REVIEWスノーボード2020-2021キャピタ

MERCURY|大人が本気で遊べるCAPITAのスーパーボード

2020-2021 CAPITA MERCURY

ライダーから選ばれるハイスペックボード

日本でのCAPITAは、DOA(Defenders of Awsome )の人気が先行していますが、MOJANEが今季プッシュしているのはMERCURY (マーキュリー)です。ハイスピードでも安定したパフォーマンス性を発揮するこのボードは、ジャンプのアプローチも、脇パウでのヒットもお手の物。ディレクショナルボードやテールが割れたボードでは物足りないぜ!という大人たちにピッタリな1本です。

2020-2021 CAPITA MERCURY
CAPITA MERCURY ¥82.000+TAX

MERCURYが徐々に注目を集めているのは、KEVIN BACKSTROMやDUSTIN CRAVENといったDOAから乗り継いだCAPITAライダーの存在があります。ただ、「人気と実力を兼ね備えたトップライダーが乗っているから」という理由で優れたボードだと結論付けてしまうにはもったいない位の魅力がMERCURYには詰まっています。

とにかく軽い!CAPITA独自の軽量コア

2020-21 CAPITA MERCURY 平山雅一

スノーボードショップでMERCURYを見かけたら、実物を手に取ってみてください。その軽さに驚くはずです。

ボードが軽いという事は取り回しが良く、タイトなツリーランや軽い雪の上をポフポフと飛び跳ねて遊びたい、といったシチュエーションに最適な証。MERCURYの軽さは、バックカントリーにも有効で、壮大なフィールドでも活躍します。

軽いボードと言えば、BURTONのMYSTERYシリーズが有名ですが、MERCURY(8万2千円)は、高額なMYSTERY(約20万円)の重さと大差はありません。軽さと価格で比較するなら「いつかBURTON MYSTERYに乗ってみたい」と考えている方の選択肢にも入ってくるモデルだと思います。

独自コアが軽さの秘密

MOTHER SHIPと名付けられた自社工場を持つCAPITAでは、モデルによって13種ものオリジナルコアが使い分けられているそうです。スノーボードメーカーの代表格であるBURTONのコアが5種という事を考えても、CAPITAのコアパターンがいかに多いかが分かります。

MERCURYでは、小さくカットした木材を目的に応じて配列した「パンダ・コア」が使われています。軽く、細かくカットしても強度を保つ材質を選び抜き、繋ぎ合わせることでメリハリのあるフィーリングを作り出しています。これは、BURTONのドラゴンフライコアと同様の技術です。

ボードデザインとスペック

CAPITAのハイブリッドはフラットのチップが鍵

MERCURYはキャンバーベースのハイブリッド構造で、「RESORT V2 PROFILE」という名称が付けられています。ハイブリッド構造は、ブランド毎に名称があり、乗り心地にも各社のポリシーが現れますが、CAPITAのRESORT V2 PROFILEはフラット形状のチップ(キック部分)が特徴的です。

一般的に、ハイブリッド構造の多くはロッカーベース、アークデザイン(ノーズとテールが反り上がる)のチップで、着地での安定性に優れていますが、CAPITAのハイブリッドRESORT V2 PROFILEは、ノーズとテールが折れ上がるような”リバースキャンバー”(ロッカーではない)で、更にその先のチップはフラットになっています。

チップがフラットだと何が起きるかというと、決まったリズムで浮き続け、深雪でも安定したスピードが維持出来ます。そして、フラットな面では蹴る範囲が広いので、オーリーのタイミングが取りやすいという効果も生まれます。

特大オーリーとサイドヒットの達人、AUTHER LONGO(アーサー・ランゴ)が大きな山でのライディングにMERCURYを持っていくというのも頷けます。

スノーボードブランド各社のハイブリッド構造の名称

CAPITA / RESORT V2 PROFILE
YES.NOW BOARDS /CAM ROCK構造 (元祖)
BURTON /PURE POP CAMBER構造 (類似)
Fjell Snowboards /CAM ROCK
NITRO /CAM OUT構造
ROME / FUSION CAMBER

V字カーボンが生み出す高速安定性能

MERCURYには帯状のカーボンシートが、足下からノーズ・テールに向かってV字に仕込まれています。これは、安定性と反発力を生むもので、ボコボコの山を下り降りた時、その効果が感じられます。上級者はその反発力を使い、ゲレンデ内のヒットポイントでオーリーの高さが出せると思います。

北海道に似合うジャンルレスな板

2020-21 CAPITA MERCURY 平山雅一

MOJANEが、MERCURYを一押しする理由は、ボードのコンセプトと北海道のスノーボード環境がフィットしていると感じるからです。僕たち北海道のスノーボーダーは、カービングもパークも、サイドカントリーも、ジャンルに捕らわれず自由に楽しんでいます。そのせいか、「1本でなんでもこなす」と謳うボードに対しての評価はシビアで、その条件を高いレベルでクリアしてくれるボードを求めています。

これまでにもMOJANEでは、1本で全てを網羅するオールマウンテン・フリースタイルボードをご提案してきました。その代表格はBURTON CUSTOM-X、CUSTOM-X FV、HOMETOWN HERO、 FJELL MT1230。そして、CAPITA MERCURYが加わります。

これらの共通点は、踏み込めるだけのテールの長さとキックがあること、そして適度に硬く、軽いボード(CUSTOM-X CAMBERを除く)。オーリーの要素が備わっていることがフリースタイルボードの条件です。

ビギナーのMERCURY選びは慎重に

スノーボード歴の浅い方がMURCURYを選ぶ際は、いくつか注意点があります。このボードは高速域で活躍する中上級者向けのボードです。昨今のスノーボードは多少背伸びをして選んでも、乗れないことはありませんが、ボードが備えている性能をフルに体感出来るかというと、その保証はありません。

頑張って滑り込んで上達しようと考えている方はもちろん挑戦する価値がありますし、グラフィックでMERCURYを選ぼうとしている方には、チューンナップでエッジを調整し、乗り手のレベルに合わせる事も出来ます。自分の技術で乗れるのか心配な方、迷っている方は是非店頭でご相談下さい。

 

ユーザーズレビュー

MERCURYの乗り心地をご紹介するには、試乗した人や、実際に乗っている愛用者の生の声が一番です。キャピタを良く知る2名のスノーボーダーに意見を求めました。平山くんは2020-2021の試乗レビュー、島添くんは2019-2020のユーザーズレビューです。

2020-21 CAPITA MERCURY 平山雅一
2020-21 CAPITA MERCURY 平山雅一

上級者向けナチュラルフリースタイルボード

SUPER DOA同様走りがとても良いです。踏み込んでいくとしっかり反応し、伸びを感じさせてくれるボードでした。深く鋭いターンが出来ますが、形状の関係上、ボードの端まで使ってのターンというよりも、足下で操作する感覚です。
その為、緩~中斜面でのターンは面白かったのですが、急斜面でのスピードとGが乗ってくると不向きかな?と感じました。

パウダー内では、浮きます。動きも良いので、ツリーランやナチュラルヒット、当て込みも面白かったです。ただ、パウダーボードの様な気持ちよさは感じられませんでした。

扱いが難しいボードではないので、誰でも乗る事ができますが、このボードの良さ(面とエッジのパワーゾーン)が出る幅は決して広くはないので、このボードの良い部分を引き出せる自信がある人、上級者向けのオールランドボードではないかと思います。

個人的には、初中級者はBURTON HOME TOWN HEROの方が幅が広いシチュエーションで使いやすく、ナチュラルヒットを中心にオールラウンドで楽しみたい上級者や、ハイエンドマテリアルを体感しながら成長していきたい中級者にもおすすめです。類似モデルはHOME TOWN HERO、CUSTOM X FV

平山くんのMERCURY採点

インパクト6 フレックス5 カービング6 グラトリ6 バンク6  テクニカル8 トーション7 ジャンプ6 スイッチ6 パウダー7 ナチュラルヒット9 /10点満点


2019-20 CAPITA MERCURY 島添
2019-2020 CAPITA MERCURY 島添くん

1シーズンMERCURYに乗った感想

あまり万人受けする板ではないと思います。僕の技術レベルでは、どんな動きも取れるDOAの方が好みです。板自体はとても軽いですが、乗り手にパワーが無いと動きが重くなります。

スペックチェンジ前のカスタムXの乗り味が好きな方には結構ハマるんじゃないかと思います。

MERCURYを選んだ理由

  • ローム時代からケビンバックストロームが大好きだったから。
  • キャピタのライダーが乗っていたこと。ノースポンサーのセージコッツェンバーグも乗っていたので、間違いないと思った。
  • 今後、流行しそうな気配を感じたから。
  • 足が大きいのでドラグ防止のために、ウエスト幅25.0以上のボードを探していた。
  • DOAよりもややハードな板が欲しかった(実際はかなりハードだった)。
  • グラフィックが気に入った。良くも悪くもキャピタっぽくなく、新しいキャピタの本気度が伝わってきた。

DOAとの比較

MERCURYはフリーライドに寄せた板。比べるというより、全く違うコンセプトの板だと思います。繋がる部分としては、DOAを万人受けの板ではなく、ライダー仕様にしたイメージ。トーションは硬いです。

フラットキックについて

フラットキックの効果として感じるというよりは、ボード全体のイメージとして、動きやすく、オーリーに限らず動きが出しやすいです。殆どのトリックのきっかけとなるのはオーリーやノーリーだという事を考えると、結果的にフラットキックの効果がかなり出ているのかもしれません。

パークライドについて

キッカー、特に大きな台には向いていると思いますが、少し動きが重くなると思います。小さなキッカーには不向きなイメージあります。トーションが硬いのでジブはやりにくいです。

滑走面について

どんなコンデションでも一定のパフォーマンスが出でるかと思います。 日頃のワクシング次第にもよりますが、この価格帯ではバートンよりも走るイメージがあります。最新モデルはもっと改良されていて、走るんじゃないですかね。

エッヂの角度について

ウエスト幅がある分、ルーズに感じる方もいるかも知れません。僕はチューンナップはお任せで頼んでいますが、とにかくパキパキにする方が良いと思います。

バインについて

僕の趣向では、ノーマルディスクのバインがマストです。パークメインの方はフォース、フリーライドを高速で行う方はアトラスとか良いのではないかと思います。DOAでは、バインのフォアードリーンは前後とも結構入れていましたが、マーキュリーでは動きに軽さを出すためにフォアードリーンは抜きました。

島添くん愛用ボード

CAPITA DOA153W, MERCURY153(2019-2020モデル)
BOOTS BURTON DRIVER-X,BINDING UNION TEAM
・スタンス:グーフィ
・パーク:L-12〜-9,R9〜6(パークでは後ろを強く振ります)
・フリーライド:L-8,R8〜6

MERCURY誕生の背景
TOTTALY FUCKIN AWSOME

2019-20 CAPITA MERCURY

CAPITAがスノーボードブランドとして軌道に乗り始めたのは、ダン・ブリーズとの契約がきっかけだった、という話はCAPITAのブランド紹介でもご紹介しました。X-GAME REAL SNOWゴールドメダリストのダン・ブリーズは、スタントマンさながらの過激なライディングスタイルが持ち味で、スノーボード界を賑わせる存在でした。

バックカントリーゲームが盛に行われていた2000~2010年代は、フリースタイルボードが一気に花開いた時期でもありました。各ブランドからロッカーを盛り込んだ新しいベンドが次々と発表される中で、バックカントリーゲームで一歩抜きん出ていたのはYES NOW BOARDが打ち出したCAM-ROCKです。

バックカントリー勢の世代交代の真っ只中にあったCAPITAからは、ダン・ブリーズがゲームに参戦。超がつくほどのダッグスタンス、スイッチでアプローチも着地もお構い無しにセクションから飛び出し、豪快な着地を決める。キャンバーのパワーを必要としながら、パウダーでも両足着地ができるボードが必要でした。

そこでCAPITAは、ストリートセクションを攻めまくる彼の為に、2011-12シーズン「TOTALLY FUCK’IN AWSOME」を開発します。更にその翌年には、ダン・ブリーズのシグネイチャーモデルを発表。それは、ウェアのスポンサーだったVOLCOM、CAPITA、ダン・ブリーズのトリプルネームという話題性に富んだコラボボードでした。スノーボードのグラフィックとしてVOLCOM STONEが登場したのは、90年代にLOCKがリリースしたスティーブ・グラハムモデル以来だったそうです。

この豪華なダン・ブリーズシグネイチャーモデルは、TOTALLY FUCK’IN AWSOMEをベースに設計されました。これらのボードは、足下がキャンバー、ノーズとテールは“フラットキック”。これが2015-16シーズンにニューモデルとして登場したMERCURYの原型です。

TOTALLY FUCK’IN AWSOMEは、北海道のパウダーフリースタイルにばっちりとハマるスペックでした。ほぼツインに近いディレクショナルで、スイッチライディングでも積極的に遊び倒せるスタイルです。
ただ、今思い返すと、ある種CAPITAらしい過度なグラフィックスが邪魔をして、伝えるべきボードスペックが認知されなかったのではないでしょうか。

MOJANEでは、CAPITA設立の数年後に中断していた取り扱いを、TOTALLY FUCK’IN AWSOMEが生まれた11-12シーズンに再開しました。ド派手なルックスが目を引いたことは確かですが、共感できない人も多かったのもまた事実です。

そして2015-16シーズン、TOTALLY FUCK’IN AWSOMEはMERCURYとして生まれ変わりました。見違えるようなルックスは、ターゲットを見極め、ボードの本質的な良さを伝えるためのリブランディングだったのではないかと想像できます。 また、自社工場MOTHER SHIPの始動により、MERCURYを含む全てのCAPITAボードの品質が向上しました。特にソールの出来栄えは年々良くなっていると感じています。

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