あらゆるトリックに繋がる基本アクション180
180(ワンエイティ)は、滑走中にジャンプをしながら板を180°回転させるサイドウェイスポーツのトリックです。
スノーボードでの180は、足がボードに固定されている分難易度が低く、誰もがトライできる基礎アクション。ですが、実はこの半回転がとても奥深い…。少なくとも、僕はそう思っています。
「180なんてチョロいよ!」と自信がある方も、「カッコ良くできている?」と聞かれると、いささか不安になるのでは?
何を隠そう僕自身、写真に映る自分の姿に違和感を抱き、練習を始めた一人です。
スノーボーダーのスタイルを思いきり表現できる、回転系トリックの最初の一歩。 ここらでひとつ、クールな大人の180を完成させてみませんか?
回転技でスタイルを出してきたレジェンドたち
180の元祖は、スケートボードだったのではないかと思います。
スティーブ・キャバレロのシグネイチャートリック、Half Cab(スイッチ・オープン180°)は、1992年にリリースされたVANSのシューズモデルとしても有名です。
スノーボードでも、スケートボードからの影響を受けてバックサイド180で個性を表現するライダーが多く存在しました。
ブライアン・イグチ、ジョン・カーディエル、ブライアン・シーン、ニコラス・ドロス…。スケートスタイルが評価されたスノーボーダーたちです。
90年代後半の花形トリックは紛れもなく900でしょう。ファビアン・ローラーが魅せたToyota Big Airでのビッグスピン、トニー・ホークのX-GAMEでの900、そしてG-SHOCK テリエの900…語りだせばキリがありません。
そして2023年、南半球の冬を舞台に長谷川帝牙君が完璧なフロントサイド1800を決め、コンペティションシーンはかつての2倍の回転数が勝負となる新時代へ突入しました。
目指すは、無駄なく軽やかな大人の180!
一方、この記事で取り組むのは、最前線のコンペティターの回転数1800から一桁引いた180。
360、720、1440…どれだけ回転数が増えても、最後の180°はトリックの決め手になるハイライト!大技のラスト180°を切り取るイメージで練習するのがポイントです。
180を分解すると、「オーリー」と「半回転」です。これらを繋ぐ一連の動きを見直していきましょう。
気を付けたいのは、癖のない動作。個々のスタイルは後から滲み出るものとして、無駄のない動きを目指します。
180に適したボードとスタンス
キックのないボード(スワローテール等のスイッチに不向きなボード)以外なら、どんなタイプのボードでもできます。 あえて適性を挙げるなら、ソフトフレックスで弾きの良いもの。パウダーボードで180を繰り出すのもカッコイイですね。
MOJANEが提案する大人の為のツインチップも是非チェックしてください。
180の為にスタンスを変える必要はありませんが、ダッグスタンスの方がスイッチエントリーやスイッチ着地がしやすいと思います。 また、スタンス幅は広すぎるよりもやや狭い方がボードを回転させるのがラクになります。
スイッチライディングに慣れる
180にチャレンジするには、普段とは逆の足を前にして滑る「スイッチライディング」をある程度習得する必要があります。
180の着地はスイッチになり、スイッチ180はスイッチスタンスからのアプローチとなるからです。
スイッチでも自然な滑走とターンができることが180のファーストステップ。慣れたコースでもスイッチ縛りで滑るだけで課題が見つかるので、たまに試してみるのもおすすめです。
スライドターンに立ち返る
次に僕が行った練習は「あらゆる場所でスライドターンをする」でした。
スライドターンはボードを半回転させて進行方向を変えるターンのことで、スノーボードビギナーが必ず通るドリフトターンです。
ボードコントロールに慣れると、ほとんどやらなくなってしまうスキルですが、これが180の動きに役立つことに気付きました。
低速・高速問わず、あえてボードを90°まで回してスライドターンを繰り返します。 もちろん、スイッチでも同様の動作を。スイッチからメインスタンスに戻る練習もしてみましょう。
ポイント
スライドターンでは、軸となる前足(谷側)にしっかりと荷重をかけ、そのまま180へ向かう意識で行います。バックサイドは後ろ足が自分の視界に入るぐらい捻ってスライドさせてみてください。慣れてきたら斜度を上げていきましょう。
スイッチでのスライドターンは、回転の軸をボードの真ん中(股の真下)に。フロントサイドとバックサイドではローテーションの感覚が全く異なります。フロントでは前を見て、頭が自分のつま先よりも前に出ないように。バックサイドでは顎を引き、90°以上ボードが回転しそうになったら、つま先でグッと抑えましょう。
ターンからスピンへ
回転技を得意とする選手に聞くと、「スピンはターンの延長にある」と言います。サイドカーブを使ってスピンをかけるからです。
例えばフロントサイドターンでは、つま先側に荷重を乗せて曲がります。その曲がった勢いでボードをスライドさせると、クルッとボードが回ります。
バックサイドターンでも同様に。ターンの終わりに力を抜き、クルッとスイッチスタンスへ切り返してみましょう。
ここでスライドターンがリンクしてきます。トゥ、ヒールサイドターン時にボードが曲がり出し、一息つけるタイミングでスライド180!
ポイント
フロントサイド180°では体を開き、右肩を前へ、左肩を後ろへ引くイメージで回転させてみましょう。バックサイド180°では右肩を後ろへ引き、左肩を下げず、頭も下にしすぎない、覗き見しすぎないのがコツです。
オーリーの感覚を掴む
180のきっかけとなる、オーリーの動作を再確認。
無理にテールで蹴り上がったり、高さを出す必要はありません。飛び出しから着地まで一連の動きがスムーズに連動していればOK。高さよりも無駄のないフォーム、正しい位置で弾くことが重要です。
ボードのテールをプレスして、戻ろうとするポイントを探します。スピードと地形を使いながら、そのポイントで弾きます。体の軸は弾く足の真上に乗せます。つま先にも踵側にも傾かない様に、ボードの“面で”弾くのがポイントです。
弾いた時の反発を利用して、上半身は持ち上げるように、足は高く引き上げます。この時、腕で自然にバランスを取りますが、バタつかせないようリラックス。
着地は基本的に両足、場合によって後ろ足着地も使い分けましょう。アンコントロールな前足からの着地はNG。身体の動きがバラついている証拠です。
ポイント
目線は着地するポイントよりも5mくらい先を見るイメージです。スピードがつけば、もっと遠く先を見るように意識しましょう。
慣れてきたら、ライディングの流れの中でトライ。滑走中に仕掛けると軸が不安定になったり、ちょっとした地形で一気に高さが出たりすることもあります。色々な場面で繰り返すと、タイミングや高さ・距離感が掴めてくるはずです。
飛んで、回しての反復練習
オーリー、回転、着地。一連の動きをとことん繰り返します。
最初は小さなギャップやウェーブからスタートして、斜度やスピードを徐々に上げていきましょう。
小さなゲレンデでも、仕掛けられそうなポイントがたくさんあるはずです。
更に、ノーズで弾くノーリーを習得すれば、スイッチ180へと繋がります。
ノーリーは前に踏み込む動作になるので、少し怖いかもしれません。利き足とは逆の足の筋力と、ノーズのフレックスバランスを意識しながら、少しづつトライしましょう。
おすすめ練習スポット
180°の練習は、ウェーブを利用すると楽しく続けられます。次々と連続で仕掛けられるので、飛び出しの感覚や高さの出し方など、色々試せます。また、仲間と動画を撮り合ってフォームチェックをするのも効果的です。
札幌近郊なら萩の山スキー場をチェックしてみてください。全体にフラットなエリアが多く、緩やかで広いウェーブがあるので180の練習に最適です。
180で「スタイル」を出すには?
一連の動作を体で覚えたら、自分らしさをプラスしていきましょう。
目線、腕の使い方、空中での足さばき、足の抱え方、グラブ…大きく飛べば飛ぶほどモーションが止まった様に見えてクールです。
例えば、PULSE 2002のTADASHI FUSEによるSwitch back side 180(3:33秒)。
とても大きなジャンプですが、飛んでいる間、動きが止まったかのように体をロックしています。また、着地での目線は、下を向く”ブラインド着地”ではなく、進行方向に向けられています。まるでストレートで飛んだかのような着地。シンプルに見えて、高い技術とセンスが垣間見られる1カットです。
もう1つ、DEVUN WALSH が”RESISTANCE”で魅せたクリフからのスイッチB180°(7:22秒)は見ているだけでゾクっとしてしまいます。
モロのつぶやき
スケーターがストリートでオーリーをする姿は、サイドウェイスポーツの中でも最も絵になる瞬間だと思っています。
スケートボードが不得手な僕でも、スノーボードならそれなりにチャレンジできる。これがスノーボードの醍醐味です。
スケートボードやサーフィンのモーションにもヒントがたくさんあります。 ムービーで見た印象的なシーンや、憧れのライダーの動作を真似る”なりきり練習”から、新たなスタイルが生まれるかもしれません。