2度目の冬がやって来る
札幌都心の会社員だった1人のスノーボーダーが、日本屈指のスノーリゾート「NISEKO」への移住を決心したのは、約1年前のことでした。
岡本佑斗君の転職を応援するこのシリーズも、ついに今回がラスト。
最後は、岡本君の夏期の職場を見学させてもらいながら、1年間の感想と次の冬に向けた意気込みを聞きました。
そして、岡本君の後を追ってニセコモイワに参戦する新メンバーも続々登場!?ゲレンデの仕事に興味のある方や、ニセコ移住のきっかけを探している方は是非#1.面接と移住の準備から順にご覧ください。
INTERVIEWYUTO OKAMOTO
3月のアキレス事件
moro : 前回話を聞かせてもらったのは、冬真っ只中の1月だったよね。雪解けと同時に、ニセコ全体の雰囲気が激変したでしょう?僕が経験したのは15年も前だけど、怒涛の忙しさから一転、急に静まり返ったものだから、春は時間を持て余していたよ。
当時のニセコとは旅行者の数もリゾート地としても桁違いのスケールになっているけど、岡本君はモイワの春をどう過ごしていたのかな。
okamoto : 噂通り、春は繁忙期とは比較にならないくらい一気に何もなくなりました。3月下旬になると来客数が少なくなるだけでなく、契約を満了したシーズンスタッフがそれぞれ帰ってゆくのですが、丁度その時期に「アキレス腱断裂」という大怪我をしてしまったんです。
いつものように休憩中に1本滑りに行って転倒し、そのまま入院・手術・リハビリという長期療養という状態。会社には多大なご迷惑をおかけしました。
治療中は他のスタッフが僕の穴を埋めてくれたので、本当に助かりましたが、退院して職場に戻った時には、既にスキー場はクローズ。シーズンスタッフも全員居なくなっていて、空っぽの異世界に取り残されたような感覚でしたね。
仕事のペースにもゆとりが出来て、緊張感も薄れていき、周りを見回しても燃え尽きた様子でした。
春から配属されたフロント業務
moro : 今だから笑えるけど、怪我は本当に大変だったね(笑)。
慣れた頃が危ないとはよく言うけれど、正直「ついにやっちまったか!」って思ったよ。退院後は、リハビリをしながらゲレンデに隣接する宿泊施設での勤務となったそうだけど、具体的にどんな事をしているの?
okamoto : LODGE MOIWA834は、ニセコでは数少ないカプセルホテルで、僕の主な仕事はチェックイン・チェックアウトや予約、電話対応といったフロント業務です。
人手が足りない時は館内清掃やベッドメイキングをすることもありますが、それでも冬に比べれば、慌ただしい!ということはありません。逆に春夏は、自分から仕事を見つけて取り組む事が課題でした。
okamoto : 実は、仕事中につい寝てしまい、みっちり叱られた日もありました。
ホテルのスタッフは同世代が多く、皆で楽しく働こう!という環境なのですが、そんな和気あいあいとした雰囲気に甘えてしまったと、猛省しています。ですが、やるべきことを自発的に考えて取り組んでいれば、ニセコ特有のゆったりした空気の中で自分らしく働けると思います。
moro : 冬とは違って、ひとつの仕事を丁寧にこなせる季節ではあるけど、ここは陽射しも気持ち良さそうだし、気の抜けた春にうたた寝しちゃう気持ちは分かる(笑)。とはいえ、勤務中の居眠りは厳禁ですね。
モイワの顔とも言えるフロントの仕事、面白さやりがいはどんなところにある?
okamoto : やはり、お客様からのレスポンスがダイレクトに感じられる事です。先日、お客様とニセコの魅力や周辺のお店について話す機会があったのですが、後日その方から高評価の口コミを頂き、とても嬉しかったです。
他には、施設内のポスターや掲示物の制作にも挑戦しています。最近、手書きのPOPが良い感じに出来て自分なりに満足していたりもします。
夏ならではのニセコの過ごし方
moro : 今日は、久しぶりにモイワに来たけれど、目新しい物がいくつもあったよ。エントランスにはレンタル自転車、ゲレンデを丸ごと利用した広大なドッグランも始めたんだね。初夏からのニセコは登山やキャンプ、ドライブにも良い季節になるでしょう?
okamoto : 清々しい夏が過ごせるニセコは避暑地としても人気で、ツリートレッキング、ラフティング、マウンテンバイク等のアクティビティや、キャンプや温泉など、自然を満喫するには最高の場所です。観光スポットやソフトクリームが美味しいお店も沢山ありますし。
ニセコローカルは、魚釣りやサーフィン、山菜取りなどを楽しんでいるようです。そういったニセコの魅力や情報をモイワから発信していきたいと思っています。
moro : 冬はスキーヤーやスノーボーダーで賑わうのは想像できるけど、春から秋まではどんな人が泊りに来ていて、どんなおもてなしをしているの?
okamoto : バイク旅行をされているお一人様、週末や連休にはニセコ観光に訪れるご家族連れのお客様もいらっしゃいます。ご存じの通り、ニセコは建設ラッシュが続いているので、そういった工事現場の関係者の方々にも多くご利用頂いています。
ニセコエリアには高級ホテルが沢山あり、世界中からの旅行客に最高の空間とサービスを提供していますが、LODGE MOIWA834の役割は「交流の場」だと思っています。僕たちスタッフはお客様とのコミュニケーションを楽しみにしていますし、時にはお客様同士がフレンドリーに情報交換を行っています。季節を問わず、リーズナブルでカジュアルな旅をモイワで楽しんで頂けると嬉しいです。
ニセコの1年を振り返りる
moro : 思い切って街から山へ生活環境を変えて、無我夢中の冬を過ごして、閑散期も体験して、もうすぐ夏が終わろうとしているところ。四季を通して働いてみて、ニセコモイワでの仕事と生活をどう感じているのかな。
okamoto : 活気ある冬と、のんびりとした夏のギャップは大きかったです。その両極端な環境の中で上手くバランスを取って、仕事も遊びも楽しめると良いなと思っています。
冬は、僕の人生の中で一番深くスノーボードと向き合えた時間でした。担当はスキー/スノーボードのレンタルでしたが、1年目ということもあり、ついて行くのに必死だったんです。それでも繁忙期に「辛い」とか「大変だ」と感じたことはありませんでした。
それは多分、スノーボードの仕事自体が楽しかったからだと思います。
お客様にとって、スタッフは大切な情報源です。いくら僕が新人でも、プロフェッショナルだと思ってギアや山の状況などを聞いてきます。
なので、出来るだけ自分の言葉で答えられるように毎日一生懸命調べていました。自分が接客したお客様が、返却時に満足しているとモチベーションも上がりますよね。語学も知識も経験もまだまだですが、もっと磨いていきたい部分です。
moro : 決してマニュアル通りではなく、ユーザーにとってより良い提案をして喜んでもらうって、接客の醍醐味だよね。
冬の間は、いつも小綺麗にしている岡本君が髪も髭も伸ばしていたから、このままスノーバムに染まってしまうのかと少し心配だったんだけど、初めての仕事に真剣に取り組んでいたんだね(笑)。
moro : 生活面ではどうだろう?定住する社員とシーズンスタッフでは、暮らし方にも差があると思うけど、ルームメイトやスタッフたちとはどう関わり、どんな風に過ごしていた?
okamoto : 職場の仲間と生活を共にする寮は、僕にとって運命的な出会いの場にもなりました。
ルームメイトは、熊本からはるばるやってきたスキーヤーで、そのまま北海道に定住しました(笑)。夏の間は喜茂別町のゴルフ場で働いているそうです。寮を出てからも連絡を取り合い、一緒にサーフィンに行ったりしています。
モイワ周辺には、飲食店やショップが立ち並ぶような繁華街がないので、冬は滑る事が主な楽しみです。シーズンスタッフの多くは交通手段が無いので、車持ちの社員と一緒に買い出しに行ったり、アンヌプリまで滑りに行ったりしていました。
LODGE MOIWA 834のレストランや、モイワから徒歩1分のところにある居酒屋「祭」は、スタッフが親睦を深められる数少ない場所です。因みに僕は「祭」で2度、記憶を飛ばす程楽しい時間を過ごした…と、記憶が無いなりに記憶しています。
moro : その時の失敗談は、スピンオフで聞かせてもらいましょう。
自分を変えた、ニセコタイム
moro : 1年前のインタビューでは、自分を変えたい!って話していたよね。冬の間は、忙しさも含みでスノーボードライフを謳歌した。今は、少し落ち着いて自分と向き合えているんじゃないかと思うけれど、改めてニセコで暮らしで自分の変化を感じた点はある?
okamoto : 最も変わったのは、時間の使い方です。単純な事ですが、1日は24時間もあって色々出来るんですよね。
札幌でサラリーマン生活をしいていた頃は、毎晩明日が憂鬱で、平日の疲れから何も手に付かない休日を過ごすこともしょっちゅうでした。今は、自分のやりたいことに多くの時間を費やしながら、仕事と両立出来ています。
例えば、冬の繁忙期でも仕事の後にナイターを滑ったり、温泉に行ってから家でピザパーティーも出来る。それまで想像もつかなかった充実した毎日に、初めは少し怖いくらいでした(笑)。
最近は、ずっと興味があったサーフィンを始めたので、早朝サーフィンに行ってから出社する日もあります。山に住んでいても長万部まで1時間という良い環境です。サーフィンが、今後のライフスタイルやスノーボードにどう影響していのくか、楽しみにしています。
moro : 精神的な疲れから解放されたことが、ニセコ移住の一番の成果だね。何もしなければ何も無いのが田舎暮らしでもあるから、岡本君が仕事も趣味もどんどんトライしている姿を見られて、僕としても嬉しいよ。
次の冬に向けて
moro : さぁ、いよいよ次の冬がすぐそこまで来ているね。仕事、スノーボード、今はどんな準備をしている?2019-2020シーズンの意気込みを聞かせてください。
okamoto : 昨シーズンに続きレンタルを担当する予定です。今年は売場のレイアウトやレンタルギアも大幅にリニューアルするので、期待していてください。
今は、配置やオペレーションを決めたり、各ブランドのセミナーに参加したり、着々と準備を進めているところです。去年の経験を生かして、より良いレンタルショップになるように頑張ります。
僕自身のスノーボードの準備はまだですが、DVDや去年仲間と撮影した動画を見返したり、BURTON ONLINEをチェックしたりして、気持ちだけは高まっています。キングスに行きたいところですが、アキレス腱に不安が残っているので焦らないように気を付けています。
これから進む道
moro : ニセコの仕事を定住者として根を張って取り組む人もいるし、充電期間として過ごす人もいると思うけど、この先について考えたり、計画している事はある?
okamoto : 先の事は、正直まだわかりません。モイワ周辺も開発が進む予定なので、変化していくモイワに関わっていたいという気持ちはあります。現状は、集客の少ない夏をどう盛り上げて行くかが課題です。
今年は形に出来なかったアイディアも実現していきたいですし、そうやって毎年アップデートしていく仕事の中で、定住に繋がっていくかもしれません。
冬期についても、ゲレンデにはレンタルの他にも、リフトやショップなど様々な仕事があります。
その中で今、興味を持っているのがパトロールです。もっと直接に山に関われる仕事がしてみたいと思っています。スキー場勤務ならではの知識や技術、経験を身につけて、それを自分に対する自信にも繋げていきたいです。
moro : やりたいこと、やるべきことがハッキリしている間は、ぜひモイワの仕事を続けてもらいたいと思っているよ。岡本君がいるとなれば、僕も冬にモイワに来る理由が増えるしね!
迷えるスノーボーダーへ
moro : 1年間に渡ってこの企画に協力してもらったけれど、記事を見た人からのリアクションはあった?今、ニセコ暮らしを検討中の人に、体験者として伝えたいメッセージがあれば聞かせてください。
okamoto : ブログを見た人からは、「楽しそう」とか「羨ましい」という反応が多かったです。みんな、思い切って何かに飛び込みたくても「理想ではあるけど現実的じゃない」と、どこかで線引きをしている様にも感じました。
僕がニセコで働くことを考え始めてから行動に移すまでには、実は3年近くもかかったんです。
今となっては何故そんなにも悩んでいたのか?という感じですが、当時の僕には必要な時間だったのだと思います。
僕は、札幌で生まれ育ち、平々凡々に大学までの学生生活を過ごして、これといった野心も無いまま、ただなんとなく社会人をしていました。このブログでは、そんな「普通」の僕がチャレンジした一連の流れと現在までの結果を見てもらえます。誰かの「一歩」を後押し出来れば良いなと思っています。
僕から言えることは、「まず思い切ってモイワに来て下さい。」という事です。ゲレンデの仕事は「山に籠る」と表現されることも多いですが、札幌まで車でたった2時間、外界からシャットアウトされる訳でも、浦島太郎状態になる訳でもありません。シーズンスタッフは日本全国だけでなく世界中から「スキー、スノーボードが大好きだ!」という共通点を持って集まってきます。スノーボードのスキルアップはもちろん、最高の出会いと経験が待っています。働き方も多様化の時代、僕は生き生きと働いた経験が、次の転職に不利になるとは感じていません。
moro : 僕も全く同感だよ。若い世代には良い刺激になるし、30代、40代だって目的があれば挑戦する価値があると思うんだ。
MOJANEユーザーの中からは、岡本君に続いて、江川君(20代)が今年の春から採用され、秋からはも山下君(30代)がモイワで働き始める事が決まっています。岡本君が拓いた突破口はとても大きかった!岡本先輩、彼らをよろしく頼んだよ!
密着1年間のまとめ
どこか不安気で自虐的だった岡本君が、決して楽ではない田舎生活や異業種の仕事を選び、みるみる自信を付けていく。
この1年の彼を見て、改めて自分のスノーボードライフについて考えた人も多かったのではないでしょうか。
様々な挑戦や葛藤を繰り返しながら、自分らしい生き方を模索中の岡本君。どんなスノーボーダーに成長していくのか、今後も楽しみにしています。
全3回に渡るこの企画を引き受けてくれた岡本君をはじめ、ご協力くださったモイワスタッフの皆さん、支配人の吉村さん、ありがとうございました。これからもMOJANEはスノーボーダーの職探しをバックアップしていきます。
MOIWAオカチャンのPRタイム
ここからは、ニセコモイワスキーリゾートより、スタッフの岡本が、スキー場や宿泊施設、リクルート情報のご案内をさせて頂きます。ニセコモイワでの仕事にご興味のある方は是非ご参考下さい。
NISEKO MOIWA SKI RESORT
ニセコモイワスキー場は、ニセコエリアから少し離れた場所にある小さなゲレンデです。ウィンターリゾート地として世界的に有名になったニセコですが、その中でもニセコモイワは穴場的存在で、ローカルにも人気のスポットとなっています。
モイワの魅力は、午後になっても高確率で膝上のパウダースノーが楽しめること。朝イチを逃しても、少し奥へ歩けば簡単にファーストトラックをゲットできます。
ニセコモイワは、観光客でごった返すニセコのイメージとは少し違っています。せっかくの休日は混雑を避けて滑りたいという方も多いと思います。冬のハイシーズンでも、比較的静かに過ごすことが出来るモイワなら、ダイナミックなニセコをゆったりと楽しんで頂けると思います。
周辺の大規模なスキー場とは違い、モイワの山自体は小さくコース数も少ないですが、ゲートをくぐればパウダーランができ、綺麗に整備されたオープンピステンバーンでは、大きくキレのあるターンを楽しむこともできます。コンパクトな中に全てが詰まっているので、軽く流すだけでも面白い山です。ニセコに訪れる方の多くはヒラフで1日を過ごしていると思いますが、帰り際に是非一度モイワに立ち寄ってみてください。次回はきっとモイワを狙いたくなるはずです。
LODGE MOIWA834
そして、ニセコモイワスキー場の麓には、ロッジモイワ834が年中営業しています。
リゾート地には珍しいカプセルホテルですが、都会にあるような狭く密集した客室とは違い、体格の良い海外のお客様でも快適に過ごして頂ける、ゆとりのある客室です。ファミリー向けの個室もありますので御家族でもご利用ください。
また、スポーツを楽しむお客様の為に、広い手荷物スペースやロッカーも完備しています。お一人でも、仲間とのトリップにも、四季を問わずゲストハウス感覚でご利用ください。
RESTAURANT RAPHAEL
LODGR MOIWA834に併設するカフェレストラン「RAPHAEL/ラファエル」は、モーニングや焼き立てのピザランチが好評です。春夏のランチでは、マルゲリータ、ジェノベーゼ、レインボーの3種類のピザ(各1.200円)の他、ドリンクメニューをご用意しております。
もちろんご宿泊のお客様以外もご利用いただけますので、ニセコにお越しの際は是非お立ち寄りください。
夏期営業時間CAFE8:30-16:30 / PIZZA11:00-14:00
NISEKO MOIWAの仕事環境と採用情報
ニセコモイワのシーズンスタッフの募集は例年9月頃から始まり、面接や見学も随時対応しています。
モイワは、ニセコエリアの中でも比較的日本人スタッフが多く、落ち着いた雰囲気が特徴です。
雇用条件や仕事内容は多種多様、熱意があれば言葉の壁も越えていけると思います。留学気分でニセコの雰囲気を楽しんでみてはいかがでしょうか。興味のある方はニセコモイワ総支配人吉村さんのインタビューも併せてご一読ください。
COMPANY DOMITORY
シーズンスタッフや社員の為の寮は、LODGE MOIWA834の裏手、徒歩1分のところにあります。
外見は大きなアパートの様で、お風呂、トイレ、ミニキッチン付きのワンルームで暮らします(冬季は相部屋です)。
洗濯機や電子レンジ、冷蔵庫といった必要家電は備え付けなので、バックパック一つで生活はスタートできます。コンビニやスーパーマーケットまでは少し遠いですが、目の前はゲレンデ、という贅沢な環境です。
- #1 面接と移住の準備・ニセコモイワ募集要項
- #2 ゲレンデの仕事とニセコ暮らし
- #3 春夏のニセコ、そして次の冬へ