磁石の力でレンズを瞬時に着せ替え
ANON(アノン)は、BURTONが展開するゴーグルブランドです。その代表的な開発となったのが、磁力を利用し、素早くレンズを着せ替えられる新発想のゴーグルMAGNA TECH(マグナテック)シリーズ。
2013年に発表された初号機は、見た目も機能も完成されておらず、興味が持てる仕上がりとは言えませんでしたが、フレームレスレンズになったM2は大ヒット。そのタフな作りと利便性は、スノーボーダーだけでなくスキーヤーにも好評となりました。
昨、2018-2019シーズンに第4世代を迎え、今季は更にその精度を高めているANON MAGNATECH。そのモデルやスペアレンズについて詳しくご紹介します。
ANON MAGNATECHの種類
冬山の天候は変わりやすく、山麓と山頂でも気温や風、降雪状況が違います。
キャリアの長いスノーボーダーは「全天候型レンズ」が常にパーフェクトに機能するとは限らない事を良く知っています。複数のゴーグルを使い分けたり、レンズ交換に手間取ったりと、試行錯誤しているスノーボーダーも少なくありません。
そこでANONは、1つのレンズで晴天から吹雪までを対応させるよりも、常にシチュエーションに合ったレンズを使うべきだと考えました。問題は、スペアレンズをいかに簡単に付け替えるか。そして誕生したのがマグネットの力を利用した、MAGNATECHシリーズです。
ワンタッチでレンズ交換が出来る画期的なアイディアは、年々進化を遂げています。
現在は球面レンズのM2、フレーム有の平面レンズM3、1つのフレームで平面球面の両方が使えるM4がリリースされています。※初代M1は販売終了
ANON MAGNA TECH M2
マグネットシリーズの火付け役となったM2は、完全フレームレスで球面レンズ。パウダーでは無敵のモデルです。スノーボードブランドのイメージが強いANONですが、トッププロスキーヤーのエリック・ポラードをプッシュした広告で鮮烈な印象を残しました。
ちなみに、大の親日家としても知られるエリック・ポラードは、毎年ニセコに訪れていて、ソナーレンズの開発にも携わっています。26.000~29.000円+TAX
ANON MAGNATECH M3
フリーライディング向けに商品開発が行われたM2は、パークライディングの衝撃でレンズが吹っ飛ぶという事例が数多く報告されました。パークライディングでは使いにくい、というユーザーの声を受けて完成したのが、フレーム型モデルのM3です。フレームにマグネットを仕込むことで、外れにくく、M1よりも脱着しやすいレンズを作り上げました。
最強レンズと評されるポーラライズドレンズ(偏光レンズ)を装着しているのは、このモデルだけ。MOJANEのお勧めは偏向レンズモデルのM3。フレームの大きさは中間的ですが、フラットレンズ×フレームタイプというクラシカルなデザインがトータルコーディネイトで活躍します。26.000~29.000円+TAX
ANON MAGNATECH M4
2018-2019シーズンにデビューしたM4は、シリーズ最大サイズフレームと広い視界が特徴。ベンチレーションも大口なので曇りにも強く、何と言っても軽い!
CYLINDRICALレンズ(平面)とTORICレンズ(球面)、1つのフレームで両タイプのレンズが使えるという優れものです。パウダーが降りしきる日は球面を、それ以外では平面を使い分けることが出来ます。35.000円+TAX
ANON MAGNATECH SYNC
2019-2020に新たにリリースされたのは、よりアグレッシブなライディングに対応したモデル、SYNC(シンク)です。フラット、フレームレスでありながら「激しいライディングやクラッシュで外れてしまう」というこれまでの弱点を克服し、M3と比べて、衝撃にも強くなりました。コンペティターはもちろん、多くの方に手に取ってもらえる価格帯であることも魅力です。19.500円+TAX
ANON MAGNATECH WM1
女性の為に開発されたモデル。パウダースノーがゴーグルに引っかからないよう球面レンズが採用されています。多くの女性にフィットするサイズ感ですが、他のモデルにフィットすれば男女関係なく使用できます。もちろんこのモデルをユースにもお使いいただけます。¥26000~29000+TAX
スペアレンズを駆使して、あらゆる天気を攻略
MAGNATECHのゴーグルに付属する全てのレンズは、ドイツのカール・ツァイス社とANONが共同開発したSONAR(ソナー)です。SONARレンズは紫外線を利用したコントラスト機能が特徴で、見えにくい雪面の凹凸をはっきりと浮かび上がらせます。
別売りのスペアレンズは全8種類(SONAR6種、ノーマル2種)。晴天、曇天、吹雪、ナイターと大きく4つに分類され、カラーバリエーションも豊富です。
スペアレンズの価格はモデルにより10.000~13.000円+TAX
可視光線透過率(VLT)
ゴーグルのレンズを選ぶ際に知っておきたいのが、レンズの明るさを示す可視光線透過率(VLT)です。VLTのパーセンテージが0に近い程光を通さず(暗)、100に近づく程光を通す(明)レンズとなります。使用する環境に合わせたレンズ選びの目安としましょう。
ソナーナイト
ソナーレンズの中でVLTが最も高く、ナイターでも装着可能なレンズ。吹雪、ナイター、午後14時以降の曇ったゲレンデに必要な明るさを得られ、視界の確保が大変なシチュエーションで最も威力を発揮します。ANONをお持ちの方には絶対に1枚持っていて欲しいスペアレンズです。光の届きづらいツリーの中も、ブッシュが発見を発見しやすく、危険回避にも大きく役に立ちます。【77% VLT】
ソナーインファレッド
晴天用のレンズ。春や、日差しの強い日に使用すると、雪面の細かな凹凸もはっきりと見えます。着用後は目が慣れてきますが、オレンジ色に見えるので、色が苦手な方、疲れる方もいるようです。試着をお忘れなく。【57% VLT】
ソナーブルー
オールマイティーに使えるレンズです。アドバイザーの田中さんお気に入りのレンズです。多少目が見えますが、シェイドがかかったブルーはかっこよく、シャープな印象を与えます。【46% VLT】
ソナーピンク
僕が使用しているイチオシのレンズ。主に晴れ〜曇りのシチュエーションで効果的に使えます。日差しが弱い午後や、分厚い雲で光が刺さない日はソナーナイトやブルーを装着します。外から見たレンズカラーが気に入っています。2019シーズンはこのレンズが大活躍しました。【39% VLT】
実際の使用感と注意点
MOJANEでは、M2が発表されたシーズンから取扱いを開始しました。お客様からの質問で最も多いのは「ライディング中にレンズが外れてしまう事はないか?」です。
確かに、X-GAMESやハーフパイプの映像で、競技中の選手のレンズが吹っ飛んだ場面を何度か見た事がありますが、僕が実際に使用した感覚では、一般のスノーボーダーがフリーライディングを楽しむレベルでは全く問題ありません。ただ、パウダーで2〜3回転もするような大クラッシュの場合、レンズは飛んで無くなると思ってください。
フレームタイプの平面レンズで登場したM3以降は、より磁力が増してレンズが外れにくくなりました。昨シーズン、M4使用中にロープに引っかかりレンズが飛んでしまった事がありましたが、それ以外で困ったことはありません。
レンズが曇ったらパッと外して空気に当てたり、レンズ内側に雪が入ってしまっても拭き取りやすく、ウェアの胸ポケットにスペアを忍ばせておけば20秒でその場から再スタート。必要なスペアレンズをいくつか揃えれば、天気の変化にもスマートに対応出来ます。
ANONはレンズ以外もワンタッチ。
ANONには、他にもマグネットを利用した関連アイテムが多数揃っています。MFIシリーズは、MAGNA TECHのフレーム鼻下にあるマグネットで連結するフェイスマスク(一部のモデルには付属しています。)やフードクラバです。
通常のフェイスマスクで鼻を覆うと、吐く息がレンズへと回ってしまい、曇りの原因となりますが、MFIシリーズは吐息がすっかり外へ逃げるよう設計されています。完璧な防寒を求める人にお勧めです。
また、BURTON2020春夏akコレクションから登場する、フード一体型のファーストレイヤー”Polartec® Grid Pullover Fleece” は、ANON マグネットシリーズのゴーグルと連結出来ます。春の日焼け防止に最適です。もちろん厳冬期の防寒にも注目しています。
ゴーグルには、視界の確保、目や顔面の保護といった役割がありますが、中でもユーザーが最もフォーカスしているのは、「見え方」と「曇り問題」ではないでしょうか。
数あるゴーグルのトップブランドは、これらの機能に対して足並みを揃えているように思います(2019年現在)。人それぞれの目とレンズの相性があるので、ブランドやレンズを特定してお勧めすることは難しいですが、ANONは各社の平均的なレンズのクオリティーをクリアしながら、ゴーグルの使用感を左右する顔周りのアイテムにまで意識を向けて、利便性を総合的に追求しています。
マグネットでゴーグルと連結するMFIシステムのフードクラバやネックウォーマー。ゴーグルと相性の良いヘルメット。自分に合った「便利」を選択できるゴーグルブランドはANONだけかもしれません。