肌に優しく、チクチクしない
スマートウールのインナーウェア
SMARTWOOL(スマートウール)は、アウトドアやウィンタースポーツの為のウール製品を展開するブランドです。
創設者はピーター・パティー&デューク夫妻。コロラドでインストラクターとして働く中で、暖かく快適なソックスの必要性を感じ、開発に着手したのだとか。そして、1994年にSMARTWOOLをスタートさせます。
上質なメリノウールを使用したSMART WOOLのソックスやインナーウェアの評判は徐々に広まり、今やアウトドアスポーツシーンに欠かせないブランドの一つとなりました。
日本での人気は、トレッキングやトレイルランなどの分野が先駆けていましたが、最近はスノーボーダーの間でも愛用者を増やしています。
それもそのはず、本国アメリカではブライアン・イグチ、ブレアー・ハベネット、マーク・カーター、オースティン・スミスといった超一流のバックカントリースノーボーダーの面々が。日本では”SHARK BOY”こと土井隼人さんがアンバサダーを務めているのですから!
運動と休止を繰り返す冬のアクテビティーを快適に
スノーボードに限らず、ウィンタースポーツを存分に楽しむためのレイヤードの鉄則は「汗のコントロール」です。
-10°の気温でも、運動中は寒さを感じにくいもの。ただ、汗で衣類が濡れてしまうと、動きを止めた途端にじわじわと体温が奪われていき、運動を再開してもなかなか身体が温まりません。風が強い日はなおさらです。
そこで活用したいのが、ウインタースポーツの為に作られたベースレイヤー(アンダーウェア)です。
ベースレイヤーは大きく分けて、吸汗速乾性に優れた化学繊維系と、適度な湿度と温度をキープするウール系があり、この記事でご紹介するSMARTWOOLは後者です。
化学繊維系
肌の水分を素早く吸い上げて放出する吸汗速乾性が特徴。肌をドライに保つことで冷えを抑制します。汗はセカンドレイヤー→アウターウェア→外へとパスしていくことを想定しているので、汗かきの人や運動量の多い使用環境に適しています。
一方で肌を乾燥させてしまうデメリットもあります。
ウール系
程よい運動と中断を繰り返すような場面では、肌の水分を吸い上げるのではなく、緩やかに吸湿と放出を行うウール素材が活躍します。湿度を抱え込んで温度と湿度の適度なバランスを保つので、乾燥肌の人にもお勧めです。
逆に、たくさん汗をかくような条件下では、ウールのペースでは抱えきれないことも。濡れてしまうと乾きにくいことがデメリットとして挙げられます。
どちらも一長一短がありますが、体質や環境、目的に合った素材を選ぶことで、北海道の長いスノーボードシーズンを快適に過ごすことができます。
多機能なウールにSMARTWOOLの+α
SMARTWOOLの人気の理由は、やはり良質なウール素材にあります。
使用しているのは、メリノ種の羊の毛、メリノウールです。 その繊維は、人間の髪の毛の1/3~1/10とも言われるほど細く柔らかで、縮れと弾力があり、繊維を伸ばしても元の形に戻ろうとする性質を持っています。
これらの特性が衣類に適しているということで、二ット製品をはじめ、スーツやコート、インナーウェアに至るまで、幅広く利用されてきました。
SMARTWOOLでは、メリノウールの繊維にワックスコートと防縮加工を施すことで、汗をかくスポーツシーンに最適化。表面で水分をはじきながらも蒸気を繊維に取り込んでゆっくりと蒸発させる機能と、洗濯機でガンガン洗える利便性を加えました。
ソックス、ベースレイヤー、インナーウェア…。どのアイテムもチクチクせず、締め付け感がなく自然な着心地です。肌に触れる縫い目の擦れも気になりませんでした。
スマートウールなら洗濯機OK
ウールの衣類というと、縮む恐れがあるため手洗い必須のイメージがありますが、スマートウールのインナーやソックスは洗濯機でお手入れ可能です。
もちろん、どんなウール製品も優しく手洗いするのはベストだとは思いますが、ネットに入れる程度で大丈夫。実際に、今シーズン何度も洗濯を繰り返していますが、縮んだり、毛玉ができたり、型崩れが起きたり、肌触りが固くなることはありませんでした。
水を弾き、湿度を取り込み、蒸発させる
SMARTWOOLのアイテムの中でも、僕が実際に使って驚いたのがメリノウール100%のバラクラバとネックゲイターです。
冷え込む日も口元が全く凍らず、息が上がっても、運動を中断しても、常に快適です。
吐く息で口周りに湿度がたまっても嫌な感じがありません。噂には聞いていましたが、これほどか!と感心しました。
ウール(羊毛)が持つ機能
保温性・断熱効果
ウールといえばまず思い浮かぶのは、温かさ。
その秘密は、ウールの繊維の特徴でもある“縮れ(クリンプ)“が空気をたっぷり含むからだそうです。
ダウンジャケットを想像するとわかりやすいと思いますが、身体の周りに空気の層を作ると体温を逃さず保温効果が得られます。 また、空気の層があることで、外気からの急激な温度の変化を受けずに過ごすことができます。
それは寒さだけでなく、暑さに対しても同様です。ウールそのものが保温と断熱を行うため、「天然のエアコン」や「空気を纏う素材」とも呼ばれています。
生地に少し加えるだけでも保温効果が上がると言われているので、衣類の表示タグに記載されている素材の混率に目を通してみてはいかがでしょうか。
吸湿・放湿性
ウールの繊維の表面は、ごく細かなウロコ状になっています。ちょうど、人間の毛髪のキューティクルのような構造です。
そのウロコ状の隙間を開閉させることで水分を取り込んだり、放出したりしながら常に適度な湿度を保ちます。
その吸湿力は綿素材の約2倍!それだけ水分を抱え込んでも冷えにくいのがウールのすごいところ。
化学繊維系のインナーのように汗をぐんぐん吸い上げ発散させてドライを保つというよりは、多少汗をかいて湿度が上がっても蒸れず、水分の影響を受けにくいようです。
※普段着のヒート系インナーは、肌の水分を利用して吸湿発熱するものが多く、こちらも肌の乾燥を引き起こすことがあります。カサつきが気になる方はぜひウールのインナーをお試しください。
撥水性・汚れがつきにくい
上記で、繊維内部に水分を取り込む機能を解説しましたが、ウールは更に、繊維の表面で水分を弾くことができます。
繊維の表面のキューティクルが水分の侵入を防ぐので、汚れがつきにくく、表面に水がかかっても弾かれた水滴を払うことができます。また、繊維の水分保有量が多いため、比較的静電気が起きにくく、チリや埃を寄せ付けないと言われています。
※ウールそのものは(+)帯電しやすい素材です。そこに、(ー)帯電しやすいアクリルやポリエステル素材との間で摩擦が起きると静電気が発生しやすくなります。レイヤードの組み合わせのコツになると思います。
消臭・抗菌効果
ソックスやインナーウェアの臭いの元は、汗や皮脂。細菌がそれらを分解する時に嫌な臭いが発生するそうですが、ウールはもともと菌の繁殖を抑える機能を備えています。ウールが持つ天然の抗菌作用によって、臭が抑えられるということです。
MOJANE PICK UP ITEM
CLASSIC THERMAL MERINO BASE LAYER クルー/ボトム
WOOL100%
生地重量250g/m2のメリノウール生地で作られた厳冬期に向けのベースレイヤー。肌触りがよく、程よい厚みです。
着て直ぐにほんのりと暖かさが感じられ、運動中や休憩中も常に適温が保たれます。雪山では特に下半身が冷えやすいので、ボトムから取り入れるのもお勧めです。
メンズ/ウィメンズ共にトップスはクルーネックと1/4ネック、ボトムスは3/4レングスとフルレングスがあります。
ALL SEASON MERINO BASE LAYER クルー/ボトム
WOOL70%
シーズンインから春まで、最も長く使えるベースレイヤー。ウール量は150g/m2、ハイクアップや春の汗ばむ時期にもピッタリです。繊維の表面はメリノウール、繊維のコアはナイロンで強度を高めています(コアスパンテクノロジー)。メリノウールの良さと、ナイロンの薄さ、軽さを兼ね備えています。
オールシーズンメリノのセットアップは、23-24シーズンBurton akヘリウムベスト×パンツとの組み合わせで最も活躍したベースレイヤーです。日常の軽作業でも手放せない1着になりました。
メンズ/ウィメンズ共にトップスはクルーネックと1/4ネックがあり、ボトムスはフルレングスのみです。
SNOWBOARD FULL CUSHION “IGUCHI”
WOOL66%
スネ、ふくらはぎ、足裏にクッションが感じられるスノーボードソックス。ボリュームがあるのに通気性が良く、乾きが早いのも特徴です。
程よい加圧とクッション性により、長時間履いていても疲れません。また、ブーツとのフィット感が増したようにも感じられました。SMARTWOOLアスリート、BRIAN IGUCHI氏によるデザインにも注目!
THERMAL MERINO BARACRAVA
WOOL100%
SMART WOOLの人気の理由が一発で分かるのが、このバラクラバです。
口元がバリバリに凍ったり、極端に冷えることがありません。ワンサイズですが、男女問わずに使える伸縮性があり、洗濯を繰り返してもフィット感をキープします。
また、首元までしっかりフィットするので隙間風が入らず、ベースレイヤーの襟ぐりの中に入れることが出来ます。首回りがスッキリ使えるあたり、ポイント高いです。
THERMAL MERINO REVERSIBLE NECK GAITER
WOOL100%
サーマルメリノバラクラバと同じ生地で、ネックゲイター(ネックウォーマー)タイプもあります。
伸びがよく、ピタッとフィットしながらも窮屈さはなく、使い勝手の良いリーバシブルタイプです。カラーバリエーションも豊富なで、選ぶ楽しさもあります。冬の散歩や除雪など、日常でも活躍するアイテムです。
バラクラバと併用すれば、無敵の保温力が得られます。
MEN’S MERINO BOXER BRIEF
WOOL88%
スポーツシーンだけでなく、デイリーユーズにおすすめしたいのがボクサーパンツです。体にぴたっとフィットして暖かいのに汗蒸れしにくく、素材の心地よさが良くわかります。
SMARTWOOLのベースレイヤーとの組み合わせは抜群の着心地!プレゼントとしても喜ばれると思います。
※掲載価格は2023-24シーズン現在のものです。改定の可能性がありますのでご了承ください。
「汗量に応じてベースレイヤーの使い分けを。」-Nさん-
スキーヤーのNさんは、ディープパウダーになればパウサーフを楽しむ生粋の雪山男。道具への考察も深く、いつも興味深い話を聞かせてくれます。そんなNさんに、ベースレイヤーの使いこなしについて聞いてみました。
「メリノウール=完璧」ではなく、組み合わせと使い分けがカギ
私がメリノウールのベースレイヤーを使用するのは、緩やかに発汗→体温で緩やかに乾くような状況。比較的長時間のバックカントリーや、ゲレンデです。ゲレンデはハイクがないので汗で濡れる心配もなく、快適性が持続すると感じます。
一方で、パウサーフの時やハイクアップが多い時はメリノではなく化学繊維のベースレイヤーを選びます。マイナス気温の中でしっかり汗をかくような運動では、メリノでは追いつきません。化学繊維のものはすぐに乾くので運動量が多い時は重宝します 。
メリノウールのメリット
・素材がある程度保水し、その状態でも冷えを感じにくい。
・保水する分、外部への水分の蒸散が緩やかでレイヤリングした際にアウターシェルの内側が結露しにくい。 ・同じ天然素材であるダウンとの相性が良い(着心地も含めて)。
これまで、色々なレイヤリングで人体実験を繰り返してきましたが、このセットでどんなシチュエーションでもカンペキ!という組み合わせはないことを実感しています。
例えば、速乾性に優れる化繊のファーストレイヤーにポーラテックアルファのように抜けの良いインサレーションを組み合わせて運動量の多い行動をすると、間違いなくシェルの内側は結露し、ゴアテックスなどの防水透湿素材でも透湿の限界を超えます。
私はそのような場合、ハイク時はウインドシェル(パッカブルのペラペラのシェル)を使用し、滑走するまでアウターシェルは温存します。
モロのつぶやき
Nさんのレイヤード解説、参考になった方も多いのではないでしょうか。
僕はSMARTWOOLを取り入れたことで、体質の問題だと思っていた肌の悩みに変化がありました。
これまでMOJANEでは、汗を吸い上げる力と速乾性に注目して、化学繊維のテック系のインナーウェアを中心にセレクトしてきました。
もちろん僕も汗抜け重視で、化学繊維のインナーを当たり前のように着用していましたが、あせもが出たり、アトピーのような症状が出たり、肌の乾燥によるかゆみも悩みの種で、冬場は保湿クリームや塗り薬が欠かせませんでした。
実はこれが、化学繊維の吸湿・速乾の力、皮膚の水分が奪われることで起きていたのかもしれないと思い至ったのは、ここ最近の話。ウールのベースレイヤーではこれらの症状が出ず、自分に肌悩みがあったことすら忘れていたほどです。
もし、同じようなお悩みがある方は、試してみる価値はあると思います。