このブーツは“SNOW SURF”である前にVANSだ!
SNOW SURFとは、雪庇やバンクを波に見立て、サーフィンの様に滑るスノーボードスタイルです。(実際にはいろいろな視点がありますが、それはまた別の機会に。)
この言葉からは、贅沢なパウダースノーのイメージが沸き上がりますが、VANS INFUSE SNOW SURFはそれに加えて、遊びに満ちた、もっとジャンクなサーフスタイルまでを想定しているはずです。
ロングボーダーやムービースター、トリップサーファーらが所属するVANSならではのサーフインスパイアブーツ!
柔らかなブーツが好まれるSNOW SURFシーンに、頼もしいフリーライディングブーツが誕生しました。
マッシブな環境でも耐える柔軟性、コシ、暖かさ
SNOW SURFと銘打つ通り、ディレクショナルボードで地形・浮力・重力をサーフライクに楽しめるよう「柔らかめ」設定のブーツです。
ただ、これまでSNOW SURFを牽引してきたK2 TTやDEELUXE ARETH RINなどと比較すると、確実に「芯」があります。このソフトミディアムなら、ジャンクコンディションにも十分対応できるだろう、という感触です。
新品の状態では、特にアウターとレザー部分が硬く感じられますが、レザーは徐々に馴染むので、柔軟性は増していくでしょう。
ブーツ全体は、前傾姿勢が取りやすいようフォワードリーンが入っています。
また、短いバックステーや、ウーヴン素材のカフにより、ライディング中のアクセルを踏むように足首を伸ばす動作に対しても、負荷がかかりにくいデザインです。
インナーはフカフカと柔らかく密度の高い履き心地。長時間履き続けてもストレスが少なく、保温性も問題なさそうです。
僕自身、実際に使用するのはこの冬からですが、繰り返し足を通して感触を確かめる中で、惜しまれつつも廃版となった「DEELUXE FORMATIVEの上位互換」という印象を持っています。
トレンドど真ん中のアウターブーツデザイン
レザーとレースゲイター、オーセンティックなガムソールの組み合わせは、正に近年のスノーボードブーツの新定番的なデザインです。
マウンテンブーツテイストのデザインは、他のギアやウェアとのスタイリングにも気を配りたくなってしまいます。
レースゲイターとタンには、ソリッドな波、小波、大波を示す3つのアイコンが。これらを雪に変換すると、急斜面、落ち系、そしてクリーンなパウダースノーになる、と僕は解釈しました。
つまり、このブーツが北海道の多彩な地形や幅広いSURF STYLEの滑り方に対応する証では?
シューレース × BOA:VANS HYBRID PLUS BOA
ブーツタイプは、デザインと機能性が両立するシューレースとBOAのハイブリット。VANS HYBRID PLUS BOAがアキレス腱側から足首をグルッと締める構造です。
BOAの締め付けがしっかりしているので、あまりレースに頼らなくてもフィット&ホールドが得られます。
レースゲイターが馴染むまではブーツ下部の紐が締め上げにくいので、使い始めはBOAをメインに締めると良さそうです。
VANSユーザーから好評のCUSTOM SLIDE GUIDE
足首部分のパッドCUSTOM SLIDE GUIDE(VANSの特許技術)をスライドさせれば、締めたい位置を調整でき、ワイヤーがタンに与えるダメージを防ぎます。
この機能は、INFUSEを1シーズン使い倒したユーザーからも大変好評でした。
CUSTOM SLIDE GUIDEは足首の3本のワイヤーに繋がっています。一番下のワイヤーがベースとなる締まり具合を整え、クロスしているワイヤーが力を逃がさない様にホールドしてくれます。
以前ブログでご紹介したVANS INVADO PROにもHYBRID BOAとCUSTOM SLIDE GUIDEがセットで搭載されていますが、INFUSE SNOW SURFの方が締めるパワーが強く、CUSTOM SLIDE GUIDEの効果もよりハッキリと体感できます。
パッドを左右に移動させると、ピンポイントで締め感が分かるので、内側に入れたり外側に入れたり、動かして快適な位置を探ってみてください。
足ブレを抑えるサイドパネル、シューズライクなベンチレーション
アッパーのラバー部分、外側のサイドパネルはブーツの型崩れを防ぎ、足を支えるための補強が入っています。
柔らかいブーツにはこの一工夫がとっても重要!あるとないのとでは大違いで、足がぶれにくく、安定感が高まります。
逆サイドには、ブーツ内の湿度をコントロールするための小さな穴が2つ。
軽いハイクアップや長時間ライディングを意識したベンチレーションであり、シューズのようなVANSらしいデザインです。
ふくらはぎの圧迫が少ない:OVERSIZED PLEASURE CUFF
MOJANEユーザーの中にも、足サイズに対してふくらはぎが太く、ブーツ選びに悩まれている方が一定数いらっしゃいます。
VANS INFUSE SNOW SURFは、後ろのカフがウーヴン素材となっていて柔らかくフィット。ギュッと圧迫されないので、ふくらはぎの窮屈感を我慢している方は、試着してみてはいかがでしょうか。
暖かく、柔らかいのに足首を捉えるV3ライナー
INFUSE SNOW SURFには、VANSの最高峰ライナーV3が採用されています。
踵のホールド力はV2と同様ですが、V3は全体的にフォームが厚くみっちりとした感触で、保温性もアップしています。
また、V3ライナーには湿気を放出させる素材、THE NORTH FACEのFLASH DRY®︎が使われています。ライナー内で発生した湿気はアウターのベンチレーションを通してブーツの外へ。汗冷えが起きにくい設計です。
ライナーに関するVANS共通の特徴は、ヒール部分を掴むようにとロックするX-CAGEです。アキレス腱~足首周りを、柔らかなフォームでしっかりと包み込みます。
X-CAGEについては、VANS INVARD PROの記事で詳しくご紹介しているのでご参考下さい。
フレックスをカスタマイズする:VANS FLEX CONTROL SYSTEM
INFUSEというモデルから派生したINFUSE SNOW SURFは、INFUSEと同じ機能が多く使われています。
その一つがフレックスを強化するための付属パーツ、フレックスコントロールシステムです。(この他、紐とBOAのコンビネーションやBOAシステム、V3ライナーなどもINFUSEと共通です。)
氷点下でも割れにくく高反発・耐衝撃に優れた素材、HYTREL(ハイトレル)製のバーで、ブーツのフレックスを自分好みにコントロールすることができます。
カービングやテクニカル競技の分野では、タンの部分に追加してフレックスを強化するパーツ(パワーライドなど)がありますが、純正で付属するのは初ではないでしょうか。
また、VANSはタンの両サイドに追加する2ピース仕様にブラッシュアップしています。
タンの左右に追加したり、片側だけに追加したり、ブーツを着用したまま付け外しができる点も画期的です。
環境や滑り方に合わせて、現場で素早くアレンジできることはもちろん、ブーツにヘタりが出てからも必要なフレックスが維持できるので、ブーツの延命にも一役買うと期待しています。
フレックスコントロールをどう使う?
付属のバーは、タンの左右に1枚ずつ、計4枚です。
ボードの性格やライディング環境に合わせて、抜き差ししながら調整しましょう。
基本的には、タンの外側にバーを追加すると足を内側に倒しやすく、逆にタンの内側に追加すると足が外側が倒しやすくなると想像できます。
例えば、フルキャンバーボードでダウンヒルをチョッカるなら、外側のバーは必需品。真ん中が硬いボードにダッグスタンスで乗る時には、内側のみにバーを入れると効果的かもしれません。
そして、ブーツにヘタりが出てきたら、最終的にタンの両サイドにバーを入れることになると思います。
ディレクショナルボード以外にも使いたくなってくるのが、VANS流スノーサーフ…。もしかして、このブーツとのベストマッチはLIB TECHのDOUBLE DIPかも!?
納得の費用対効果、むしろお得感⁉
INFUSE SNOW SURFの価格は、税込54.450円。VANSの中ではミドルハイグレードに位置するブーツですが、搭載された機能はどれも上質なものばかり。
「ライナーはV2で十分だったのでは?」「ここまでリッチな仕様にしなくてもうまくまとめられたはずなのに…」なんて思ってしまうほどです。
余計な機能をそぎ落として価格を抑えつつも、履き心地には妥協なし。
もちろん、来季以降の価格改定や、今期限りのモデルとなってしまう可能性もありますが、僕の肌感覚では6万円台の価値がある1足だと感じました。
特にブーツは、一度ハイエンドモデルの使い心地を知ってしまうと、グレードを下げることはなかなか難しいものです。昨今の値上がりを機に道具選びを見直さなければ!というユーザーも多い中、スタイルとクオリティを崩すことなく価格を抑えたブーツを完成させたVANS。シューズブランドとしてのプライドを感じます。
ブーツが馴染んでからのキープ力に期待
スノーボードブーツは消耗品ではあるものの、INFUSE SNOW SURFは育てていくタイプのブーツだと思います。
FLEX CONTROL SYSTEMを活用すれば、30回×3シーズンはしっかり使えそうです。
レザー部分は撥水加工されていますが、オフシーズンはブーツレースを外し、レザー部分(タンとサイドパネル)のケアも行うと、レザーならではの風合いも出てくるでしょう。
セットアップのアイディア
足幅が広い僕は、VANSをハーフサイズアップで履いています。VANSのレースとボアのハイブリットは横幅が広く保てるので、足幅が広い人にもおすすめです。
INFUSE SNOW SURFには、ローバックにしたNOWや、ハイバックを取りFREED BACKをセットしたBURTON GENESISを、NEVER SUMMER NOKHUやFJELL MT1180| Hokkaidoに合わせたいと考えています。
フレックス・コントロール・バーによる踏み心地の変化も楽しみです。
モロのつぶやき
このブーツは、VANS SNOWBOARDINGのプロジェクト会議の時点で“HOKKAIDO BEAST”との仮名が付けられていたのだとか。
結果的にはINFUSE SNOW SURFという名でリリースされましたが、北海道の雪を意識しまくったフリーライディングブーツであることに違いはありません。
僕は当初、SNOW SURFという言葉の先入観から「VANSが大胆に仕掛けてきたぞ!」という見方をしていました。ただ、実物に触れるとやはりVANS。OFF THE WALLなSNOW SURFなのだと分かってきました。
WEIRD WAVESでお馴染みのDYLAN GRAVESの様に、ジャンクにVANSのSNOW SURFを楽しみたい!
という訳で、VANS INFUSE SNOW SURFは24-25シーズンのMOJANEトピックモデルとなりました。
MOJANEではカルチャー好きな40代オーバーからの支持が高いVANSですが、若者層にもおすすめしたいフリーライディングブーツです。