NEVER SUMMERを一躍有名にしたキラーコンテンツ
90sライクなオールマウンテンファンボード
NEVERSUMMERはよく知らなくても、HARPOONというボードは見聞きしたことがある、という方は多いのではないでしょうか。
リリースして数年にも関わらず、すっかりブランドの顔になっているHARPOONは、NEVER SUMMERが送り出すフリーライディングのためのディレクショナル・パウダーボード。
「俺たちのオールマウンテンフリーライディングってのはこういうコトだぜ!」と言わんばかりに、彼らの遊び方が詰め込まれています。
コンセプトはSMOOTH MUTI-TASKING CARVER。パウダーはもちろん、コンディションが悪い日でも、まるで自分のパワーが増強されたかのような安定感!
いつもよりスケールの大きな動きが自然に生まれてくるボードです。
90年代を彷彿させるクラシックなアウトラインにも注目してください。
この記事では、HARPOONの全体像の紹介と、22-23モデルを1シーズンかけて試乗したレビューをまとめています。
来季23-24モデルに大きな変更はありませんので、新作を選ぶ際にも十分参考にしていただける内容です。
シャチを狙い撃つNEVER SUMMERの銛
NEVER SUMMERファンの間でHARPOONは“ORCA KILLER”と呼ばれているそうです。
ここで言うORCAとは、もちろんLIB TECHの世界的ヒット作となったトラビス・ライスモデルのこと。ツリーランやマッシュをシャチのように縦にポンポンと飛び進むショートワイドボードです。
そんなORCA=シャチの人気を食い止めるべく、NEVERSUMMERが放ったのは、大型水生動物を突き獲るHARPOON=銛(モリ)でした。
高速域とターンが得意なオールマウンテンボードHARPOONに乗って「飛び跳ねるORCAを射よう」というカウンターアクションであり、「セッションで魅せ合おう」というメッセージも含まれているかもしれません。
類似ボードで対抗するのではなく、シャチを追う側の視点に立ったNEVERSUMMER。遊び心だけでなく、LIB TECHへのリスペクトを感じます。
抜群のパワーと安定感でスムースなターン
HARPOONのターンの気持ち良さは、レビュアーからも好評でした。乗れば誰もが感じる特徴でしょう。
FUSION ROCKERの前足側のトランジションエリアと、キャンバーが進行方向をリードし、そのまま流れる様に後ろ足のキャンバーアーチへと繋がっていきます。
同じNEVER SUMMERでもSWIFTで体感したボード先導型とは違い、ターンの弧を心地よく描き進んでいくような感覚です。
ターンには重量感と滑らかさがあり、どんな雪のコンディションにも見事に対応。真ん中のロッカーを利用した急な旋回後は、後ろのキャンバーを踏むとボードが流されず済みます。
一般的なボードの安定感は、ボードの硬さや重さで得るか、そうでなければ高級なハイテク素材に頼っていますが、NEVER SUMMERは耐衝撃材(ゴム)を用いているので、重さと同時に特有のしなやかさがあります。
その為、どんなシーンでも(強烈なアイスバーンだったとしても)確実に安定してくれるのだと思います。
適正サイズを基準に、遊び方に応じたサイズ選びも可
HARPOONは誰もが自然に乗れるクセのないボードですが、特定の乗り方を想定しているなら、サイズチョイスにも選択肢があります。
ジャストサイズ:場所や雪質を選ばずマルチに楽しめるオールラウンドボード。
ワンサイズダウン:細かな動きが得意なツリーラン/スケートスタイルボード。
ワンサイズアップ:ダイナミックに乗るビッグマウンテンフリーライディングボード。
いろいろな山に行く人、小〜中規模ゲレンデをホームにしている人ならジャストサイズ〜ワンサイズダウンが候補になります。
大きな山でスパーン!とダイナミックに滑るなら、ワンサイズアップもオススメです。ただ、サイズアップはコースのサイズ感や斜度が足りないと鈍い印象となるのでご留意を。
SHAPER SERIESの基本機能とHARPOONのスペック
まずはSHAPER SERIESに共通する機能の中から、HARPOONのカギとなるテックを抜粋します。
SHAPER SERIESの基本機能
FUSION ROCKER CAMBER
NEVER SUMMER版のダブルキャンバー 、ROCKER CAMBERがセットバックされた構造で、SHAPER SERIESの要となるベンドです。 前足のキャンバーアーチは浅く(ゆるめ)、後ろ足のキャンバーアーチは深く広い(パワフル)のが特徴で、メインスタンスでのライディングを想定したバランスです。
DAMPING SYSTEM
NEVER SUMMERのスペック表には”DAMP”という項目があります。この機能は、振動吸収や安定性を示すもの。エッジの周りに仕込まれたラバーブッシングが衝撃や振動を吸収し、ライディングの安定性を高めます。DAMPのテイストはモデルによって異なりますが、HARPOONは軽量化を意識したRDS2 Damiping Systemが採用されています。 ちなみに、NEVER SUMMERのボードに使われる素材の中でこの素材だけが日本製だそうです。
VARIO POWER GRIP SIDECUT
ライディング中のボードを踏む力を利用してグリップを高める、NEVER SUMMER独自発想のサイドカーブ。実際に乗ると、ボードへの荷重で接点が増えて「噛む感覚」が良くわかります。 表記ではメインサイドカーブの数字のみが記載されていますが、各モデルのベンド(プロファイル)に合わせてセットされています。
SINTERED P-TEX SIDE WALLS
サイドウォールにも滑走面と同素材を使うことで、板を立ててサイドウォールが雪面に当たっても走り続ける構造です。現在は多くのブランドでも取り入れている機能ですが、実はNEVER SUMMERが業界初でした。 また、P-TEX素材によりボード全体の柔軟性を高め、寒くなればなるほど固くなってしまうサイドウォールのクラックを防ぎます。これは寒さが厳しく乾燥したエリアならではの発想ではないでしょうか。
22-23 HARPOON 156 の基本スペック
ウェスト 26.2mm
ノーズウェスト 31.4mm
テールウェスト 30.1mm
有効エッジ 1160mm
サイドカット 795m VARIO
テイパー 13mm
FLEX 5
DUMP 5
フレックス&トーション
部分的なフレックスコントロールはされておらず、全体的に均一です。 その為か、フレックスレベル5という数字以上に硬く感じました。フレックスレベル7のSWIFTと比較しても、あまり違わない印象です。
トーションは硬すぎず、柔らかすぎず、ごく自然。バランスが良いと思います。
ボードウェストがあり、ノーズ、テールのチップも平たいので、安定感は抜群です。
キックの高さと深雪の関係
HARPOONはパウダースノーを前提としていますが、ノーズ、テールのキックは特に高くありません。
ロッカーベースのボードなので浮力はたっぷり、ボードの真ん中から浮いてくれる様に設計されています。キックを高く設定しなかったのは、スピードと安定性を重視したからだと思われます。
面積の広いノーズと緩やかに反るロッカーなら、前足も踏み込める。これによりボードが雪面と並行を保てるので、ロッカーボードでもスピードに強いという訳です。
テールのキックはノーズよりも低く、パウダーをスイッチのまま長距離走破するほどの性能はありませんが、必要最低限のキックはついています。
マッシュでは積極的にオーリーをかけなくても、少し”弾く”イメージで十分に飛び出してくれます。
また、テールキックが無い分、スプレーはダイナミックに上げられます。
22-23 HARPOON 試乗レビュー
アイシーでもボードが回転!タフな環境になるほど頼れる存在
諸橋正太
22-23シーズンはNEVER SUMMERを知るために、数モデルのテストを繰り返していました。その中で僕が最も長い時間をかけたのがHARPOONです。
正直、最初の印象は「頑丈な板」でした。回転性やフレックス、扱いやすさなどをチェックするも、癖のないごく普通のスノーボードに思えました。
ところが、スピード域を上げていくと、重さとフレックスが絶妙に噛み合うHARPOONの特性が見えてきました。
例えば、幅が広い急斜面や荒れたパウダーでスピードを出すと、一見当たり障りのないフレックスバランスに、実は十分なインパクトが備わっている事に気付きました。
更にスピードに乗せていくと、軽く柔らかなボードに乗っている様な感覚に。ボードがバタつくこともなく、弾き飛ばされることもなく、硬いボードのような安定感もあります。
HARPOONの底力を垣間見た日がありました。
3月上旬の比布スキー場。大雨の後に-7℃の寒気が流れ込み、圧雪車がコースに入れないほどカチコチに凍り付いていました。朝から注意を呼び掛けるアナウンスが何度も入っていたので、引き返すべきか迷いましたが「逆にHARPOONのテストにはうってつけではないか!」と、心を鬼にしてリフトに向かいました。
雪面は前日の滑走跡が深く刻まれた氷の板。キャンバーボードでは危険な状態です。「もし、転んで手を付いたら色々と終わるな…」と内心ヒヤヒヤしながら滑り出すと、HARPOONのエッジが見事に噛んで、無数の滑走跡に引っかかることなく、凍った溝の上でもボードを取り回すことができました。
硬いスノーボールでも、テールで弾くパワーがあり、多少のデブリはものともしません。
このスリリングな体験があったからこそ、NEVER SUMMERへの信頼感と新たな視点を持てた気がします。
キロロの長嶺や日高国際スキー場をかっ飛ばすには最高のボードになるはずです。
ネバーサマー流のオールラウンドパウダーボード
平山雅一
試乗ボード:HARPOON156
使用バイン: FALCORE 12°/-12
連想するモデル:LIBTECH2、SALOMON HPS
滑りたい場所:オープンワイドな中斜面
相性の良いバイン:MARAVITA,NOW IPO
どんな人に合う?:どの斜面でもリラックスして楽しく滑りたい人。基本的にはサイズさえ間違えなければ誰でも乗れる。
僕が試乗させていただいた8モデルの中で、頭で考えずに最もシンプルに乗れるボードでした。
端的な言い方をするなら、現代風のオールラウンドフリーライドボードといったところでしょうか。リラックスしたオーソドックスなターンが気持ち良く、パウダーでの浮遊感もテイパーが効いていてノーズが沈まず気持ち良く浮いてくれました。
ツリーランやカービングに関しても、それに特化したモデルのレベルとまではいかないまでも、十分に楽しめるクオリティです。
試乗したラインナップの中で、ターンの大きさ、スピード、エッジプレッシャー、斜面の緩急に対する許容範囲が最も広く、多種多様なターンに対応できるボードでした。
「パウダーやターンの操作がしやすく、気持ち良く滑れる」というこの種のボードは、高速域でのボードのバタつきが弱点となりがちですが、HARPOONは他メーカーの同系統のボードと比較して、高速安定性が高いように感じました。
総合力が高く欠点が見当たらないボードでしたが、僕個人的にはテールのチップがもう少しあると、パウダーコンディションで180などしてスイッチになった時にも対応しやすくなると思いました。ただ、そこを求めるならSHAPERシリーズのSHAPERを。ネバーサマーは細かなラインナップの設定があるので、そちらを選んでくれという事だと思います。
各モデルの目的やメッセージがはっきりしているネバーサマーの中でも、このボードは誰にとってもフレンドリーで、他のメーカーから乗り換える時も違和感なく移行できそうです。正にネバーサマーの登竜門的なボードでしょう。
スノーボードはとにかく楽しく、気持ち良くが一番。でもベストとは言えないコンディションの時でもストレスなく楽しみたいという方はHARPOONで決まりだと思います。
自然と動きたくなるトリックパウダーボード
竹田礼
試乗ボード:HARPOON156/159
使用バイン: 54.5cm 12°/-9°
SWIFT、SHAPERと比べ、アクション多めで動き回りながら滑っていました。
動かしながら滑る分、多少の疲労感はあったものの、安定したトリックを繰り出しやすく、3モデル中で一番攻めれるトリックパウダーボードでした。
最近はまったりメローに乗るボードが好みなのですが、そんな自分でもHARPOONに乗ると、自然と動き回らされました。横の動きより縦への動きが良くはまった印象です。
バランス良く滑れましたし、ピステンでのカービングの食いつきもバッチリあります。
ピステンでのカービング性能の高さはNEVER SUMMERに共通しています。お陰で、自分好みのパウダー性能で選べるのは非常にありがたいです。 ゲレンデメインで滑る自分としては、たとえパウダーボードであっても、ピステンで手を抜かずに滑りたいですからね。
NEVERSUMMERというブランド、正直欠点が見当たらないです(汗)。
サーフィンで例えるなら、波のコンディションが分からないトリップに持っていくべき1本でしょう。どんな波にも臨機応変に対応してくれます。
159も試乗しましたが、モッサリした印象でした。多分、ウェイトやパワープレイヤーなら問題ないですが、自分みたいな体重と脚力では多少のもたつきを感じてしまいました。自分のジャストサイズは156です。
癖のないオーソドックスパウダーボード
近藤勇介
使用バイン:NOW IPO 18/-6 54cm 15/-9 55cm
バインの相性:IPOでも十分楽しめました。もう少し硬めのバインでもいいと思います。
最初に乗った時、自分のいつものスタンスで乗ってみて、見た目のイメージとは違う感じがしました。そこで、1cmスタンスを広く、アングルも両足3°ずらしてみると、フリースタイル寄りのパウダーボードとしてしっくりきました。
ネバーサマーの板は、特にREFが決まってい無いので、スタンスやアングルは自分で探っていく作業が必要だと思いました。
安定感は抜群、反応も良く小回りも効く。ウェスト幅を感じさせないし、パウダーは申し分なく浮きました。唯一、スイッチの浮き感はSWIFTの方が良かったと思います。
パウダー、ピステン共に、広めのオープンなところで大きくターンしたくなるボードです。
レギュラーでの浮き感は十分なので、初めてパウダーボードを買う人や、パウダーでもフリースタイルな動きをしたい人、バックカントリーでも十分使えるのでは?と思いました。
広めでオープンな場所、富良野やキロロなどに合うと思います。
初のパウダーボード!よく動かして楽しく乗りたい板
ツッキー
CUSTOM Xを10とした場合のHARPOONの印象
フレックス:5 (全然硬くない)
トーション:2 (柔らかい、千切れそう笑)
オーリーのしやすさ:13 (楽だけどもっと弾きたい)
プレスのしやすさ:17 (楽)
僕はパウダーボードといえば、ショートファットかディレクショナルの太いノーズのラウンドピンでテールが割れている系の板でふわふわの乗り心地を想像していました。
今回乗せてもらったHARPOONはディレクショナルツインのような、ラウンドシェイプでダブルキャンバー。実際に乗ると、パウダーに強く遊べる板という印象でした。
ダブルキャンバーと聞いて、結構ルーズなのかなと思っていましたが、足元のエッジがよく効き、操作性も良くターンの切り替えの時でも159cmという長さは全然気になりません。(しっかりと効くトーションのおかげかも?)
ノーズとテール部分のロッカーはバーン滑走時にもバタつきはほとんどなく、プレスすれば板の中央くらいから大きくしなり、しっかり粘り、返ってくる。この粘りが気持ちのいい「しつこさ」笑
オーリーをかけても素直に返ってくるので、弾くタイミングが合わせやすく、引き付ける動作も楽にできます。回す時は、ズラしやすいけれどそのまま抜けたりしなかったので、「この板で出来ることはまだまだあるな、練習しないと!」という気持ちにさせてくれました。
肝心のパウダーランは、気持ちのいい浮遊感と走破性!荒れた雪面や起伏の激しい雪面でも負けず、いなせばしっかりついてきてくれます。
初見のタイトなツリーランでも、しなやかに板が動いて急なボードコントロールもあまり不安を感じませんでした。
開けたパウダーでは、スピードが無くてもターンやオーリー、プレスがしかけやすいので、ラインのレパートリーを増やす想像力も鍛えられそうです。
強いて物足りなさを感じた点を言えば、もう少し硬さがあっても遊べるし、オーリーももっと高く出来ると感じました。 また、滑っていてストレスは全くありませんが、「この板の持つ絶妙な粘りは滑走何回くらいまで保つのか?」というのも気になる点です。
全体的にバランスが良く、特にパウダーが得意でバーンでも楽しく乗れる板なので「よく動かして楽しく乗りたい!」という時にもってこいの板だと感じました。その分足は疲れました…笑
今回のセットアップ、チューンナップ込みでかなり楽しかったです。もっと性能を引き出してあげたかったなと、新たな課題を見つけています。
モロのつぶやき
3月、ザクザクコンディションでの1枚です。姿勢を高く保ち、直立したまま大きくリーンアウトするトゥサイドターンは、実に開放的で爽快、ついつい「フォ〜!!」が出てしまいました。こんなターンが春でも楽しめるのがHARPOONです。
この日はHARPOON 156,159 , SWIFT, SHAPERも乗り比べましたが、このターンがキマるのはHARPOON 159のみ(ワンサイズアップ)でした。
HARPOONはダイナミックに滑ってこそ!斜度がないファミリーゲレンデよりは、ロングコースや広いバーンで加速させると、生き生きとその機能を発揮し始め、乗り手を刺激します。
次はどの山に持っていこうか…。
乗るほどに味わいが生まれる、スルメボードに認定です。