感覚では「ライディングに悪影響があるのでは?」と心配になりますが、彼のリアクションはいつも「全然調子良いッス!」というものでした。身体能力が高いこともあって道具へのこだわりも少なく、道具に自分を合わせながら成績を残してきたタイプです。
チューンナップについても、彼のリクエストを聞くというより、こちらから提案を続けて彼の好みを慎重に探ってきました。 本格的にFISの大会へ挑むには、道具への信頼が一層大切になってくるだろうと考えていたからです。
どんなギアでも器用に乗りこなしてきた瞭至くんに変化が起きたのは、彼自身で道具を選び始めた頃でした。
まずはボード、次にブーツ、ビンディングの順に「これがいいです」と、意思表示をしてくれるようになりました。 経験を積み、比較対象が増えていく中で、自分の好みが分かってきたのかもしれません。
瞭至くんが選んだROME STALE MOD
2021-22シーズンに瞭至くんが選んだボードはROMEを代表するトゥルー・ツインチップROME STALE MODでした。
それまでは身長との兼ね合いでNATIONALというモデルに乗っていましたが、体格が出来上がってきたところで、最も重視していたトゥルー・ツインとしてSTALE MODが選択肢に入ったという経緯です。
また、STALE MODはスロープスタイルを主戦場とするノルウェー代表のストーレ・サンドベッグのシグネイチャーボードでもあります。プロモデルといっても特に癖はない様で、同じ競技で戦うには心強いボードです。
ジビングに特化したチューンで、次のステージへ
スノーボードスロープスタイル競技は、人工物をステージにしたジビングとジャンプ台(キッカー)、これら2つのセクションでスキルとスタイルを競います。 また、スロープスタイルの選手の多くは、大きなキッカーを単発で飛ぶビッグエア競技にも出場します。
チューンナップでは最低限、以下の3点を押さえておかなくてはいけません。
- ジビングでエッジが引っかからない様にすること
- 耐久性のある滑走面作り
- 大きなジャンプ台でも安心できるアプローチと着地
STALE MODに乗るにあたり、僕が用意したチューンナップは3種類ありましたが、今では1つに絞られました。
それは、瞭至くんが最も得意とするジビングをどう攻略するか?に焦点をあてたチューンです。
ソールは人工物と接触するので、すぐに傷だらけになってしまいます。ソールがピカピカであることよりも、エッジをいかに守るかが大切だと考えました。
また、セクションに日光が当たり温まっているとボードが滑らずつんのめってしまうこともあります。こうした恐怖心を軽減するために、微調整を続けています。
ソールサンディング
ROMEのソールは、メンテナンスさえすればよく働いてくれるという印象です。まずはソールサンディングを薄くかけてクリーニング。このひと手間でワクシングの仕上がりが高まります。
エッジ
複雑な動きを織り交ぜて人工物をクリアしていく中で、セクション上でボードが引っかかる事なく果敢に攻めれるボードにする必要がありました。
セクションにエッジがなるべく当たらない様に、ボードのベースエッジを2°削ると決めました。これにより、ダイナミックなアプローチが可能になります。
ただ、アプローチでの繊細な動きには、ある程度のエッジの角度が、ビッグキッカーにも対応するためには、強いエッジングが必要です
瞭至くんはボードコントロールが上手なので、あえてエッジは立てず、サイドは1°削り鈍角なエッジに仕上げました。
STALE MODはオーセンティックなフルキャンバーボードなので、ダリングは引っかからないよう完全に丸く仕上げます。
ワクシング
シーズンが始まると、メンテナンスに時間をかけられなくなってしまいます。強いソールはオフの間のサーモバッグで作り上げます。じっくりと、十分にベースを浸透させることで、シーズン中のメンテナンスもかなり楽になります。
FISの大会ではフッ素ワックス使用禁止のレギュレーションが設けられている為、滑走ワックスはHERTEL WAXです。 ワクシングも簡単なので、大会を回る選手にとっては大きなアドバンテージとなります。
バックアップボード
瞭至くんに限らず、選手には、長い冬を戦い抜くためのバックアップボードを持つよう伝えています。
シーズン中のメンテナンスローテーションを組む為にも、予め1~2本の予備があると安心です。
また、外気温が高い季節にメインボードと同様のベースづくり工程を踏むことで、フィーリングの誤差が生じにくくなります。
まだまだ続く、挑戦者の道
2022年3月、瞭至くんは初めての国際大会、LEYSIN22 – FIS PARK & PIPE – Junior World Championships 2022を経験しました。
未来のトップライダーが集結するこの大会は、オリンピック以上にダイナミックなセクションで行われたそうです。 そのスケールの大きさとスピード感は、瞭至くんにとって刺激的な体験となったに違いありません。
もちろん、今後はチューンナップも更なる研究が必要になります。彼からの要望も増えていくことでしょう。
選手と作るチューンナップは、僕だけでは到底気付けないポイントがたくさんあります。僕自身も研究を続けながら、彼の更なる成長を応援したいと思います。
藤谷瞭至2021-2022使用アイテム
ROME SDS “STALE MOD 153 “
NOW BINDING “BRIGADE”
DC SHOE “TRAVIS RICE ”
ANON “SYNC”
MOJANE FULL TUNEUP¥13.200(税込)
他店でご購入されたボードや、古いボードもお気軽にお持ち込みください。初めての方も大歓迎です。