REVIEWバートンブーツ2017 2018SLX

BURTON|2018年版SL-Xは、かつてない程身軽なスノーボードブーツだった!

新素材ウルトラウーブンが鍵!最高傑作と評された2018SL-Xのレビュー

もはやスニーカー!? 特殊ニットを取り入れたSL-X

2017-2018シーズン、KING OF BOOTSの称号を持つBURTONの人気スノーボードブーツSL-X(エスエルエックス)に大きな変化がありました。

それは、アウターブーツの劇的な軽量化。US8.5(26.5Cm)両足でおおよそ2100g、2016年版SL-Xと比較すると約280gも軽くなっています。ここまでの軽量化を叶えたのは、ULTRA WOOBN(ウルトラウーブン)というBURTONの新素材でした。

WHAT’S ULTRA WOOBN?

BURTON SL-X

ウルトラウーブンを解説するには、大手総合スポーツメーカーのスニーカー開発に話を移さければなりません。

事の始まりは2012年頃。NIKEとADIDASが競い合うように商品化を進めていたニット素材のシューズが同時期に発表されました。NIKE FLY KNIT(フライニット)とADIDAS PRIME KNIT(プライムニット)です。軽く、伸縮性があるボディ。まるでソックスのように身軽なシューズは、健康的な都市生活を目指すアスレジャースタイルが流行の兆しを見せていた中で、一躍ランニングシューズやトレーニングシューズのトレンドとなりました。

NIKE フライニットの画像
NIKE FLY KNITのシューズ

当時、NIKEとADIDAS両者の間には新素材の開発を「真似された」というようなライバル企業ならではのトラブルがあったと記憶しています。
いずれも優れた開発だったことに違いはありませんが、ファッションアイテムとしても一歩リードしていたのはNIKEだった様に思います。

NIKEは「ランナーの為に、履いていないようなシューズを作る」というテーマの下でチームが結成され、4年もの歳月をかけてFLY KNITを世に送り出したそうです。

ニット特有の立体的でシームレスなビジュアルとフィット感。軽く、通気性やサポート力にも優れ、編むことでしか生まれない複雑な色表現も可能になりました。こうして新素材のニットは、スポーツシューズの新たな時代を切り開いたのです。

BURTONがSL-Xの為に開発した”ウルトラウーブン”は、NIKEのFLY KNITやADIDASのPRIME KNITと同類の素材です。BURTONは、この新素材を取り入れることで、足と一体化する軽やかなスノーボードブーツ、これまでにないトータル性能の向上を目指しました。

本当に大丈夫?ウルトラウーヴン

いかに画期的な新素材だとしても、スノーボーディングのハードな使用環境にどう応用できるのか。ウインタースポーツの現場では、ニット素材のアウターブーツに対して心配の声が多く上がっていました。

確かに、ウルトラウーブンの柔らかな質感と軽さは、どこかデリケートな印象があります。僕自身、2017-2018シーズンの展示会での第一印象は「これ、大丈夫なの?」という不安でした。そこで、実際にSL-Xを2シーズン履き、その性能や耐久性を確かめることにしました。

2018年版SL-Xを大解剖

BURTON 2018 SL-X
BURTON 2018 SL-X¥68.000+TAX

スノーボードブーツは、インナーとアウターの2層構造が基本です。1足のブーツの履き心地は、内と外それぞれのブーツの素材や相性によって生まれています。SL-Xを分解して解説しましょう。


BURTON SLXのインナーブーツの画像

インナーブーツ

ブーツを履いて、直接足が触れる内側のブーツがインナーブーツです。BURTONのインナーブーツは5段階のレベルに分かれていて、簡潔に言うと「価格に応じたクオリティー」です。

SL-Xでは、LIFE +(ライフプラス)ライナーと呼ばれる最高峰のインナーが使われています。インナーブーツの要となるフォームは、ウィンタースポーツのトップブランドが信頼を寄せるULTRALON FORM。履くと足に合わせて形が作られ、耐久力、保温力にも優れた理想的なフォームです。

さらにインナーの内側には、BURTON独自開発のDRY RIDE HEAT CYCLEを搭載。保温力だけを評価するなら、正直なところDEELUXEの方が優れていると感じますが、ブーツ全体が薄く軽いのに暖かく蒸れにくい。総合的に考えるとSL-Xインナーの完成度は特筆すべきポイントです。


BURTON SLXのアウターブーツ

アウターブーツ

2018年版SL-X最大のトピック”ウルトラウーブン”は、アウターブーツの表面、トップシェルに使われています。

これまでのスノーボードブーツは、合皮やPU素材が主流でしたが、SL-Xはウルトラウーブンで軽量化と柔軟性、サポート力に挑戦しました。各箇所に必要なフィット感を編み方によって自在に再現出来る様になりました。

SL-X2018モデル2シーズン後のレビュー

僕にとって15-16シーズン以来のSLXでしたので、たった1シーズンの間に大掛かりなモデルチェンジが行われたことになります。

15-16モデルでもトータルバランスに優れたブーツだと感じましたが、フィット感、軽さ、耐久性、あらゆる面で、僕の知るSL-Xを越えていた、というのが第一印象です。それから2年、シーズンインから春まで、様々な板・雪質・環境で履きました。

BURTON SL-XとSKIPJACKで黒岳を滑る

軽くて身軽、革新的なアウターブーツ

SL-Xを2シーズン履いた率直な感想は、劣化が少ないという事です。ウルトラウーブンが採用され、硬くゴツいアウターブーツから、まるでスニーカーのような身軽さになりました。ライディングだけでなく、ゲレンデや室内を歩くだけでも、その動きやすさを実感しました。

フリーライディングでは”足首の自由度とホールド力”、ハイシーズンのパウダーでは”軽さ”が利点となり、ビンディングへとパワーが直に伝わる感覚がありました。圧雪やアイスバーンでもレスポンスに不自由はありません。

ホールド感と足首の自由度、相反するこれらの要素が共存するブーツです。軽く、速く、ホールドしつつも前後に動いてくれます。

 

硬いバインとも好相性

BURTON SL-Xとバインのセッティング
19-20 UNION BINDING ULTRA LTDとの相性をチェックした時に感じたことですが、SL-Xの

アウター素材、ウルトラウーヴンの伸縮性と柔軟さは、硬いバインディングに合わせてもビンディングストラップのフレックスが感じられます。

また、柔らかいブーツにありがちな、硬めのストラップに負けてしまう、というような不相性もありませんでした。足を包み込むように固定するバインの力に対し、SL-Xはパワーや荷重にブーツが柔軟に対応します。長時間のライディングで、その差ははっきりと確認できました。

SPEED ZONEがハマってる!

BURTON SLXを試着している様子

SL-XはBURTONが特許を取得するブーツの締め上げ機能、SPEED ZONEレーシングシステムとの相性も良好です。

DRIVER-Xに代表するような硬いアウターブーツでは、レーシングゾーンのパーツが壊れやすい印象がありましたが、SL-Xでそういった不具合は感じませんでした。また、BOAの搭載がない事に関しては、BOAのトルクとウルトラウーブンの柔らかさがマッチしないのではないかと想像しています。

もし、今後SL-XにもBOAを取り入れるような改良があるとすれば、違ったアウター素材になるのではないでしょうか。

摩擦による毛羽立ちが気になる

バインとボードを装着したBURTON SLX

SL-Xを履いて2シーズン目に入ると、表面にダメージが見受けられるようになってきました。やはりストラップとの干渉により繊維が切れ、毛羽立ってしまったようです。

ウルトラウーブンのデメリットとしては、水滴は弾くものの北海道の雪は軽すぎて繊維と絡んでしまい、すぐ凍り付いてしまうこと。それによる足先の冷えは特に感じませんでしたが、見た目が気になる人もいるでしょう。無理に取ろうとすると繊維がボソボソになりそうです。

SLXの繊維の毛羽立ち

こうした何らかの使用感が出てしまうのは、どのブーツも一緒。素材によって傷が付きやすかったり、皺が付きやすかったりしますので、ブーツの特徴を良く理解して選ぶ事をお勧めします。ウルトラウーブンでは毛羽立ちという形で目に見えてしまいますが、インナーブーツに影響はありませんのでご安心を。

BURTON SL-Xで春トマムを滑る諸橋正太

長期間ベストを維持する万能ブーツ

MOJANEでは、BURTONの傑作プロダクトとしてSL-Xをご紹介しています。フィット感、ホールド感、耐久性、そして軽さ。ブーツに必要な条件を満たしています。

唯一の難点は、高額であること(¥68.000+TAX)。ですが、1シーズン30回以上滑りに行スノーボーダーでも、3シーズンは良い状態を保ってくれるブーツです。また、使い込む中で、インナーブーツ履き心地の劣化が緩やかだと感じました。

より長く良い状態でスノーボードブーツを使うには、日頃の扱い方に注意が必要です。滑り終わった後は、インナーブーツを取り出し、よく乾かしてから元に戻します。形状を保つイメージでブーツの紐は締めた状態で保管しましょう。

フリーランだけじゃない!パークでも活躍

BURTON SLXとSPEED DATEで春のレースイを滑る

2018-2019シーズン、BURTONのアップカマー大塚健プロがSL-Xでスロープスタイルを転戦していました。それは、SL-Xがフリーライディングだけのハイエンドブーツではない、という事を証明しています。パークライディングでも注目すべきブーツです。

技術レベルを問わず、履き心地と身軽さを求める人へ

BURTON SLXで美唄を滑る諸橋正太

モデルチェンジによって、更なる飛躍を遂げたSL-X。中・上級者からの支持も厚く、長年のSL-X愛用者にも好評でした。

高額ゆえに上級者向けのイメージも強くありますが、ビギナーのストレスフリーなスノーボーディングにも役立てて欲しいと願っています。いかにコンフォータブルであるかが初心者にとって重要なポイントだからです。

ハイスペックモデル=上級者専用とは考えず、ご予算が許す方にはレベルを問わずお勧めします。また、リリースから2シーズンが経っているので、型落ちを探して賢く手に入れるのもアリでしょう!

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  1. いつも楽しく拝見させていただき、参考にさせて頂いてます。
    自分はIONをずっと履いてきたのですが、SLXも視野に入れてます。
    サイズ選びですがワイドじゃなくても通常のサイズで良いですか?

    • 小枝 様
      ご無沙汰しております。
      SLXは、通常選ばれているサイズ選びで問題ありません。履きはじめに多少違和感があっても、2~3度滑り倒せば必ずフィットするはずです。ただ、夏の間にトレーニングやマッサージなど、体づくりに打ち込む方は、足の形やサイズが変わることがよくありますので、ご購入前に改めて足を測る事をお勧めします。因みに、当店では数年間で8.5インチから10.5インチまでサイズが変わった方がいらっしゃいました!

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