バートンボードのお手入れのコツを年代別にハック!
ご自身でチューンナップをされている方の中には、「ここ最近のバートンボードはワクシングしずらい」「ソールの凹凸が気になる」といった感想をお持ちの方も多いのでは?
今回は、バートンの各年代にみられる板の特徴と背景、セルフチューンナップのポイントを公開します。
- ①バートンボードの発展/工場とソールの変化
- ②年代別バートンボードのチューンナップテクニック
- ③MOJANEが行うBURTONの為のチューンナップ
1990後期~2000年:完成度の高いクラフト感
90年代のMADE IN VERMONT、MADE IN CANADAのバートンボードは、今も多くの方が楽しんでいます。
3Dインサートホールで、歪みが少なく、完璧なフラットソールが特徴です。密度の高い重さがあり、安定感と重厚感があります。
MOJANEにお持ち込みいただくボードの状態を見ると、経年劣化によりボードは全体的に硬化しています。フレックスも元の状態より硬くなっていますが、キャンバーアーチは十分に残っているものが多い印象です。
ただ、硬化したことを考慮すると、過剰にプレッシャーをかけたり曲げたりせず、クルージングを楽しむボードとして乗り続けていただきたいと思います。
1990~2000年のチューン
当時はSUPER FLY 2 COREがハイエンドモデルでした。シンタードベースでワックスの入りも当時としては最高のものだったと思われます。
アイロンの温度は高すぎてはいけません。柔らかいワックスから、低温でじっくり時間をかけて入れていきましょう。
サイドウォールは、劣化や日焼けにより黄ばんでいる物が多いですが、印字が消えても良ければ、表面を軽く削る事で新品同様の色を取り戻すことができます。
チューンナップのご依頼があるのは95年以降のボードが多く、お父さんから譲り受けた若いユーザーも増えてきました。
まだまだ乗れるボードが多いので、お手入れの上、シーンを振り返りながら大切に乗り続けてください。
2000~2010年:開発ラッシュと多様化
BURTONの開発ペースが加速し、テックがボードに詰め込まれた時代です。
現在、BURTONを代表するオリジナル素材やシステムの多くは、この10年間の挑戦の結果だと言えます。
アルマフライコアを搭載したVAPORやT6、CUSTOM-Xといった名作が次々と生まれ、ウッドコアは更なる軽量化が実現。ハイエンドモデルでは、コアの材質がウッドからアルミへ変更されました。
また、モデルによっては、予めサイドウォールの角度施工がされているものもありました(10:45 Edge:サイドウォールの角度を2つにする事で、エッジングのプレッシャーを分散する構造でした) 。2008年にはTHE CHANNELがデビューします。
そして、BURTONの開発のピークを象徴しているのが、2010年に登場したバーモンド製のスーパーハイエンドモデルMETHOD(メソッド)です。
滑走面に採用されたMETHRONEは、テフロンを織り交ぜたBURTONのオリジナル素材で、シンタードWFOよりもワックスの浸透性が良く汚れがつきにくいソールです。現在は CRAIGSのモデルに採用されています。
新ジャンルと新シェイプ
ロッカーボードやキャンバー・ハンプス、パウダーボード…。この10年は素材だけでなく、様々なボードの形状が誕生し、スタイルや遊び方も広がりました。
スマホやネットインフラの普及直前、現在のように手軽に詳細情報を得ることが困難だったこともあり、僕たちエンドユーザーは次々と発表される新型ボードに対し、滑り込むことで新たな乗り味を体験していました。
2000~2010年のチューン
実験的な開発も多かったため、ソールもとにかく多種多様であることがこの時代の特徴です。年代、モデル、工場といったボードそのものの個性もありますが、使用頻度や保管環境によっても現在のソールの状態は様々です。そのため、クリーニング、ワクシング、ブラッシングといった基本的なチューンナップ作業を丁寧に行う事が重要です。
ワクシングを繰り返し、ソールの傷やエッジの錆に気を付ていれば、これから先も長く乗り続けることができます。
2010〜2015年:成長から成熟へ
THE CHANNELがM6インサートにアップデートされ、フリーライディングに特化したFAMILY TREEラインが登場します。
スノーボードシーン全体では、バックカントリーでのエアーゲームがピークを迎え、パウダーに特化したフリースタイル、フリーライディングモデルのアイディアが溢れていました。
ロッカー形状とキャンバーのハイブリッドモデルが登場し、コアの配列やファイバーグラスのテクノロジーも積極的に新しい機能を取り入れています。 現在でもフロストバイトエッジ、スクイズ・ボックスや、スクープテック、カーボンハイライトなど、受け継がれています。
2010年には、BURTONがネクストジェネレーションへと向けて開発を進めていたPROCESSがデビュー。マーク・マクモリスの印象が強いですが、当時BCで無敵のパフォーマンスを繰り広げていたユシ・オクサネンがしっかりとバックアップしていました。
「乗ってみなければ分からない」の理由
現在はハイエンドモデルでも中国製が多くなってきましたが、この頃は製造国や工場でボードの価格帯やクオリティが区分されていたように思います。
また、この年代のバートンボードはインラインが全体的に重い傾向があります。実際に乗ってみると重さは感じられずライドフィールへの悪影響も無かったのですが、他ブランドと重さで比較してしまうと、デメリットと評されることもありました。
手に持った時の印象と、実際の乗り味の間にギャップが生じたことで、BURTON試乗会では「偏見を持たずに沢山のボードに乗るべし!」という風潮が強まったと振り返ります。因みに、近年はこういったギャップのあるボードは本当に少なくなったなと思います。
凹凸ソールのワクシング
前回の記事に詳しく書いた通り、THE CHANNELが主流となったことで、BURTONのソールには凹凸ができました。
アイロンが当てずらく、スクレーピングでもムラがでやすいので、セルフメンテナンスの難しさを感じている方も多いと思います。
対処法としては、ワクシング用ペーパーを使用すること。多少の凹凸ならぺーパーが十分カバーしてくれます。
ペーパーが無い場合は、ワックスが間抜けしてしまう凹凸を目掛けてワックスをたっぷりと塗布してみてください。
ワックスは、融解温度が低く伸びの良い柔らかなものが扱いやすいです。若干コストはかかりますが、ボード全体にまんべんなくワックスを広げることができます。
ワックスを剥がす際は、良くたわむスクレーパー(3㎜厚)を選びましょう。スクレーパーの角がシャープすぎては滑走面を痛めてしまうので、あまりシャープナーを頼らないようにしています。凹凸部分には「削り感が鈍いな」というくらいがちょうど良いです。
柔らかいワックスは仕上げ用のブラシに過剰に付いてしまうので、できるだけスクレーピングでそぎ落としてからブラッシングに入ります。もちろん、ペーストやリキッドタイプのワックスをこまめに使う事も選択肢の一つです。
2015年~2021現在:リバイバルと個々の追求
開発ラッシュが過ぎてからは、過去のデザインや機能がブラッシュアップされ、洗練されたモデルが目立ってきました。90~00年代のファッションや音楽が再流行するのと同様、クラシックなスタイルやボードシェイプが見直され始めたのも、昨今の特徴です。
中国工場での生産をスタートさせた一方で、BURTON本社の敷地内にあるCRAIGSファクトリー製のBACK YARD PROJECTが発表され、HAND MADE IN VERMONTモデルも再構築。90年代当時の完成度とまではいかないものの、軽量化に関しては比較にならないほどの進化を感じます。
滑走面には、コアの配列やTHE CHANNELによる凹凸が過去一番に起きていますが、乗り味に問題はありません。性能は確実に向上を続けています。
そしてここからは、サスティナブルな物づくりと、ジェンダーレスなデザインが大切にされる時代に突入します。BURTONでは、トップシートの塗料や採用する木材にも環境への配慮が見られるようになりました。
FSC認定木材とウッドコアの見直し
環境活動の一環として森林認証制度(FSC)認定の木材が使われる様になりました。
環境に悪いと言われてきたアルマフライコア等のケミカルボードが姿を消し、ウッドコアの再開発が進められた結果、誕生したのがミステリーコアです。強くて高反発なドラゴンフライよりも、更に繊細なピース配列が行われ軽量化を実現しました。
余談ですが、FCS認定と表記されているにもかかわらず、FSC認定ではない木材がバートンボードに使われていたことが2020年に発覚し、17~21シーズンにかけてのFSC認証マークを排除するというトラブルがありました。気になるのは、乗り味に影響があったのかどうか。その真相を知る術はありません。
2015年以降、チューンナップは必要?不要?
近年のバートンボードは、ソールの品質・性能が向上しているので、ブラッシングと簡易ワクシング(リキッドやペーストなど)だけでも楽しめると思います。
特に、BURTONがオンラインストアをオープンして以降のボードは、「届いたらフィルムを剥がせばそのまま乗れる」とされています。
ソールにはワックス成分が配合され、十分以上にダリングが施されていますので、もちろん乗ることはできます。ただ、あくまで「ある程度」と捉えておいた方がよいでしょう。
繰り返し乗れば、必ずワクシングが必要になりますし、上達すればエッジを整える方が断然スノーボードが楽しくなります。また、チューンナップを施したボードは滑走性が高まり、ソールも強くなります。
2021-22BURTON:ボードの品質について
さぁ、いよいよ21-22シーズンのニューボードが皆さんの手に届く季節となりました。
ボード全体で見ると、ファクトリーチューンでは今年もダリングのムラが見受けられましたが、一般に乗るレベルでは問題ないと思われます。ボードの作り自体に不備はありません。
FAMILYTREEでは、昨シーズンプリントに変更されたソールのシンボルマークがダイカットに戻りました。2015年頃までとは違い、21-22ののダイカットは上々の仕上りです。
大きな問題を抱えていたのは、一部モデルのトップシートです。
FAMILY TREEでは中心ラインがずれていたり、CUSTOMにも同様のずれ、グラフィックのプリントムラが数多く見られました。 滑走性能に支障がないとはいえ、根本的なミスが見過ごされていることは、非常に残念です。
21-22シーズンのBURTONは、ライディングパックの進化やakラインのアップデート、STEP ONのクオリティー等、コロナ禍でもさすがだな!と思うトピックがいくつもありました。 それ故に、最も肝心なスノーボードで起きたミスは、積み上げらた成果が台無しになる大惨事だと言っても大げさではありません。
この不良品について、BURTONは公式に「滑走性能には問題が無い」という見解で対応しています。
全てのボードにプリントミスが起きた訳ではありませんし、BURTONの見解も嘘ではありません。 ただ、スノーボードは使い捨ての乗り物ではないという事、コレクションの楽しみがある事、ボードの品質を見抜くスノーボードラバーによって支えられているということ。
作る側の方々には、僕たちエンドユーザーがどの様にスノーボードに向き合い、愛好しているのかを今一度知って頂きたいと思います。来季以降のBURTONに期待しています。
BURTONチューンナップメモ②のまとめ
この記事では、年代毎のBURTONボードとチューンナップのポイントをまとめました。
大開発時代を終えた現在のスノーボード選びは、クラッシックボードから最新ボードまで、多くの選択肢があります。 お手持ちのボードとスノーボードシーンと照らし合わせると、お手入れ方法や遊び方はもちろん、ウェアコーディネイトにも生かせると思います。
すごく為になりました!
YouTubeも楽しく拝見させて貰ってます。
私も30年以上BURTONユーザーですが、2001年以降トップシートひび割れ剥がれチャンネルになってからのソールの凸凹本当に酷いです。
アイロンも長くあててるとソール焼きそうで怖いですね!
私の周りは私以外ほとんど国産メーカーに乗り換えてしまいました。
本当にこれからのBURTONの品質の向上に期待してます。
masa a さん
いつもご覧いただきありがとうございます。
バートンのソールに凹凸が現れたとはいえ滑走性能はむしろ向上しているのですが、古き良き時代のバートンボードを知る世代にとって「この凹凸をどう解釈するか」が大きな分かれ道になったように思います。
ワクシングに関してですが、最近小さめのアイロンを使う機会があり、バートンの凹凸に当てやすいかも知れない!と閃いたことろです。
昨今「無理にホットワクシングをしなくても簡易ワックスで十分楽しめるよ」という声も多く聞きます。特にバートンは、セッティングや乗り味、お手入れに至るまで、スノーボードの全てを簡単にするユニバーサルデザイン化に積極的です。ただ、チューンナップに楽しさを見出している人もいるよね?という視点でこの記事を作りました。
クラフトとしての美しさを重視するボードブランドや、トレンドを生み出すのが得意なブランド、魅力や個性は様々ですが、masaさんが変わらずにバートンに乗り続ける理由があるのだろうな…と考え、嬉しくなりました。ぜひ凹凸ソールのワクシングを攻略してバートンに乗り続けましょう!(笑)
ご解説ありがとうございます。
私のCustomも、もしかしてソールが凸凹しているかもしれませんが、試しにゲレンデ滑ったところ全く影響ありませんでした。
問題はホットワックス時のスクレーピングですが、こちらは凸凹があるからと言ってある程度ワックスを残さず完全にはがさないと、やはり滑走に影響がありますか?
(普段はリキッドワックスですが、ベースはハーテルを使っています。普段滑るのは関西、奥美濃なので北海道よりも雪質は悪いです。)
kamioka さん
いつもコメントありがとうございます。
ワックスを完全に剝がすかどうかについては、ワックスブランドにもよりますし、好みや考え方は様々です。
僕自身、削り残しがあっても滑走に大きな影響はないと考えていますが、ハーテルに関しては削った方が良いと感じています。また、ソールがムラなく仕上がっている方が気分がアガるので、できるだけ綺麗に仕上げることを意識しています。
ワックスを削りきってみた時、ワックスを残してみた時、色々試して検証してみるといいかも知れませんね。結果報告もお待ちしています(笑)
いつも楽しく読ませていただいております。
新作の紹介に偏りがちなプロショップにおいて、スノーボードのカルチャーやライフスタイルを取り上げた記事が多く、興味深く拝見しております。
当方、アラフォー世代で、90年代から始めたので、プロダクトの変遷は懐かしいです。
さて、年代物のボードのチューンナップについて質問がございます。
2006年のT6が、デッキのクリアが剥がれてきているのですが、サイドウォールの劣化対応のように蘇らせることは可能でしょうか。
アルマフライ独特のライドフィールが捨てがたい撫でたく、キャンバーも残っているので、デッキをリフレッシュして、もう少し楽しみたいと思っております。
いろいろ調べると、サーフボード用のレジンでセルフリペアしてる方もいるようですが、対応しているプロショップにお願いできればと思い、ご相談させていただきます。
アンドウ さん
ご覧いただき、ありがとうございます。
この記事にも出てきたT6はラッカー仕上げという方法で、時間の経過とともに硬化が進み、ヒビ割れ~剥がれが発生してしまいます。
当店ではチューンナップ専門店のようにトップシートまで修復・復元させることができませんが、まだまだ乗りたいアンドウさんのお気持ちはよく分かります!
施工できそうな専門店の方に確認してみますので、少しお時間を下さい。直接、メールでご報告いたします。