スキーヤーとスノーボーダーが手掛けるボードブランドSEASON Eqpt
22-23シーズンより日本での本格展開を開始するSEASON Eqpt(シーズンエクイップメント)。
毎シーズンのモデルチェンジを行わず、生まれたモデルをアーカイブしていくというニュータイプのスキー・スノーボードブランドです。
この記事では、既に発表されている4モデルFORMA(フォーマ),AERO(エアロ),KIN(キン),NEXUS(ネクサス)の試乗レビューをまとめます。
個性的なのに乗りやすい。シンプルで選びやすい。
オースティン・スミス(AUSTIN SMITH)と エリック・ポラード(ERIC POLLARD)。2人の仕掛け人の名を聞いて、「さぞコアなブランドなのだろう…」と想像している方も多いと思いますが、SEASONのボードは意外にも誰もが楽しめるファンな乗り心地だと明言できます(FORMA以外は…)。
21-22年現在のラインナップはすべてオールマウンテン・フリースタイルボードです。
中でもFORMAは、SEASONで唯一スキルやフィジカルが試される挑戦的なモデルで、ブランドが目指す一つの方向性を感じることができます。
その他の3モデルの選び方はとてもシンプル。パウダーか(NEXUS)、パークか(KIN)、ターン重視か(AERO)。
特に、NEXUSやKINは初級者でも十分選択肢に入れられるほどフレンドリーな乗り味です。AEROはスノーボードを再開しようというカムバック組にもお勧めです。
一つ一つのモデルに個性を持たせながらも、複雑になりがちなボードラインナップをクリアに整えている点はお見事!
FORMA:高速域を得意とするパウダーボード
深雪バックカントリー仕様
近藤勇介
スワロウテール自体乗った経験がほぼないので、試乗したBURTON FORAGERとの比較になってしまいますが、FORMAの方がどっしり・しっかりした板という印象でした。
153と短めのサイズでも、小回りではなく大きめのターンでスピードに乗っていくイメージでした。
ピステンでのカービングはFORAGERと遜色なく、エッジングにも信頼感があります。 ただ、今回は硬めのコンディションで、地形や壁で遊んだりとなると、僕には少し難しかったです。もう少し乗り込んでセッティングを探ったりするともっとこの板の良さが分かるかもしれません。
大きめの山の広い一面バーンや深いノートラックのパウダーを大きくターンして、スプレーを上げる気持ち良さをイメージできる板でした。
バインとの相性は、IPO良かったです。ミディアムフレックス以上のバインを使いたいと思います。
安定感抜群の超高速マシン
竹田礼
FORMA153 / NOW PILOT 21,+3 56cm
このモデルを一言で表すなら、「スピードボード!」アルペンボードに乗っていた頃に感じていたスピードやターンに対する気持ちを思い出させてくれた素敵なボードでした。
高速になればなるほどキレが増していく感覚は、今まで乗ってきたフリースタイルボードとは異質のものでした。
種類は違えど、初めてUMLUTに乗って感じた新たなスノーボードのジャンルに遭遇した気持ちに似ています。 急斜面での試乗でもっと速くもっと速くと気持ちが前のめりになってしまいました。
遊び方としては、高速縦落としのカービングに特化していたので、ただひたすらにスピードを求めて落としたいです。もちろん、乗る人が変われば違った遊び方もできるかもしれません。
遊びの幅が狭いボードは、出番が限られるイメージを持つ方が多いかもしれませんが、僕は逆にスピードに特化したピンポイントの遊びが最高に楽しかったです。
純粋に「滑り」に対して向き合えるボードでした。ベストなバインのアングルをとことん突き詰めて乗りたいです。
153なのに高速で乗れるの?と思うところですが、サイズ感は153以上の安定感です。 また、SEASONは3モデルを試乗しましたが、どのモデルでもしっかりしたエッジの食いつきがあり、共通して「SEASONカービング」と言えるくらいメリハリのあるカービングができました。
そのSEASONカービングをベースにして、個々のモデルに個性と用途を発展させているようなイメージです。
スワローテールのルックスをしたCUSTOM X
諸橋正太
とにかく姿勢を低くして、スピードとターンで遊ぶボードです。緩いセッティングは必要なく、後ろのフォワードリーンをしっかり倒せるとより気持ち良いターンができます。
スワローテールは硬く、ボコボコのラインでもお構いナシ。春雪を切り込んで進むので、雪を掘って巨大なシャワースプレーも!
セッティング次第ではありますが、足回りが柔らかくゆるめじゃない限りエッジtoエッジの反応もよく、大小のターンの「弧」がとても楽しく感じられます。
タイトで起伏があり、先が見えない様なサイドカントリーを跳ねながらかっ飛ばしたい!
オーリーをしたり、上に飛び上がる縦への動きはパワーライダー出ない限り難しいけれど、横と縦(下に落とす)の動きは最高です。ハイシーズンのパウダーランは相当楽しいものになるはず。フィジカルをしっかりと整えて挑みたいボードです。
KIN:大人が遊べるクルージングツイン
メインスタンスのフリーランが気持ち良い!
諸橋正太
KIN 156/15°,-3° & 12°,-6° 56.5cm
センターミディアム、両サイド センターと比べると柔らかめ、トーションはかなり扱いやすい印象です。
テイパーが4mm入っているおかげか、メインスタンスのスムーズにターンがキレつつ、スイッチスタンスでも違和感なく滑る事ができます。
スイッチでもレギュラーと同じレベルで滑れる人にとっては違和感を感じるかもしれませんが、そこにこだわるならトゥルーツインを選ぶべきところでしょう。
オーリーがしやすく、跳ね、軽いので、回す練習がバンバンでき、パークにも積極的に入りたくなりました。CUSTOM-Xのように、どこに飛んでいくかわからないような怖さ・ハードさがないので、安心してオーリーの練習ができます。
ノーズ、テールのデザインがシャープなので、その分不安定に感じられるかもしれませんが、1サイズ大きいサイズ選びでも、スイングウェイトが超軽いというメリットでもあります。
僕の体型では156だと短く、春のシャバ雪では不安定に感じられたため、158がベストでした。
AERO:キレキレのターンで駆け回れ!
変幻自在のフリースタイルボード
竹田礼
乗っているのが楽しくて、心が弾みました。SEASON特有のキリッとしたカービング+フリースタイル要素が詰め込まれたボードです。
コース全体を縦横無尽に動き回れる軽さと、本腰を入れても応えてくれるカービング性能を併せ持っていて、ターン時には粘りがあるのにギュインギィンと曲がります。
良く跳ねて、トリックもしやすいので、ターンをしながらセクションを見つけては遊びに行ってしまう…雪上を駆け回るウサギになった気分でした!
僕の身長(181cm)で154に乗っても、トータルバランスの取れた安定感があり、そこまで短さを感じなかったことにも驚きました。 では、157はどうだったのかが気になるところ。残念ながら試乗スケジュールの都合で比較はできませんでした。
テクニックいらずでキレるターン!
諸橋正太
サイドカーブがタイトなので、エッジtoエッジの切り返しが面白く、急にコブが上手くなったように感じてしまいました。ノーズがとてもスムーズにコブの山をクリアしてくれ、スライドターンが細かく出来るので驚きました。
KINはロングターンが得意なのに対し、AEROは素早いショート、ミドルターンを得意としています。
オーリーやターン時はKINに似た反応だけれど、KINよりもややフレックスがしっかりしてるので、ハイスピードでも遊べる。とはいえ「硬い」わけではないので、余裕をもってオーリーの準備が出来ました。
僕の様に運動神経に自信がない…という人、ブランクがある方へもオススメです。パウダーで浮かせる為の目立った機能は無く、スピードで浮かせるテイストと思われます。浮力はNEXUSに劣りますが、春までみっちり楽しめるボードです。
軽すぎると感じたら、バイン選びで調整してみると良いかもしれません。
NEXUS:刺激的なフリーランが体験できるファンボード
動きすぎ(はしゃぎ過ぎ)注意!
竹田礼
NEXUS 155 / NOW PILOT 12,-9
試乗したFORMA,NEXUS,AEROの中で、動きの軽さは一番でした。
いい意味で、動きが軽すぎだなという印象です。AERO154の方が1cm短くても安定感があった事を考えると、AEROの方が地に足がついていたと思います。動きの軽さにより、ややフワッとした感覚なので、グラトリやスモールマウンテンで遊ぶには◎かと思います。
SEASON特有のきりっとしたカービングの乗り心地はキープしながらも誰にでも扱える1本だと思います。これだけ動くなら、158も試乗して比較すべきだったと反省です…。
高速域で細かく攻める板
近藤勇介
試乗して最初に思い浮かんだのは、ストレートシューターでした。
乗り味が似ていて、全体的にハリのあるフレックス、ターンの安定性が増しているという印象でした。
ブランチマネージャー<ストレートシューター<NEXUSこの3本は僕的に似たジャンルの板に感じ、順を追ってフレックスが硬くなっていくイメージです。
飛ぶ、跳ねるというよりは、細かく動かして雪面を切って加速させていく板だと思います。
重要なのはサイズ選びで、短・長いのメリットデメリットよりも、身長体重・乗り方でのジャストサイズを選んだほうが良いと思いました。
僕は155と158に乗りましたが、間違いなく155を選びます。
このボードで滑りたい場所は、ツリー、沢地形、ピステンからサイドカントリー。ビンディングは、NOWなどのカービング寄りのバインが合うと思います。
北海道のハイシーズンを遊ぶ万能ボード
諸橋正太
SEASONの中でも最もオールラウンド性が高く、ハイシーズンからエンドシーズンまでを通して遊べるボードです。
KINがツインスタイルのオールラウンドとすれば、NEXUSはディレクショナルのオールラウンド。 158サイズに対してウェストは26cmと太いですが、ミディアムフレックスなので扱いやすく、サイドカーブとテイパーのバランスが絶妙に作られている様に思いました。
浮力とスピードの両方を叶える面長のラウンドノーズは、気持ちよくパウダーを切って行けるし、ボコボコしている場所も蹴り飛ばしていけるキックもポイントです。
僕の体型では、158で間違いありません。
癖がないことの裏返しとして、上級者にとってはパンチが足りないかもしれませんが、ハイシーズンのクルージングに限定するならとても良いボードだと思います。また、ターンも磨きたいしパウダーにも行きたい初中級者さんが、北海道で遊ぶには最高の1本になるはずです。
レビュアープロフィール
竹田礼
1986年生/ 181cm / 58kg / レギュラースタンス
近藤勇介
1984年生 / 172㎝ / 70㎏ / レギュラースタンス
諸橋正太
1982年生まれ/ 181cm / 70kg / レギュラースタンス
モロのつぶやき
1998年にオリンピック競技となったことを契機に、スノーボードは若者文化から冬のレジャーを台頭するまでに広く浸透しました。
そして成熟期を迎えたいま、多くのスノーボーダーは、ブランドが持つ世界観を一層重視した道具選びに向かっていると感じます。
SEASON Eqptは、そんな時代の空気感にしっくり馴染むブランドの一つです。
スキーとスノーボードの境界を取り払い、雪上での遊びを豊かにすること。自分たちが本当に良いと思うモデルを作り、コレクションしていくこと。
僕は、彼らのシンプルで自然体な考え方に共感します。
スノーボードは、どんな道具であれ雪上を滑るだけで楽しい遊びですが、作り手がどんなマインドなのか、その価値観に共感したり、共有できるかどうかも重要な「選択」になっていくのではないでしょうか。