自然な操作感を残した超軽量ケミカルボード
長年、主要スノーボードブランドがハイエンドモデルで取り組んできたテーマの一つに「軽量化」があります。
ボードの軽さを追及するために、ベースとなる木材(コア)を薄くすると剛性が失われ、滑走スピードが上がると頼りなく煽られてしまいます。また、軽い木材だけでコアを作れば、反発力や弾力性が見込めません。
こうした軽量化の難点をテックでカバーし、高速域に耐える強いハイスペックボードを作ろう、という挑戦です。
CAPITA MEGA DEATHは、紆余曲折を経てきたこのテーマを、クリーンな形で実現したフリースタイルボードです。
パウダーでこそ、ダッグスタンスやスイッチで遊びたい “THE SNOWBOADER” のための特別な1本、完成しました。
サステナ問題を工場から見直し
フリースタイルボードの一歩先へ
とはいえ、理想的な軽量ボードは既にBURTONが、METHOD/VAPER/T6などで達成していたことを忘れてはいけません。
軽さ、速さ、強さを兼ね備えたこれらのモデルは一時代を築きましたが、やがて製造過程で環境に負荷をかけているのでは?という疑惑が浮上します。
2015年9月、国連総会で採択された「持続可能な開発目標」いわゆるSDGsにより、環境保護・保全に関わる様々な規制が設けられました。それに伴い、サステナ時代へのハードルを越えることができなかったケミカルボードは次々と姿を消してしまいました。(テック系素材の生産における排水が規制対象になった、と記憶しています)
こうした環境問題にいち早く、根本的に向き合っていたのがCAPITAです。
クリーンエネルギーを活用した自社工場MOTHER SHIPを2015年に設立。産業廃棄物のリサイクルにも積極的に取り組む姿勢を表明します。
これは、スノーボードを次世代へと繋げていく為の大きな1歩であり、スノーボードカルチャーが進むべきロールモデルを示してくれたと思います。
新たな価値観と環境基準。その上で改めて、滑りとトリックが簡単にできる軽量ボードCAPITA SUPER DOAが登場します。そして、再生代替コアを纏った新MEGAシリーズ(MEGA MERCURY / MEGA DEATH) へと繋がっていきます。
こうしたバックグランドから生まれたMEGA DEATHは(意味深なモデル名ですが…)、今後のCAPITAの発展に貢献する重要なモデルとなるはずです。
スノーボードの進化を感じる
カジュアルでしなやかな操作感
前置きが長くなりました。本題のMEGA DEATHは23-24シーズンにリリースされ、2期目を迎えたツインライクのディレクショナルボードです。
ボードを手に取ると、まずはその軽さに驚きました。僕自身、毎年多くのニューモデルに触れていますが、あまりの軽さに「ここまで来たか!」と思ったほど。
重量感でいうと、BURTON MYSTERY HOME TOWN HEROよりもやや軽い印象です。
さらに、高反発でよくしなる。このしなやかさは、高速域で思い切り踏み込んだり、オーリーなどのトリックにも有効です。
価格は高額ですが、中身と歴史を知れば、価値ある1本だと思います。
オールラウンドでフリーライディングが出来るキャンバー・プロファイル設定です。
長めのリバースキャンバー(ロッカー)が深雪での浮力をアシスト。ボードの軽さを考えると、浮力は十分期待できそうです。
また、キャンバーエリアも長いので、十分にカービングターンが楽しめるはず!
オーリーアシストは万全!:ZERO CAMBER
注目点は、テールエリアのリバースキャンバーとZEROキャンバー、WAH-POW フラットキックテックのミックスです。
これは、踏み込んだときにキャンバーとリバースキャンバーの間で生じる抵抗を、中間のZEROキャンバーが抑える仕組みで、動作をスムーズにしてくれます。
そして、踏み込んだ後はフラットキックの部分を使って、蹴るだけでポン!オーリーの仕掛けやすさは明白です。
やっぱりフリースタイルブランドのCAPITA。遊び心を忘れていません。
ノーズとテールから覗くフリーライディング性能
ノーズはハンマーに近いブラント形状。WAH-POW FLAT KICKとこの形状で雪をしっかり受け止めるので、実際のサイズ以上の浮力があると予想できます。
一方のテールはノーズとはやや形が違うタイプのブラント形状です。テールはコンパクトに絞られ、キックも強めにあるので、深雪での操作性が期待出来ます。
ラウンド形状のテールはスムースな乗り心地となるため、大きく伸びやかなターンが味わえると想像しています。(逆にキックの角度がクイックで短いテールは、直線的に弾く様な反応の良いターンとなります。例:ストレートシューター)
ノーズのカクンと折れたところからアウトラインを延長した形がこのボードのベースになっていると思いますが、全体をコンパクトなレングスにまとめ、スウィングウェイトを軽くしながらも、不整地では力強さが発揮できるよう調整されていると感じました。
きっと、雪上ではスペック上の数字の印象をいい意味で裏切ってくれるはず!
形状と効果の類似モデル:NEVERSUMMER COUGAR / SEASON KIN
軽さと弾力、踏みごたえ:3D サーモポリマー・スターシップ・コア
MEGA DEATHのコンセプトはコア材にあり。そのコア材の秘密は、MOTHER SHIPにあります。
スノーボードのコアには「桐」が使われているのをよく目にしますが、CAPITAが使用するメインコアは、MOTHER SHIPの近隣あるポプラ群(FSC®︎認証)から調達しているそうです。
MEGA DEATHには、その中でも電子制御で選別された最高品質のポプラが使用されています。
コア材としてのポプラは、桐に近い軽さや柔らかさがあるといいます。さらに再生可能なサーモポリマー(ゴムに代わる素材)と組み合わせることで弾力性、つまり「踏み心地」を与えたものが、この3D THERMO POLYMER STARSHIP COREです。
踏めて弾く、特別なポップ感:MEGA DETH専用ファイバーグラス
スノーボードの耐久性や弾力性を盛り込む重要な素材がファイバーグラスです。
MEGA DEATHで使われているのは、グラスサプライヤーと共同開発し、MEGA DEATHの為にオリジナル加工されたという特別仕様!
強度をキープしながらも軽く、粘り、弾力性があり、よく弾く。 この性質を取り入れている代表格が、国産グランドトリックボードです(ハイエンドボードで競われる高度な技術、高価なのも頷けます)。
MEGA DEATHでは、グラトリ要素としてではなく、フリーライディングでの振動吸収能力としての効果が期待出来ます。CAPITAは、SUPER DOAでも軽いのに弾くボードを表現してきたので、得意分野と言えるでしょう。
特殊フッ素が練り込まれた滑走面
超高分子量UHMW素材(シンタード・ベース)に、カーボンとフッ素が練り込まれた滑走面です。SUPER DOAやMEGA MERCURYでも同素材が用いられています。
こうしたミキシング素材の滑走面は、ワックス成分が混ぜ込まれたBURTONのリサイクルシンタードWFOベースや、テフロンが練り込まれたミステリーシリーズなどが有名です。それぞれに特徴があると思われるので、今季はこの滑走面の理解を深め、最適なワクシングを見極めたいと思っています。
チューンナップポイント
CAPITAのボードはストラクチャーがキッチリ入った状態で入荷します。これも、自社工場の強みを生かしたフィニッシュ工程です。
ここまでのストラクチャーは、北海道のハイシーズンには少し邪魔になってしまうので「削り落としてくれ!」というご要望もありますが、僕は削り過ぎない程度の薄~いサンディングに留めることをお勧めしています。
むしろこのストラクチャー、春には大きな効果を発揮するもの。春遅くまで滑り込む方々からの評判は折り紙付きのCAPITAです。
元ネタ THE BLACK SNOWBOARD OF DEATH
MEGA DEATHの原型は、CAPITAがブランド設立後まもなく発表したモデル、BLACK SNOWBOARD OF DEATH。
この頃は1本のボードでストリートからパイプまでなんでもこなす時代。そのなかで、メインスタンスを軸にフリーライディングを楽しむ挑戦的なオールラウンドボードとして登場しました。
ファウンダーのジェイソン・ブラウンがBURTON(SEVEN(確かTRUE TWIN))から電撃移籍したことも大きな話題となりました。(しかもジェイソン・ブラウンのCAPITA一発目の広告は、ゴリッゴリのストリートの1カット!)
CAPITAは、発売から20年以上に渡ってマイナーチェンジを繰り返しながら、このBLACK SNOWBOARD OF DEATHのリリースを続けてきました。
現在の形は20周年を迎えた20-21モデルに完成したもの。そして23-24シーズンにMEGA DEATHとしてアップグレード版DEATHを発表しました。
セットアップはNEW FALCOR!
MEGA DEATHを試乗したCAPITA × UNIONユーザーからは、ATLASやATLAS PRO、NEW FORCEなどといったビッグディスク・ベースのモデルとの相性が良いとの声が上がっています。
「結構ボードがしっかりしているので、ATLASみたいなバインの方が踏める」とのことです。
CAPITAとUNIONの間には親密な関係がありますが、24-25シーズンMD COREにアップデートしたNEW FALCOREは、もはやMEGA DEATH用にデザイン(機能性含む)されたのでは!?というレベルで一体化しています。
FALCORの伝達能力と、MEGA DEATHの処理能力の掛け合わせ、そして超軽量なセットアップです。疲労対策としてもかなり効果がありそう…!
モロセットアップ
軽さによる浮力に期待して156を選びました。159も魅力的でしたが、長さを取らなくてもそれなりの浮力が得られると考え、春まで乗るためにも極力サイズを抑えました。
軽量ボードはパキパキとした動きになりがちですが、MEGA DEATHは軽量でありながら、しなりと弾力を楽しめると期待しています。
フルシーズンを通して様々な環境でテストしたいと思います。
モロのつぶやき
CAPITAのアンバサダーMATT WAINHOUSE氏とフォトグラファーKEVIN NOLAN氏によるMEGA DEATHのスチール作品があります。
極上のコンディションの中から“THE BLACK SNOWBOARD OF DEATH”が顔を出すパウダーターン。これほどのコンディションなら他にもチョイスがあったはず。敢えてCAPITA SKULLを強調したであろうこのカットに刺激を受け、このボードを手にしました。
バリバリのフリースタイルボードブランドのフラッグシップモデルであり、すっかり大人になったスノーボーダーにもブッ刺さるCAPITA。
もっとこの先があるはず。そう思わせてくれるボードです。