REVIEWバートンビンディング2021-2022XEST

X EST|超多機能なEST専用ハイスペックビンディング

BURTON 20-21,21-22継続モデル

BURTONの最先端を凝縮したESTビンディング

1996年から続くBURTONのハイエンドライン「Xシリーズ」。ボード、ブーツ、そしてビンディングにも「X」を冠するモデルが用意されています。

その二本柱だったビンディングが、X BASEとGENESIS Xでした。高い支持を集めていた2モデルですが、どちらも19-20シーズンを以て廃版となります。そして、翌20-21シーズンにこれら2モデルをかけ合わせたX ESTが登場しました。

19-20 BURTON X BASE
19-20 BURTON X BASE
19-20 BURTON GENESIS  X
19-20BURTON GENESIS X

X BASEとGENESIS Xは、それぞれ両極の性質です。両モデルを知る人には「そんな単純な発想でいいの?」と思われそうな組み合わせですが、このフュージョンは大成功だったと思います。

パワー、快適さ、ボードとの一体感を追求するバートンユーザーに向けて、提案したいビンディングの一つです。

21-22シーズンはキャリーオーバーとなっていますので、20-21モデルからの変更はありません。

変幻自在なマルチプレーヤー

burton XEST 21-22
BURTON XEST¥62.000+TAX

Xシリーズの得意分野は、ハードバーンを高速域でかっ飛ばせるレスポンス性能ですが、X ESTの守備範囲は急斜面やハードバーンに留まりません。

ある時はマラビータの様に足首周りに余裕が生まれ、またある時はGENESISの様なフィット感と安定性が。そして、CARTEL Xを超える攻撃的な一面を垣間見ることもできます。これまでBURTONが生み出してきた全てのビンディングの要素を内包しているかのようです。

こうした様々なテイストへと変容させる為に、X ESTは各パーツの角度を細かく調節できるように設計されています。これほど多機能であるにも関わらず、どの角度からも高い精度を維持しているあたりは、さすがBURTONです。

BURTONボードの為のビンディング

2018年、BURTON独自のセッティングシステムTHE CANNELと、THE CANNEL専用のビンディングEST(イーエスティ)が発表されました。

X EST以前は、1つのモデルでESTとREFLEX(チャネルとインサートホールで使用可能)両形式でリリースされてきましたが、X ESTは初めてESTタイプのみの展開です。

「これ程のモデルがESTだけ?」と、疑問に思う方もいるかもしれませんが、構造上ESTでなければ成り立たちません。BURTONボードの為だけに創り出されたビンディング、つまり、BURTONが提案する最強のセットアップを体験できるという事です。

ESTビンディングの特徴

ESTは、チャネルを搭載したBURTONボードのフレックスを引き出し、ボードとの一体化を目指したビンディングです。

フッドベッドの下にベースプレートが無く、直接ボードの上に足を置いているようなイメージです。

足裏から雪面の状況が伝わってくるので、足の細部までを使ったボードコントロールが可能になります。

ビンディングの左右をベースプレートで止めるので、ボードへのトラクションがかかりやすく、トーションも効きやすくなります。

また、スケートボードのように、自由なセッティングを好むライダーにも好相性です。

X ESTの3つの特別仕様

①リーンアウトするハイバック


burton X ESTハイバック

ビンディングのハイバックには、ヒールサイドやトゥサイドターンのレスポンスの向上を図る為にハイバックに傾斜を付けるフォワード・リーンという機能があります。

通常はハイバックがつま先側に倒れますが、X ESTはリーンアウトするように後ろ側にもハイバックが倒れます。

これにより、前足をしっかりと伸ばしたいターン、大きなフロントサイドの壁でトップターンをかけようとした時に、足が伸びやすく思い切りターンができます。

僕はBURTONのTOURISTというブーツを使っていますが、このブーツも後ろに倒れるブーツで、X ESTとの相性の良さを感じています。

STRAIGHT CHUTER、SKIP JACKといったパウダーコンディションでのテールの役割が明確なディレクショナルボードでは、テールをスラッシュさせる、テールブローが最高です。壁に登る時と、降りる時のトランジションがタイトなら、前足の足首や膝をサスペンションとして使わなければなりません。そんな時に重宝する機能です。


②ESTだけのスプリングベッド


burton XESTスプリングベッド

GENESIS X ESTは、締め付け感の無いリラックスした使い心地でありながらレスポンス性も備えたBURTONの名機でした。その要だったスプリングベッドが、X ESTに継続されています。

スプリングベッドは、ESTならではの機能であり、乗り心地です。反発で跳ねる感覚がある、DR.中松のジャンピングシューズの様なイメージです。

スプリングベッドは、Flying-Vボード(特にドラゴンフライコア)と抜群の相性で、CUSTOM-X FVとのセッティングは僕の知るベストセットアップでした。

踏むと、反り返ったベッドが跳ね返り、ボードを倒して踏み込めば、ポン!っと前へ飛び出す様に反応します。また、僕はSENSEI170でもスプリングベッドの良さを体感しました。長いボードをターンでたわませる事で、よりスプリングベッドの跳ね返りを感じられたように思います。


③自由度の高いストラップポジション

burton XESTストラップ位置

X ESTでは、アンクルストラップのポジショニングのために、スライダー(ストラップ側)とタン(ギザギザ側)に3つづつ穴が空いています。この穴で位置調整をし、自分の好みのフィーリングを探ることができます。

足首をフリーにしたければ、一番下の穴に。ピーキーなレスポンスを好むのなら、一番上の穴にセットすると良いでしょう。

X ESTのストラップは、マラビータのアシムハンモックストラップと同素材です。形状を見ると、バックルから内側に繋がるスタビライザーがクロスしているのがわかります。これにより、マラビータよりも多少ねじれに対する安定感が生まれているようです。

ストラップ調整では、ブーツの柔らかさ・硬さを意識すると、理想のフィットが得られるはずです。僕の場合は、ストラップ側を一番上、タン側はデフォルトのまま、クロスさせる様に使っています。素材自体は柔らかいので、BURTONのTOURISTでは少し上にセットする事で、良いフィット感を発見出来ました。


これらは3つのポイントは、X ESTとESCAPED(WOMEN’S REFLEX,EST)だけに搭載されているスペシャルなテックです。

僕自身、これら全てを使いこなした上で解説するにはもう少し時間が必要ですが、現時点でSKIP JACK, CUSTOM-X, X-FV, SENSEI, STRAIGHT CHUTERに乗せ比べたところ、ビンディング各部の調節がライディングに大きく影響する事を確認しました。

X ESTの機能を理解すれば、ボードに合わせて狙い通りのビンディングに仕上げる事ができそうです。

左右入れ替え可能なアシムハンモックストラップ

burton XEST アシムハンモックストラップ

調節できるパーツは他にもあります。アンクルストラップは、MALAVITAにも搭載されているアシムハンモックストラップ。左右を入れ替えて(上下逆さにして)使用できます。

デフォルトの状態では、足の内側への可動域が広がり、左右を入れ替えるとフィット感も逆になります。個人の好みはもちろん、ブーツの劣化や馴染み具合に合わせて調節でき、フィッティングは無限に広がります。

この入れ替え可能な設計についてBURTONは呼び名を付けていませんが、NOWではSURF RIDE MODEと呼んでいます。

硬くても割れないハイバック

CFX, C60, DIODE…過去のXシリーズのカーボン系ハイバックを思い返すと、硬さ故に割れやすいという弱点がありました。リフトのチェアアタックで割れてしまった経験がある方も多いのでは?

X BASE以降は、カーボン・コンポジットというカーボンブレンド素材が登場し、しなやかで強いハイバックが実現しました。硬さだけでなく、張りや反りといった感触が加わり、割れにくくなりました。

セッティングの注意点

burton XESTベースプレート

X ESTのビスは、軽く錆びにくいチタン製です。ハイバックのローテーションやフォワードリーンのセッティングには、2~3番のドライバーを使用しましょう。

セッティングの際は、ビスの締めすぎに注意してください。

ハイバックハードウェアというパーツが摩耗しやすく、ベースプレート側のビスの山がなめってしまうとベースプレート交換が必要になり、高額です(¥20.750+TAX 2021現在)。

今後に期待したい改良ポイント

アングルのふり幅

前傾姿勢を求める人にとって、ESTならではのデメリットがあります。

US9インチの僕で、フロントは25°程度が限界だと感じました。ここまで高価で特別仕様のビンディングですから、もう少し振り幅に余裕が欲しいところです。

セッティングの簡略化

パーツの調整を一つ一つを試していく好奇心がある人にとって、とても面白いビンディングだと思いますが、そういったセッティングが面倒だと感じる人には全く不向きです。ドライバー不要でワンタッチ調節ができたなら、もう少し気軽な印象になるかも知れません。

「ボードに付けたらそれっきり」という方にも気兼ねなくお勧めできたGENESIS X ESTの廃版が惜しまれます。

価格設定

62.000円+TAX…。この価格はBURTONが一切妥協せずに多機能を追求した結果だと思いますが、なかなか手が出せない価格であるのも事実です。

機能、使用法、価格、どこから見ても、全てのバートンユーザーに開かれたモデルだとは言えませんが、興味のある方は是非、直営店のレンタルや試乗会などを活用し、納得のいくまで検討してください。

BURTON縛りでしか発揮しない領域がある

burton XEST × SENSEI170

かつてBURTONファンの間では、ハードギアをXシリーズで揃え、それを乗りこなす事が一つのステータスでした。

もちろん、BURTONでハードギアを固める事が全てではありませんが、X ESTはBURTONボードが持つ性能を最大限に出力できるビンディングであることは間違いありません。

高額ではありますが、1つのビンディングで多くの機能を求める方、細かなセッティングを行いたい方、乗り続けたいBURTONボードがある方にとって、手に入れるだけの価値があると思います。

昨今、個性の強いビンディングブランドに注目が集まり追い上げを見せる中で、X ESTがBURTONの牙城を守るモデルになる!?かも知れません。

参考資料:X-Baseプロジェクト

X-Baseの開発は、最軽量のバインディングを作る目的で始まり、コストは二の次で製作が進んでいきました。

支援を募り、Du Pont社(化学メーカー)によって、バインディング用にカスタム構築したシミュレーターが開発されました。

理想的な材料が見つかるまで数十の異なる材料を使用してパフォーマンスをシュミレーションし、最終的に、当時史上最軽量で最高のパフォーマンスのバインディングが組み立てられました。

次年度に、Terje, Johan, Rippey, Kelly, Downing, Curtes等のライダーのフィードバックによって大幅にアップデートされたX2というモデルに進化します。

X-Baseの特徴は、ベースプレイトとハイバックにカーボンが採用されているところです。

X-Baseの開発をきっかけに「軽量化」、「ライダーパフォーマンス」のコンセプトがフォーカスされ、FL Project (ボード名)がリリースされました。(97-98モデル)後のドラゴン・フライコアへと進化します。

BURTON 1996 XBASE

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