勝つために選んだStep On
ハーフパイプ選手の小杉榮大くん(13)が2019-20シーズンに選んだギアは、踏み込むだけで滑りだせるストラップレスのビンディングシステム、Step Onでした。
発売当初(2017年)から、耐久性やフィーリングに不安を感じるという声もある中で、彼はStep Onの圧倒的な着脱スピードに目を付けたのです。
ハーフパイプやパークでの練習では、短いリフトを利用して滑り込みますが、リフトに乗る度にビンディングの付け外しをしなければなりません。榮大くんによると、その回数はハイシーズンで1日80回を超えるとか。ビンディングを装着する手間や時間は、選手たちの日常です。ただ、もしもそれをStep Onで解消できるなら、選手にとって大きな利点となることは間違いありません。
2019-2020シーズンは、新型コロナ感染拡大の影響で、次々とコンペの中止が発表されました。前例のない事態に戸惑いながらも、榮大くんはStep Onの良い点・悪い点を実際に確かめる時間を得ることができました。
ストラップビンディングよりも確実に多くの本数を滑走できるStep Onは、練習量を増やすことはもちろん、限られた時間内で自分をアピールするジャムセッションでも、失敗を恐れずに攻めていけるはずです。
Step Onの耐久性を実証
Step Onで最も懸念されていたのは、性能と強度です。ストラップで固定しないStep Onの装着感は、激しいライディングを要するハーフパイプ競技に耐えられるのか。周囲からは、その着脱の早さに肯定的な反応がある反面「ハーフパイプにStep Onを持ち込むなんて…」という冷ややかな意見もあったそうです。
選手たちのハードギア寿命の目安は概ね1シーズン。難なく冬を終え、夏も続くトレーニングの最中、ついに榮大くんのStep On(ブーツ)が壊れてしまいました。彼が体験したレビューとデータは以下の通りです。これまでのStep Onのイメージを大きく覆す内容ではないでしょうか。
小杉 榮大のStepOn報告
【EIDAI】約1年間StepOnを使用しました。総着脱回数はおおよそ7000回、壊れたのはブーツのトゥークリート部分です。ビンディングは金具のすり減りがありますが、まだ使える状態です。心配だった耐久性は、ハードな練習でもトータルで100日間も滑れたので満足しています。
StepOn滑走日数と着脱回数
【総着脱回数】左4000回 右7000回
冬季(左200回/右3000回) 左:平日2回/休日4回 右:平日35回/休日85回
夏季(両方4000回) 左:冬とほぼ同じ 右:平日20回/休日65回
【滑走日数】合計170日
冬季100日(休日8時間 平日ナイター3時間)
夏季70日(休日5時間 平日3時間)
トライしたトリック(夏季)
Bダブルコーク 1260まで/F 1260まで/CABダブルコーク1080まで/SB 720まで
ストラップバインとの比較
履くのが早い・動きの伝達が早い・使いやすさに変わりはない・ストラップビンディングはブーツが壊れてもあまり問題ないが、Step Onでは今回の様にブーツが壊れてしまった場合、一発のトラブルのダメージが大きい・遠征にブーツのバックアップを持っていくのは難しい
メリットとデメリット
メリット
着脱が早い・ターンの伝達が早い・動きのロスが少ない・足回りが軽く感じる・周りから注目される・人より多く滑れる
デメリット
パウダーで履きづらい・雪が付くとはまらない・ブーツが壊れたら変えられない・インナーの金具に当たるところが擦れて痛い・レバーを引っ張られてもストラップバインのように緩まないから気づけない
Step Onの問題点
なぜ壊れたのか、考えられる要因
【1】つま先部分から剥離して来た。そこから浸み込んだ水分が原因か。
【2】技の強度か。しかし右足の外トゥークリートに力が掛かる様な技はしてないはず。
【3】スイッチのダブルで力がかかったか、力のかかり方が原因なら左が先に壊れているはず。
【4】付け外しの時のずれか。それなら右から壊れてもおかしくないと思う。
使用中に起きたトラブル事例
【1】レールから落ちた時にハイバックとレールが強くぶつかった。その衝撃でブーツの小指部分が前に押し出された。変にねじれてかかとが外れなくなった。無理やり外したがそのあとは何も問題なく使った。
【2】滑り出しの時にヒールクリート部分が外れたことが2回あった、雪が詰まっていたか、小さい子のイタズラだと思う。
自分の意見、思いついた改善点
【1】あまり使っていないので、ハイバックレスモデルがあってもいい。
【2】サマーゲレンデで使うことも考えるなら、水に強い方が望ましい。
【3】ブーツのトゥークリートが剥がれることがあるから強度を上げてもらいたい。
【4】付属のリーシュがカッコ悪い。ゲレンデではStepOnを使っている人でもリーシュコードをつけている人はほとんど見かけない。もっと目立たず安全な方法はないか、今後も考えていきたい。
2007年2月23日生
身長152cm/体重47kg/レギュラースタンス
使用モデル:RITUAL LTD SO STEP ON 24cm/WMS STEP ON M/BURTON KILROY TWIN 145
「夏季の間も多くの技を習得しました。2021シーズンに見せられる様に頑張っています。」
僕たちがこの動画の撮影を行ったのは2020年3月。Step Onの感触を掴み、次のシーズンに向けて闘志を燃やす榮大くんの姿が印象的でした。 彼の強さは、周囲に流されないポリシーを持っていること。そして、リスクを選択できるチャレンジャー気質。Step Onをコンペシーンで使用することに関して、本当の結果がでるのは次の大会です。2020-21シーズン、小杉榮大に注目してください。