高速域を制するハイスペックボード
プロレベルのエッジコントロールで知られるCUSTOM X(カスタムエックス)は、MOJANEが信頼を置くボードの代表です。
バートンの代名詞CUSTOM(カスタム)を最強のマテリアルでドレスアップしたこのモデルは、パイプ、スロープ、フリーライディング、バックカントリーに至るまで、フリースタイル スノーボーディングの全てを網羅します。
インラインで登場してから、なんと17シーズン目。毎年乗り味を更新し、変化を続けてきたCUSTOM Xですが、その存在感は依然衰えず、コンセプトがブレることもありません。
スノーボードシーンの今、BURTONの今を知るには、うってつけのモデルと言えるでしょう。20-21モデルの試乗では、長年のXファンが絶賛するレビューが集まり、MOJANEはいつにも増して盛り上がっています。
CUSTOM Xの基本情報
CUSTOM Xには、キャンバーとFLYING V(フライングブイ)の2タイプがあります。FLYING VはダブルキャンバーのBURTON独自の名称です。キャンバーは中・上級者向け、FVは初級から上級者までをカバーするファンな要素が特徴です。
CUSTOM X -CAMBER-
直進安定性と力強いエッジホールドが特徴。ぐんぐん加速してもボードは一切バタつかないチョッカリ番長です。ゲレンデのコンディションがアイシーであればあるほど、その持ち味を発揮します。基本的に下へ下へと落としていくタイプのボードですが、スピードを維持したままのターンも得意で、弧を描く時にかかる重力が体に心地よく伝わります。
多くのボードは「高速ターンに強い」=「低速ターンに弱い」という法則がありますが、CUSTOM X CAMBERは低速時のターンがし易いです。低速での操作性が高いという事は、正しい姿勢を学ぶ上で大切なポイントです。そういった意味では、チャレンジングな初・中級者にとって意義のあるボードになると思います。
CUSTOM X -FLYING V-
BURTONが作るダブルキャンバーが最も活きるモデルが、CUSTOM X FLYING Vではないでしょうか。CAMBER版のCUSTOM Xが持つ攻撃的なライドフィールはそのままに、パウダー、バタートリック、スイッチといったオールマイティー要素が加わります。その回転性や強いエッジバイトによって、誰もが遊び心ある乗り心地を感じることができます。
スノーボードにブランクがある方、CAMBERに不安がある方、どんなフィールドでも自由に楽しみたい方にハマります。また、FLYING Vが登場する以前、CUSTOM Xに強い憧れを抱いていた世代のスノーボーダーからは、「こんなボードを待っていた!」という声も多く上がっています。
バートンの最強コア、ドラゴンフライ
スノーボードが持つ反発力や強度、その決め手となるのがコア材です。
CUSTOM Xに使われているドラゴンフライコアは、数種類の木を縦横に細かく組み合わせることでパワーを逃さずエッジへ伝えるというもの。この綿密な配列はBURTONにしか出来ない技術の一つ。ドラゴンフライコアについては、2018-2019モデルの記事で詳しく解説しています。
BURTONのソールの凹凸について
張り巡らされたコアにより、BURTONのソールには凸凹がありますが、滑走には全く影響はありません。ただ、ホットワクシングでアイロンを当てたり、スクレーパーで削る際、その凹凸にストレスを感じる人もいると思います。
対処法はズバリ、ペーストやリキッドタイプのワックスです。
もっと上手くなりたい人に激プッシュ
CUSTOM Xの魅力は「スノーボードしてるぜ」感。急斜面をかっ飛ばすスリリングなスノーボードの世界を広げてくれることだと思います。
基本的には、中級層のスノーボーダーが、更なるレベルアップに立ち向かう為のボードと捉えてください。
ボードのフレックスは高速域に入って初めて感じられ、少しの荷重でも体が吹っ飛ばされてしまう程にレスポンシブル。つまり、乗り手にスピードとパワーが無ければ、ボードに備わっている性能を最大限に引き出し、開花させることは出来ません。
なぜ、これほどハードなボードに乗る必要があるのか。それは、今よりも上手くなるためです。
スーパーカーを乗りこなせ
CUSTOM Xは、BURTONの中で最もハイスペックなボードです。
スノーボードビギナーがキャンバーのXに乗るとなれば、運転免許を取得したばかりのドライバーがスポーツカーに乗る様なもの。
少しでもハンドルを切れば一気に曲がり、アクセルを軽く踏むと一瞬で法定速度を超えてしまいます。また、無理にコントロールしようとすると力負けしてしまいます。
CUSTOM Xを乗りこなすヒントは、ボードが行きたがる方向に乗ってあげること。
それは、重心、姿勢、体重移動など、今まで出来ていると思っていた動作の一つ一つを見直すことになるかも知れません。その試行錯誤こそが、スノーボードの上達へと繋がっていきます。
身体の感覚が掴めてくると「こういう事か!」と頭で分かる瞬間も次々と生まれ、自信がついてくるはずです。その過程には、滑り倒すだけでなく、レベルに応じたセットアップやエッジチューニング、時にはレッスンが必要な場合もあります。
初~中級者が乗るためには
「CUSTOM Xはエキスパートレベルの乗り物で、一般ユーザーには過剰なスペックだ。」そんな意見も多くあります。
確かに、その通り。ですが全てのBURTONのボードには「より簡単に」という基本テーマがあることも事実です。MOJANEでは、この過剰なスペックこそ、チューニング次第で多くの人が楽しめるボードに変化させられる「余白」だと考えています。
MOJANEでは、ユーザーと共にCUSTOM Xのセッティングやチューンナップの実験を繰り返し、中級~コンペティターまで、様々なレベル層のレビューを集めてきました。
初~中級者の中には、CUSTOM Xに憧れを抱き、乗りこなせるか分からなくとも挑戦したいと思っている方も多く居ます。僕もその一人でした。CUSTOM Xが少し背伸びをしたボード選びだとしても、自分のレベルに引き寄せるチューニングとセッティングを行えば、心配は要りません。
また、レベルアップに合わせて調整を繰り返すことで、CUSTOM Xが持つ奥深さをどんどん発見することが出来ます。
自分に適したギアを知る
CUSTOM Xでは、ブーツやビンディングとの相性も肝心です。それは、「この板にはこのバインとブーツを合わせよう!」というような定説ではなく、今の自分に必要な道具は何か、という意味です。
誰もが簡単に乗れてしまうボードでは、セットアップやマッチングを考えずに過ごせてしまいますが、CUSTOM Xでは、難しいというジレンマの中から、自分に足りない要素を知り、それを補う道具選びを意識するようになります。自分のレベルを受け入れて、考える力を引き出してくれるボードなのです。
ローカルヒーロー流のサイズ選び
スノーボード/サーフィンのインストラクターとして活躍する田中岳宏さんが、スノーボードテクニカルの分野にフリースタイルボードを持ち込んだのは8年も前の事。現在もCUSTOM Xで競技に挑み続けています。
特にここ2シーズンは、自身の経験を生かし、BURTONの推奨サイズとは全く違う視点でサイズ選びを行っています。ポイントは有効エッジの長さとウェスト幅。また、競技によってもサイズを変えているようです。
最近は有効エッジが長い166Wをメインで使っています。BURTONのボードは、長さに比例して硬くなる事が無いと分かってきたので、斜度やターンの種類・難易度によってボードをチョイスしています。ボードを長くすることで有効エッジも同時に長くなり、攻めたフォームをとる練習ができると思います。
1本の板に向き合う面白さ
乗り易さ・心地良さを追求する他のニューボードと比較すると、CUSTOM Xを理解するには時間がかかります。
試乗会や友達同士の貸し借りで他の板に乗ると「ボード選びを間違てしまったかも…」 と感じる事があるかもしれません。
もちろんラクなボードに乗り替えるのも1つの楽しみ方ですが、難しいと思っても、諦めないで!と僕は言いたいのです。お気に入りのデニムを履き込むのと同様に、乗り込んで乗り込んで、乗り込む事により、自分だけのボードに仕上がっていくのがCUSTOM X。
ねじれの使い方や、踏み込みのクセがボードに染み込み、だんだんとイメージ通りに動いてくれる様になります。
乗りすぎるとヘタるのでは?という心配はご無用です。年間滑走が30回だとしたら、5~6シーズンは確実に遊べます。もし、過去にCUSTOM Xを諦め、手放した経験がある方がいたら、いつかもう一度、最新版のXに乗ってみて欲しいと思っています。
CUSTOM X 試乗レビュー
長年、CUSTOM Xに注目してきたMOJANEですが、来季は特別なモデルになる予感がしています。このワクワクをお伝えするには、毎シーズンの変化を見届け続けてきたレビュアーの言葉が一番です。特に、CUSTOM X歴15年の平山くんのレビューに注目してください。
過去最高のX【CAMBER】
ここ2シーズンの良い部分を融合したドリームボードに仕上がっていました。
2019-2020モデルの様な高速安定性・伸び・キレを残しながらも、ピュアポップキャンバーか⁉と錯覚してしまうような軽快な板の動きがあります。
最初に156を試乗しましたが、フレックス・トーション共に張りが強く、なおかつ動くボードだったので、扱いが難しく「脚力のあるエキスパートやコンペティター向きのボードかな…」と思いました。しかし、次に乗った154では、サイズ差以上にフレックストーションの違いが感じ取れ、しなりやねじれを使ったグラトリや、地形での遊びも思い切りできました。僕にとっては完璧なバランスのボードです。
パウダーでの浮力は2019-2020モデルと比べると落ちたように感じますが、ターン、ビッグジャンプ、高速域での遊び、これらにおいて高次元のバランスで計算された、最高傑作と言えるXです。
カービングをメインに使用し、ジャンプ、グラトリなどの要素をこのボードに求めない人ならいつも通りのサイズを選びで問題ないと思いますが、地形遊びなどを含めたオールラウンドボードとして使用したいなら、ワンサイズ落とすことをお勧めします。
もし、サイズダウンに抵抗がある方は、自分の脚力に合う硬さになるまで、使い込むことを想定しておいた方が良いかも知れません。
相性の良いと思うビンディングは、X EST, FALCOREです。
平山くんのCUSTOM X採点
インパクト:10 フレックス:10(156)8(154) カービング:10 グラトリ:7 バンク:7 テクニカル:9 トーション:(156)9, (154) 7 ジャンプ:9 スイッチ:8 パウダー:3
THIS IS 北海道オールラウンドボード【FV】
試乗は午後。この日は下地が硬めのピステンに降雪中で、面で滑るとパウダー、エッジを入れれば雪面に当たる、というコンディションでした。
ターン時にはしっかりと噛み、アイシーでなければいつも通りのカービングが出来そうな感じです。
浮力は「ストレートシューター」や「パウレンチ」といったパウダーボードには敵いませんが、浮き感が良く、他のボードにはない”スイッチでの浮力”が、個人的にポイントアップ!
FVの特性で取り回しも良く、グラトリも軽やかに繰り出せますし、地形をなめるように遊ぶのも楽しかったです。
キャンバーのXは、あくまでも高速域でこそ性能を発揮するボードなのに対し、X FVはフレックストーションもキャンバーに比べて抑えめなので、低速域でも楽しめ、より広いレベル、シチュエーションにも対応できるボードだと思います。
また、雪質やシチュエーションに左右されずらく、幅広い環境で使えるボードです。バラエティ豊かな北海道のビッグマウンテンに、本州からトリップで訪れる際にチョイスするボードとしても満喫できると思います。
それから、これは好みの問題もありますが、2019-2020のX FVは、FVのファンな要素が強すぎて、ターン時のエッジバイトの足りなさを感じたのですが、2020-2021モデルではそのバランスが改良されていて、完成の域に達したのではないか!?と感じました。
ルスツや富良野などのようなビッグマウンテンで、しっかりターンもしたいしパウダーでも攻めたい、パークがあればそのまま流して飛びたい、地形もグランドも全て楽しみたいというなら、このボードで決まりです!個人的にはキャンバーと並んで来季の激プッシュモデルです!。
あえて気がかりな点を挙げるなら、試乗ボードが156しかなかった事。154での可能性も是非、試してみたかったです。
類似モデルとしては、過去CUSTOM X FV,LIB TECH C2、ビンディングはMALAVITAやCARTELを合わせたいです。
平山くんのCUSTOM X FV採点
インパクト:10 フレックス:5 カービング:8 グラトリ:8 バンク:8 テクニカル:4 トーション:6 ジャンプ:6 スイッチ:7 パウダー:7
1982年生/174㎝/65㎏/レギュラースタンス 試乗ボード:CUSTOM X 156.154/CUSTOM X FV 156 試乗コース:余市1B,センターA 使用バイン:FALCORE このモデルをひと言で表すなら:CAMBER「動く・キレる・ノビる・安定する」FV「ハイエンドファンボード」
軽快な動きへアップデート
前作のCUSTOM Xに比べて、ピステンバーンでの軽快な動きが加わりました。とは言え、やはりフレックス・トーションはかなり硬めの印象です。
カービングは相変わらず切れが良く、高速安定性も抜群。硬くても軽快なターンが出来ることが不思議でした。ターン自体に重さを感じず、気持ちの良いターンが出来ます。
ただ、フリーライディングの合間にオーリーや180などを組み込む様なライディングには不向きだと感じました。小さな小技を入れずに高速で大きく飛ぶ人にハマると思います。
パウダーライディングでもピステン同様の気持ち良さを期待していましたが、パウダーでは硬さが際立ち、一転して扱いずらくなりました。パウダーの底へと沈み込んでしまう感覚です。また、硬さのせいか、もっさりとした鈍いターンとなり、なんとも面白味のないボードになってしまいました。
なので、カービングやエアに専念できるボードといえるのではないでしょうか。
ハイシーズン中、1日のルーティンにパウダーライディングを組み込んでいる僕としては、パウダーの要素を重視しがちですが、純粋にカービングを楽しみたい、でかいキッカーを攻略したい!と思った時に、安心して攻めれるボードを求めるなら迷わずCUSTOM Xを選びます。
点数評価では、軽快な動きが加わったことで、先シーズンのモデルと比べて点数を高く付けました。ですが、時と場合でゆるく滑りたい僕は、現状もう少しライトなボードをチョイスします。相変わらずXは本気の人向けだな、と感じました。
竹田くんのCUSTOM X 評価
インパクト:8 フレックス:9 カービング:10 グラトリ:5 バンク:7 テクニカル:10 トーション:9 ジャンプ:8 スイッチ:9 パウダー:3
1986年生/181cm/58kg/レギュラースタンス
試乗ボード:CUSTOM X 156 CAMBER
使用バイン:X 12,-9
試乗ゲレンデ:余市