HERTEL生産終了のお知らせ
HERTELの廃業に伴い、残念ながら在庫限りでお取り扱い終了となります。
トップアスリートを支えた老舗ワックスメーカーの廃業に、驚きと、残念な気持ちです。
いつか、この功績の引き継ぎ手が現れ、再スタートしてくれる日が来ることを心待ちにしています。
ありがとうございました。
セオリーを覆す新感覚ワックス
スノーボードワクシングで目指すのは、失速しがちな緩斜面でも板がスーっと走りだすような状態。ですが、刻々と変化する天候や、地域差のある雪質を予測して、常に「走る」状態を作り出すのは至難の業。誰もが多くの時間と労力を費やしてきました。
そんな面倒な作業(チューンナップに興味がなければ…)を極限まで簡単化しつつ、一定の効果と持続力を両立させているのが、カリフォルニア生まれのハーテルワックス(HERTEL WAX)です。ハーテルワックスを使えば、知識や技術が無くても、短時間でハイレベルなワクシングが完了します。
【追記】最も効果を実感できるのは、春。
この記事の後半では、ハイシーズンにハーテルワックスとドミネーターを比較した結果をご紹介していますが、ハーテルワックスの強みは春雪だという事を加筆しておきます。
春特有の湿雪やシャバシャバなコンディションは、ワックスの効果が失われやすく、常にワックスを携帯するなどの対策が必須でした。
特に湿雪は「ストップ雪」とも呼ばれ、ボードをグっと食い止めるように失速させるので、転倒を招きがち。危険であることはもちろんですが、気持ち良く滑れないストレスを抱える人も多いと思います。
ストップ雪では、こまめにワックスを追加しながら滑るというのが当たり前でしたが、ホットワクシングでハーテルワックスを仕込んだところ、ノンストップで半日滑った後もワックスが切れることなく、ソールを見てもまだまだいける!春雪での持続力に驚きました。
また、「春雪には高フッ素ワックス」が定説ですが、環境への影響が懸念されているのも事実。ノンフッ素のハーテルワックスなら、成分も効果も申し分ありません。
真逆の視点からの発明品
ハーテルワックスは、水分を弾く一般的なワックスとは全く違うアプローチで開発されました。創業者のテリー・ハーテル氏は、失速の原因となる水の抵抗や摩擦を極力起こさないワックスを目指し、界面活性剤に着目。ワックスの主原料パラフィンに界面活性剤を配合する研究を重ねた結果、1973年にシグネイチャーとなる”SUPER HOT SAUCE(スーパーホットソース)”が誕生しました。
ベースワックス不要!
ハーテルワックスは、スノーボードのソールに使われているシンタードベース(P-TEX素材)への浸透性が高い為、1度のワクシングで、ベースとトップ両方の役割を果たしてしまいます(ベースワックスが入っていても使用できます)。
これは、ペーストやリキッドタイプのワックスの更に上を行く手軽さです。
キッズボードにもおすすめ
従来のワックスで効果が出にくかったエクストルーテッドソールにも、一定の効果があるように思います。シンタードが使われていないことが多いキッズボードは、子供の体重の軽さも相まって、ボードが走っていない場面をよく見かけます。ハーテルワックスなら使用方法も簡単なので、キッズにもセルフワクシングに挑戦して欲しいです。
全雪温度対応
これまでにも多くのワックスブランドがオールコンディションワックスをリリースしてきましたが、ハーテルワックスで注目したいのは対応温度の幅です。SUPER HOT SAUCEは-14℃から11℃まで=厳冬期から春のシャバシャバ雪までを網羅してしまいます。
環境に優しいワックス作り
近年、ワックスに含まれる化学成分が環境に悪影響を及ぼすとして問題視されています。国際スキー連盟(FIS)では公式大会でフッ素を配合したワックスの使用を禁止する方針が決まり、それに準じて各ワックスメーカーはノンフッ素や生分解性を高める開発に注力しています。そんな中、ハーテルワックスはいち早く生分解性100%を実現したメーカーの一つ。パッケージにはリサイクル紙を採用するなど、環境への配慮が伺えます。また、伸びが良く使用量が少ないのも経済的です。
ハーテルワックスの使用法
使用方法は二通り。しっかり浸透させるならホットワクシング+スクレーピング+ブラシorコルク、こまめに塗るなら、生塗+コルクが基本です。生塗りなら、ワックスの削りカスも出ないので室内でも野外でも、気軽に作業が出来ます。
最も手軽な方法は生塗り
ハーテルワックスは、生塗りでも高いレベルで滑走性を発揮します。他のワックスの上から重ねて使用する事も出来るので、携帯しておくと安心です。ソールにワックスを塗ったら、コルクですり込む様に馴染ませます。これだけれでハイスペックなワクシングの完成です。ホットワクシングに比べると効果の持続性は短くなりますが、1-2日の滑走なら生塗りで十分です。滑走前の習慣に出来るくらい手軽です。
生塗りのPOINT
ワックスはノーズ⇔テールの方向に塗ります。ワックスの”面”を上手に使って、同じ力加減で行うことがコツです。
なんとなく擦り付けたり、力を入れすぎてしまうと、塗りムラができて均一に塗ることができません。全体に薄く、ムラなくワックスを塗るように意識しましょう。
塗りの作業を丁寧に行うと、ワックスの効果が引き出せるのと、仕上がりも綺麗です。
ホットワクシングはすぐに剥がす
通常のホットワクシングでは、ワックスの成分を浸透させる時間が必要でした。ワックスを塗り終えたら最低でも2~3時間、物によっては1日じっくり寝かせる事もあります。ところが、ハーテルワックスは時間を置かず、ワックスが温かいうちにスクレーピングします。
ワックスは伸びが良いのでごく薄く伸ばしましょう。融点は90度、アイロンの熱でソールを傷める心配がありません。ソールの小さな傷が気になる時は、保護の為にもホットワクシングを行うと良いでしょう。
気温に合わせた仕上げ方で効果UP
気温の低い日は、コルクを使ってつるんとしたソールに仕上げ、気温が高い日は水が流れる溝(ストラクチャー)を作るようなイメージでブラシを掛けて仕上げます。
暖かく湿度がある日はSUPER HOTSAUCEのブラシ仕上げ、冷え込み乾燥した雪の日ならRACING 739のコルク仕上げ。また、RACING 739のホットワクシング後に、SUPER HOTSAUCEを生塗り→コルクで仕上げると、変わりやすい天候にも対応します。
シンプルなラインナップ
ハーテルワックスのラインナップはビギナーにも分かりやすく、最低限の道具でワクシングが始められます。また、お試しサイズのミニパッケージ(日本限定)は、携帯用としても便利です。
HERTEL WAXの基本となるワックスです。雪温度帯-14~11℃に対応。ホットワクシングは塗ってすぐに剥がし、コルクで擦り込む様に伸ばします。更に、生塗り+コルクで伸ばせば効果的です。
そ名の通り、競技者に向けて開発されたものです。SUPER HOT SAUCEと基本成分は変わりませんが、持続力が強化されています(最長7日間)。ハーテルワックス愛用者は、RACING739をベースワックスとして使い、SUPER HOT SAUCEを滑走ワックスとして生塗りするそうです。
カリフォルニアはシーズンが長いことでも知られています。春のザラメ雪や汚れた雪による失速は万国共通の悩みです。ストップ雪のコンディションにもハーテルワックスの界面活性剤が効力を発揮。春はブラシでストラクチャー仕上げが正解です。
色素沈着の心配なし
ハーテルワックスは全て白色なので、ソールに色が沈着する事がありません。例えばLIBTECHの様に、ホットワクシングで色が滲みやすいソールや、白いソールなど、ボードのデザインを損なうことなく乗り続けられます。
90年代のトップ選手を支えたワックスブランド
ハーテルワックスの歴史をたどると、SUPER HOT SAUCEは1973年、RACING 739とSPRING SOLUTIONは1986年に発表され、伝説のスノーボーダー、クレイグ・ケリー、ジェフ・ブラッシーもハーテルワックスの愛用者でした。
オリンピックやワールドカップといった90年代のコンペシーンで、ハーテルワックスのWHITE GOLD(廃版)は、ワックスマンが必ず携帯する秘密兵器だったとか。それほどのワックスがなぜ今まで日本で出回らなかったのか?実は、メダリストを支える秘密のワックスだったのかもしれません。
HERTEL VS DOMINATOR ワックス対決
長年ワクシングで試行錯誤を繰り返してきた僕は、ハーテルワックスの存在を知った当初「そんな都合のいいものってある?」と疑心を抱いていました。そこで、普段愛用しているワックスと比較することにしました。
「ONE WAX ALL CONDITION」を謳うハーテルワックスと、僕が信頼を置くワックスブランド、ドミネーターの一騎打ちです。
時短を取るか、完璧な走りを取るか
ハイシーズンにコンディションやボードを変えて、テストを繰り返した結果、理想的な滑走性としてはドミネーターに軍配。ただ、15分で作業を終えたハーテルワックスの走りは想像以上でした。体感では、ハーテルワックスの走りは、どんなコンディションでもストレスを感じないレベルで走る、といったところ。ドミネーターは伸びやかさや、心地良いニュアンスが感じられ、やはり作り込むことで出せる快感がある、と改めて実感しました。
とはいえ、ワックスにかかる手間や時間を考慮すると、ハーテルワックスの効果は十二分であることは確かです。どちらが優れているか、というよりは、人それぞれの目的次第、という結論です。
結果
- HERTEL WAX
- DOMINATOR WAX
1本でも多く滑りたい、準備に時間はかけたくない、コンディションで行先を選ばない人。
最高の1本を滑りたい、準備や手入れも楽しみたい、行先はコンディションを狙う人。
作り込まない、という発想
これまでのワクシングは、ベースからトップまで何層にもワックスを重ねて、作り込むことが理想とされてきました。確かに、ワクシングは回数を重ねるほど、その後のワックスの持続力も良くなり、ソールも傷みにくくなります。ただ、ワックスがバッチリ合った心地良さを一度でも体験すると、走らないことに対してどんどん神経質になり、益々作業時間やツールが増えていくものです。
ハーテルワックスは、そもそもワックスを塗り重ねてソールを育てるような考えではなさそうです。そのため、ワクシングの回数と効果は比例しないだろうと予測しています。
手間のかからないハーテルワックスと、時間をかけて作り上げる乗り心地。どちらを選ぶかは人それぞれです。僕はワクシングの作業そのものに面白さを感じていますが、時間に余裕のないときや複数の板を一気に仕上げたい時など、ケースバイケースでハーテルワックスを活用したいと思っています。
全国各地、様々なコンディションで滑る人、頻繁にワクシングをしなければならない選手、自宅でワクシングが困難な人、なるべく簡単に済ませながら安定した滑走性を得ようと考えるなら、ハーテルワックスは最高のアイテムになるはずです。