祝、NSA2級合格!
MOJANE SURFのリーダーが開いた突破口
サーフィンには、他の多くのスポーツと同様に検定や資格があります。日本サーフィン連盟(NSA)が主催するサーフィン検定2級合格者は、北海道では通算十数名という狭き門…。
2017年秋、そんな超難関の2級に合格した堀田 雄也くんは、北海道サーフシーンの”今”を開拓するMOJANE SURFのリーダー的存在です。
9月某日、日帰りサーフトリップにて、級検定当日の心境や日々の練習法、次に掲げる目標など、サーフィンへの熱い思いを語ってくれました。
サーフィンの難しさに行き詰っている人、どう練習したらいいか迷っている人にも読んでいただきたい内容です。
INTERVIEW堀田 雄也 YUYA HOTTA
ついに手にしたNSAサーフィン検定2級
moro : まずはNSA2級合格おめでとうございます。MOJANE SURFメンバー全員が待ち望んでいました。4年越しの挑戦となった今シーズンですが、「今回はイケる!」という感覚はありましたか?
yuya : 正直なところ、50/50でした。審査時間の15分間の中でポテンシャルのある波が1本か2本来てくれれば、メイクできる可能性はあると思っていました。
moro : 検定当日の波は、台風の影響もあって大きかったと聞いています。どのような意気込みで臨みましたか。
yuya : 波は胸~肩~頭くらいのサイズがあって、僕が得意とする波でした。波数も多かったですね。全部で4本の波に乗った中で、最初から良い波が来てくれて、パドルバックしつつ2本目、そして3本目もすぐにタイミングが合い、波待ちはほぼしませんでした。「リラックスして、いつも通りのサーフィンをやるだけだ」という気持ちでした。
moro : 級検定の審査では、各級で必要とされる技を全てクリアした人から名前を呼ばれていくので、その場で合否が分かります。合格を知った時の率直な感想を教えてください。
yuya : まずはもう、ホっとしましたw「よかったぁ…」っていう感じで、嬉しいとはまた全然違った感情でしたね。
堀田 雄也20歳、サーフィンとの出会い
moro : 雄也くんがサーフィンを始めたきっかけを教えてください。
yuya : アルバイトの取引先の方に誘われたのが最初です。20歳でしたね。流行もあって、僕もやってみたいと思っていたところだったので、中古の道具を譲ってもらって揃えました。
moro : サーフィンは上達にとても時間がかかるスポーツですが、最初は誰かに習いましたか?また、どんな練習をしていましたか?
yuya : 我流です。当時は誰かに教わるとかよりも、テクニック本で読んだことをスケートボードで練習して、影を見ながらフォームを確認して、それを海で試す。そんな方法でアルバイト仲間と一緒にサーフィンを楽しんでいました。
行き詰った自己流サーフィンを変えたコンペティション
moro : これまで多くの大会で結果を残してきた雄也くんですが、大会に挑戦するきっかけは何だったんですか?
yuya : 我流でサーフィンをやっていると、ある程度でストップしてしまうんですね。全く上手くならなくなったんです。大会に出たら上手くなるという話を聞いて、出てみようと思いました。緊張するのは凄く嫌でしたけどね、でも上手くなりたいじゃないですかw
moro : 大会や級検定に出場することで、様々な年代や他エリアのサーファーを目にする事になったと思います。刺激を受けたライバルはいましたか?
yuya : 自分の中で勝手に決めたライバルはいました。大会は、ホームビーチ以外の人も多いので、見たことないサーフィンが見れるんですよ。個性あるサーフィンをする人もいるし、上手な人も多いから、ヒントは沢山あったかもしれません。具体的に誰かを目指すことよりも、試合で技を綺麗にメイクしたいという思いが強かったです。
堀田流、スランプの突破法
moro : NSA2級を目指す中で、MOJANEメンバーは雄也くんが苦しむ姿もたくさん見てきました。
yuya : 全然上手くならない時期ってあるんですよね。そして同じ失敗をするんですよ、サーフィンって。僕の場合は、田中岳宏さんのコーチングを受けていたので、困ったときに聞ける環境がありました。アドバイスを聞いて、修正点が直るまで意識し続けるというか…出来ないことに向き合い続けて、一つ一つクリアしていく感じです。出来ないことをやろうとすることがサーフィンですから。でも、出来ない時期が長く続くと性格が暗くなるっすね。
自己評価だけでは進まない!?検定試験でサーフィンの答え合わせ
moro : NSA2級を目標に設定したのはいつ頃でしたか?
yuya : ある大会のAクラスで優勝して、2級保持者がいるSクラスにランクアップした時です。手が届かないものだった2級が身近になってきて、俺も取れるのかなって。まだまだ上手くなりたいという気持ちからでした。
moro : 大会で結果を出しても、より高い目標を掲げて練習していたんですね。
yuya : 検定は、技術的に最も分かりやすい目安になります。自分のサーフィンを見る機会って少ないので、自分では出来たと思って盛り上がっていても実は全然出来てなかった、なんてこともあるんですよ。目を覚まさせてくれるものが級検定です。級検定に受かれば、この技は確実に出来ているという証明になります。それは自信に繋がるし、次のステップに進むことが出来ます。
サーフィンの練習法とコーチング
頭で理解し、陸で覚えて、海へ向かう。
moro : サーフィンの上達には目標設定の他にどんな努力が必要だと感じていますか。
yuya : 田中さんのコーチングを受けるようになってからは、努力というよりも、言われたことを全部出来るようにするつもりで取り組んできました。でも、今も田中さんが言うことの半分くらいしか出来てないかな。2級を知っている田中さん指導の下、2級の演技を知ることから始めました。まずは頭で覚えて、次にスケート、最後にサーフィンで体に落とし込む、という順序です。
サーフィンにおけるスケートボードの重要性
moro : 恐ろしく片減りした雄也くんのウィールには衝撃を受けました。このウィールからも雄也くんの練習量が伺えます。やはりスケートボードは重要な練習方法ですか?
yuya : サーフィンはスケボーがなかったら絶対に上手くならないです。いきなり海の上でアップスの動きをマネするって無理でしょう?体の動かし方が分からないじゃないですか。まずは陸で体に動きを覚えさせることが正確なフォームに繋がると思います。
田中鬼軍曹による”2級に受かる為”のコーチング
moro : MOJANEのアドバイザー兼コーチを務める田中 岳宏さんとの出会いは?
yuya :高校時代のバイト仲間(安田祐介くん)が、海でケタ違いに目立っていたサーファーに「どうすればそんなに上手くなれるんですか?」って話しかけちゃったんです。それが田中さんでした。
moro : 田中さんのコーチングを受けて、良かった点はありますか。
yuya : 田中さんは、技術を見せるだけじゃなく言葉で説明してくれるので、とても分かり易くて無駄がないと思います。例えば「オフザリップはどうするんですか」という質問に、オフザリップという技を言葉にしてしまうんですよね。”レール”っていうワードが凄く難しく感じていた時も、「レールを使えばいいんだよ」ってよく聞くけど”使う”という体感が分からない。そこを言葉にして頭に入れてくれるんです。一つ一つの技の正しいフォームの実演と解説をしてくれますから、要は、波に乗った時にそのフォームが取れさえすれば、技は出来てしまうんですよね。敵わないっすね。
やる気に火をつける
上達する為の道具選び
moro : 長いサーフィン生活の中で、たくさんの道具を使用してきたと思いますが、今までに乗ってきたサーフボードについて教えてください。
yuya : 今は3Dimension surfboardsのFUSION(オールラウンド)です。特にオンショアで反応が良く、コントロールしやすいという特徴があります。3DimenshionではこれまでにZEPHYR、6SENCEが2本、FUSION、SPOOK by EISHIN、FUSION EPS、計6本をオーダーしました。シェイパーのCOCOさんに全てお任せして作ってもらっています。オーダーシートのコメント欄にはいつも「2級を目指しているので、受かるようなボードをお願いします」って書いてきました。
moro : 初めて雄也くんがMOJANEに来たときは、結構分厚いボードに乗っていましたよね。3Dimensionでは、それまでのボードと比べてかなり薄くなりましたが、その変化はどうでしたか?
yuya : ボードが薄くなったことで当然浮力が落ちて、テイクオフは遅くなりましたけど、ポジションに気を付けることで解決しました。それまではパワーゾーンから離れた場所でサーフィンをしていたのが、パワーゾーンにいないと板が走らないから、居るべき場所に近づくことが出来たと思います。ボードの変化によって、ピークを見る目を持てるようになったし、波にタイミングを合わせられるようになったと実感しています。レールは入るし、リップは切れるし、サーフィンがもっと面白くなりました。
moro : 試乗会や仲間同士の貸し借りなどで、様々なサーフボードに乗る機会もあると思いますが、気になるブランドはありますか?
yuya : 比較って良くないのかも知れないですけど、某有名ブランドのボードはバランスが良くて、波待ちやパドルの時点で全くブレないし乗れちゃうんですよ。これが最先端か!と驚くと同時に、俺じゃなくて板が良くて乗れるんだな、というイメージを持ってしまったんです。3Dimensionは全然違うんですよね。新しいボードが届くと毎回手こずるんですけど、それを乗りこなせるようになった時に「あれ?少しサーフィン上達したかも」って感じるんです。僕にとっては「まだまだ上手くなれるぞ!」って自分のポテンシャルが感じられるボードかどうかが大切で、それが3Dimensionのサーフボードなのかな、って思います。
moro : なるほど。道具選びには、自分がどんなサーフィンがしたいのか、目的は何なのかが重要ですよね。自分にフィットするブランドや信頼できるシェイパーに出会えると、サーフィンの世界は一気に広がります。そういった出会いを提供出来る様に僕も頑張ります。
北海道のサーフ環境と目的を持った1本のライディング
マナーとマイルール
moro : サーフィンは路上駐車や海の中でのトラブルなど問題も少なくありません。サーフィンをする上で何か気をつけていることはありますか?
yuya : 1つ、自分なりに決めていることがあって。海では自分に優先権があってピークにいるときでも、パドルで追って来る人がいたらなるべく先に行ってもらうようにしています。ローカルの人だったり、上手な人だったり、色々なライディングを見たいのもありますが、危険を避ける為でもあります。人が多い日は特に、インサイドですれ違うと危ないですよね。そういう中で優先権やサイズだけで波を選んでいると、なかなか練習がはかどらなくてもったいない。僕は1ライドに対してメイクすることを意識しているので、誰もいない波を選ぶ方が練習に集中できると思っています。あと、当然前乗りはしないですね。
小波もオンショアもサーフィン
moro : 小波が多いイメージの北海道でのサーフィンをどのように考えていますか?
yuya : 北海道は調子良いですよ!というのは、僕は江別市に住んでいるので、近いポイントだと日本海も太平洋も1時間15分位で着いちゃうんです。日本海か太平洋、必ずどちらかは波があるので、波が無いとは全く感じてないですね。
moro : 真冬もサーフィンを続ける理由は、やはり2級という目標があったからですか?それとも冬の間にスキルを落としたくないから?
yuya : 冬はめっちゃ寒いです。でも実は、寒いと感じるのは着替え中と海に入って10分位なんですよ。キープサーフィンの精神はもちろんですけど、やっぱりもっと上手くなりたいから。仕事で溜まった疲れが、サーフィンの疲れに変わるだけで気持ち良いんです。ちなみに、冬の魅力はオンショアです。
moro : オンショアでジャンクな波になると、雄也くんを筆頭にMOJANEメンバーが集まりますよね。以前、雄也くんが「コンディションが悪いからこそ、貸し切り状態で仲間と楽しめる」と言っていたのを覚えています。
yuya : ジャンクな波、大好きだねw 無風メンツルは嫌いな人いないでしょ?それ以外ならやっぱりオンショアっす。北海道にはオンショアを交わす良いポイントもありますし。人がいない海で波数があると練習になりますよね。それはそれで楽しまないとね。
難しいから面白い。サーフィンの魅力
moro : なぜ、これほどまでにサーフィンに打ち込んできたのか、その魅力は?。
yuya : 1度体験してしまいましたからね、サーフィンを。難しいんだけど、その難しさが面白く感じたんですよ。なぜハマったのかって聞かれると、ただただ楽しい!ってことしかないですね。上手く出来ない間はもちろん苦しいですけど、面白いですよね、やれば誰もがハマると思います。
moro :分かります。僕は、初めて波のフェイスを見た時、感動して手足が震えました。乗って、立って、横向いて、フェイスに乗れた時の景色と感覚に、板が持てないほど感動したんです。それをすぐに田中さんに報告したら「サーフィンの上達には4つの階段がある。まずはテイクオフ、次に横に進めた時、その次がオフザリップで、最後はバレルなんだよ。」って。それを聞いて更に感動しました。
サーフィンと家庭のバランス
moro : 仕事もあり、家庭もあり。サーフィン、仕事、家族、それぞれのバランスを取る秘訣は何ですか?
yuya : 週2回の休日は必ず海に行くし、バランスは全く取れていません。それでも応援してくれる家族には感謝しかないです。今回の2級合格を一区切りに、家族にも時間を使いたいなと思います。家族で出かけたいですね。もちろん今後もサーフィンしたいっすけど、どうしたってサーフィンしていたいですよねw
師弟対決勃発?田中軍曹への挑戦状
moro : 今までで、記憶に残っているサーフィンがあれば教えてください。
yuya : 最近だとやっぱり、2級に受かった時の波とサーフィンは、自分でも悪くなかったと思ってます。でも、実はちょいちょい師匠(田中さん)を越えるオフザリップは出してますよ!田中さんの前ではなかなか調子出ないですけど、いつか下剋上もありかなと思っていますw
moro : おぉ、それは期待していますw 大会で田中さんと並んで戦う姿、見たいですね。
yuya : 大会でMOJANEのメンバーが同じヒートで戦うっていうのは是非やりたいですよね。近い将来”Sクラス”という同じ条件で、皆で出場したいです。
moro : ちなみに、今後のMOJANEに期待することや要望はありますか?
yuya : 諸橋店長のサーフィンスキルアップです。僕の中では期待しています。あとは好きなようにやってください、ついて行きますから。
そして、これから目指す目的地
moro : NSA2級という大きな目標を達成して、これからどんなサーファーになりたいか、イメージはありますか?
yuya : 理想は、死ぬまでサーフィン出来たら良いなと思っていて。歳を取れば回数は減っていくだろうけど、体が動く限りは続けていたいです。近い目標では、技術的にメリハリをつけたサーフィンをしたい。力を抜くとこは抜いて、ボトムでがっちりためて、トップで爆発させるっていうイメージですね。
moro : 僕としては、雄也くんのダイナミックなフリーサーフィンをずっと見ていたいです。
yuya : 皆が憧れる”フリーサーフィン”って、コンペと対極にあるものではなくて、コンペを重ねてきた人たちの領域でもあると思うんです。コンペのサーフィンのラインっていうのは大切にしなくちゃいけないと思いますね。プロみたいに、パワーゾーンにくっついて、スープの近くにいるサーフィン。リスキーですけど、そんなサーフィンがしたいです。
自分の為のサーフィンを追求する人へ
moro : 次世代に繋げる動きとして、教える側に立つ事に興味はありますか?
yuya : 頑張って海に入ってる人には、自分ができる範囲でいつでもアドバイスしたいと思っています。他のショップだからとか、そういうのは関係なく、上達を目指しているなら思い切って質問して欲しいし、是非MOJANEに来てもらいたいですよね。
moro : 上手くなりたい人にとって最良の環境を作ることが僕の仕事ですから、MOJANEはいつでも門を開けていたいと思っています。
yuya : ショップのしがらみを気にする人も多いですけど、それって解放できると思うんです。だって自分の為にサーフィンしてるんだから。僕はショップの移籍を経験しましたけど、自分で壁を作らずに、より良い環境に行くことで結果的にサーフィンに対する意識や考えが変わりました。
moro :MOJANE SURFは、メンバーが刺激し合って皆で作ってきたものです。真剣にサーフィンをしているメンバーに対して、僕も真剣にその環境作りに取り組もうという意気込みです。チャレンジングな分野だからこそ、という意味でも。
yuya : 皆が真剣だから、俺も負けじと真剣になっちゃいましたよね。今回2級に受かったのは自分の力だけじゃなくて、田中さんをはじめMOJANEの仲間、3Dimensionの皆さんやREPの小早川さん、みんなから力を借りた結果だと思ってます。ありがとうございました。
moro :最後に、級取得を目指しているサーファーにメッセージをお願いします。
yuya :何が何でもっていう気持ちが大事です。覚悟を決めて、取れるまでやって欲しいです。逃げなければ必ず受かります。
1979年生/168cm/60kg
ホームビーチ:浜厚真
出身:江別市
2017年NSAサーフィン検定2級合格