スーパーボードの予感!
テリエによる本格カービングボード
多くのフリーライディングボードをリリースしてきたBURTONのFamily Treeから、スノーボード界のスーパースター、テリエ・ハーコンセンが手掛けたカービングボードが登場します。その名はSPEED DATE(スピードデイト)。
Family Treeからカービングにフォーカスしたボードが出るのは、おそらく初めてのこと。新たな境地へ向かうFamily Treeに2018-2019シーズン注目が集まりそうです。
BURTONの十八番、細めのシェイプが復活
スノーボード各所のサイズは、ブランドが込めたボードコンセプトを読み解く鍵となります。SPEED DATEの特徴、スリムなボードデザインに触れる前に、少し解説しましょう。
ウェストワイドについて
近年のスノーボードシェイプで主流となっているのがミドルボードやワイドボード。それらを区別するのが、ボードの最もくびれた部分(ウェストワイド)の幅です。
例えば、サイズ154~156のボードならウェストワイド25.1~25.5cmがミドルボード。それ以上はワイドボード、以下だとナローボードと分類されます。
細いウェストワイドの特徴は、エッジからエッジへの切り替えがスムーズで、スピード感のある鋭い乗り心地。ですが、ブーツのつま先とかかとがボードからはみ出してしまう為、雪に引っかかるというデメリットを抱えていました。
その問題を解消するためにウェストワイドは徐々に太くなり、安定感も増しました。初期の太めのボードは、曲がりずらさがありましたが、サイドカーブの改良や、ロッカー/キャンバーといった形状の多様化によって、ミドル~ワイドボードのコントロール性は驚くほど高くなり、人気を集めているという訳です。
元々細めのボード作りを得意とするBURTONでしたが、ニーズに応えるようにCUSTOM V-ROCKERが出た頃(約10年前)から代表モデル”CUSTOM 156″で25cmを上回るウェストワイドをリリースしてきました。
細いボードが忘れられかけていた中、今回のSPEED DATEでBURTONがやや細めのシルエットを復活させたことは注目すべきポイントです。
技術の進化によってナローボードの可能性は広がりを見せています。長く続いたワイドブームに疑問を投げかけている?あるいは制作チームの自信の表れ?いずれにしてもBURTONの挑戦的なメッセージを感じませんか?SPEED DATEが新たな主流を作るきっかけになるかも知れません。
SPEED DATEのスペック解説
Family Tree初となるドラゴンフライコア搭載ボード
SPEED DATEは151,156,161の全3サイズ展開です。先述のように、細めのウェストワイド、コンパクトなサイドカーブとなっています。
長年、BURTONがボード作りで重視してきた”回転性(少ない力でギュイン、ギュインと小回りが効くボード)”を強く示したデザインではないでしょうか。
そして最も驚いた点は、これまでCUSTOM-Xに使われてきたコンペティティブなコア材”ドラゴンフライコア”がFamily Treeラインで採用されたこと。軽量かつスナップの効くコア材を使用した点は、細めのボードが持つ”速さ・鋭さ”といったメリットを生かしつつ、デメリット(不安定等)の解消に一役買っているのでは?
また、CUSTOM-X(¥93.000+TAX)と同じコア材を使用しているにもかかわらず、¥92.000+TAXとやや抑えた価格設定も魅力です。
この理由として考えられるのは、CUSTOM-Xのようなラッカー仕上げをしていない点が挙げられます(Family Treeでは環境問題やリサイクル等のエコロジカルなモノづくりにも意識を向けているためラッカー仕上げを行わない傾向)。このマットな質感が好みだ、という人も多いと思います。
高反発なのに踏み込める絶妙フレックス&トーション
次に、張りやねじれをチェックしましょう。手で押してみると強い張りがありますが、実際に乗るとその怖さは感じませんでした。
フレックスは全体に均一で、EST BINDINGかREFLEXで大きくイメージが変わるボードなのかな?と推測しています。
トーションも無理なくかけられます。極端に硬い、柔らかいといった特徴はありませんが、フレックス相応のトーションではないでしょうか。
もしも、CUSTOM-Xにこのフレックスとトーションを持って来たとしたら、ユーザーはガッカリするはずですが、SPEED DATEのウェストワイドにより絶妙にマッチしていると思います。これ以上の固さを出せば、乗ることが出来る人が限られて来るところです。
遊び方は無限、雪面を切り刻むような乗り心地
2016シーズンに同じくFamily TreeからリリースされたBRANCH MANAGERに似たノーズですが、浮力は持たず、雪面を切り刻んでいくようなイメージです(2019のFamily Treeで浮力を求めるならSTUN GUNをお勧めします)。
ノーズのキックはやや抑えめで、加速してもバタつきません。これまでのFamily Treeには無いこの感覚はとても新鮮です。また、テールキックはバンクを攻めなくても、少しのギャップでのオーリーを仕掛けられ、遊べる要素が盛り込まれています。
ドラゴンフライコアはCUSTOM-Xよりも多少柔らかく感じ親近感を持ちました。上級者向けという分け方を無くした、自由奔放な性格のボードです。
このボードは、世界的にムーブメントとなっているスノーボードレース競技バンクド・スラロームで勝つために開発したボードだ、という裏話があります。そういった目的から、バンクにはピンテールやラウンドは不要で、テールを振り易く、かつ踏み込み易いデザインになっているのかも知れません。
サイズ毎に性格を変えるSPEED DATEの選び方
サイズ選びについて一番の印象は「サイズ選びの基準は身長ではない」ということ。
サイズ毎にキャラクターが違い、シチュエーションによってサイズを変えたくなるようなボードです。僕は(181cm 75kg)、156と161の2サイズに乗りましたが、156ではまるでナイフのように切り込める素早さと切れ味を感じ、161はショートターンに加え、伸びやかなロングターンにもボードの性質が活かされました。
3サイズで共通している点は、モデル名にもなっているスピード感。ショート~ミドルターンが気持ち良く、常にカービングしていたい!と思うようなボードとなっています。
バーン、バンク、ツリーラン。地形を遊び尽くそう!
SPEED DATEは、オープンバーンでのターンはもちろん、細かなターンを必要とする場面で抜群の回転性が発揮されます。
格好のシチュエーションとして思い浮かぶのは、手稲ハイランドの迂回コース、夕張マウントレースイのスリリングラインです。
また、壁を登る力、降りる時の角度づけ、テールスラッシュ…こういったゲレンデでの仕事もしっかりとこなします。パウダーでは浮力ではなく下に潜って進むサブマリンスタイル。ノーズキックが反り上がっていない為です。どこからともなく現れ、バクン!!とスラッシュ。タイトなツリーランを得意とするBRANCH MANAGERのDNAを感じます。
MOJANE2018-2019激プッシュアイテムに認定!
SPEED DATEは、Family Treeシリーズに漂う”上級者のボード”というイメージに風穴を開けるモデルです。
より自由に雪山を楽しむ為の乗り物として、ボーダレスで遊び心のあるスノーボーダーにお勧めしたいと思います。上手くなりたいビギナーから、ゲレンデを縦横無尽に切り込んで行くエキスパートまで、広くハマるボードだと思います。
試乗会では、僕を含め4名のMOJANEテストライダーがSPEED DATEに乗りました。それぞれタイプの違うスノーボーダーによる生の声を次の記事”SPEED DATE試乗レポート“にまとめます。
BURTON Family Tree
BURTONの中でもキーディーラーだけの特別なラインナップがFamily Treeです。ボードの発展を家系図(Family Tree)になぞらえて、そのDNAを受け継ぎ、次世代に託すことを目的としています。フリーライディングボードを主に、復刻モデルや斬新で実験的な提案など、その強力な顔ぶれはコレクターアイテムとしても注目を集めます。また、Family Treeの面白さは、ユーザーの意見・要望を積極的に反映したボード作りです。毎シーズン、BURTONファンだけでなくコアなスノーボーダーを楽しませています。