ビンディングの正しいサイジング、装着、扱い方。
過去2回の記事では、パーツやギアマッチングの視点から、ビンディング選びを解説してきました。
これらの内容と、気になるモデルのスペックをいくつか見比べると、だんだん狙いが定まってくるのではないでしょうか。
最終回となるこの記事では、候補が決まってからのポイント、サイズ選びと使い方についてまとめます。
はじめてのビンディング選び
①ビンディングの種類とパーツ解説
②スペックの要点とギアマッチング例
③ビンディングのサイズ選びと扱い方
過去記事:はじめてのスノーボードブーツ選び①②③と併せて、ご活用ください。
ビンディングのサイズ選び
ビンディングのサイズは、スノーボードブーツのサイズに合わせます。
ブーツとビンディングのサイズが合っていなければ、全てのハードギアの機能が得られないといっても過言ではありません。
ブーツが大きい場合は収まりが悪かったり、逆にブーツが小さければバインの中で動いてしまうことも。また、ストラップの長さが合わない可能性もあります。
ビンディングの適応ブーツサイズ
どのブランドも、S / M / L の3サイズで全てのブーツサイズをカバーしています。
MEN’S
【S】24-26cm【M】26-28cm【L】28-30cm
WOMEN’S
【S】21-23cm【M】23-25cm【L】25-27cm
※メーカーにより多少異なることがあります。
ブーツサイズがビンディングサイズをまたぐ場合は、他の道具との相性やフィット感の好み、ブランドやモデルの特徴などで選びます。
具体的には、アウターがゴツめのブーツなら大きい方が正解かもしれませんし、細めのボードなら小さいサイズが良い場合もある…といった具合です。
どちらが良いか自信がないという方は、購入店で相談してみましょう。その際は、ブーツやボードのモデル名とサイズを伝えるとスムーズです。
特にお問い合わせが多いDEELUXEブーツとビンディングのサイズ合わせについては、リンクの過去記事をご覧ください。
ビンディングサイズとボードのウエスト幅の関係
ブーツとビンディングのサイズは表記通りに選べば失敗はありません。さて問題は、ボードのウェスト幅(ワイズ)とビンディングの全長の兼ね合いです。
ブランド公式やオンラインサイトなどのビンディング販売ページには、ボードの適応サイズチャートが掲載されていることもありますが、「あくまでも目安」であることを覚えておきましょう。必ず、ご自身で確かめることをお勧めします。
チェックポイントは、ボードに自分のスタンスでブーツ + ビンディングを乗せた時、つま先と踵がボード内にある程度収まるかどうか。
特にブーツサイズが28cmを超える方は、Lサイズのビンディングを選ぶことが多くなるので、ボードによってはウェスト幅を大きく超えてしまう事があります。
ブーツやバインディングがウェスト幅を超え過ぎると、ターンの最中にエッジよりも先につま先やかかとが雪面に引っかかってしまいます(ドラグと呼びます)。
ライディングスタイルにもよりますが、ボードのウェスト幅+3cmまでが許容範囲、2cm以内であれば問題ないでしょう。+3cm以上になる場合は、スタンスとアングルの微調整で解消することもできます。
僕の一例を挙げると、ブーツサイズ27cm、ビンディングMサイズ、ボードはBURTON CUSTOM、ウェスト幅は25.3cmです。激しくボードを倒さなければドラグは全く気になりません。
あえて大きめ、あえて小さめ、という選択
キャリアが長いスノーボーダーの中には、自分流のビンディングサイズを見つけている方がいます。
例えば、ブーツサイズが25cm (US7) 、通常であればSサイズのビンディングを選ぶところ、ルーズな感触が好みだからとMサイズを使うWさん。
また、通常ブーツサイズ26cm (US8) はMサイズのビンディングが適正ですが、ブーツによってはSサイズでも使える場合があり、タイトなフィッティングが好きな方に選ばれています。
数字や定説に縛られ過ぎず、試乗会や仲間との貸し借りを通じて、自分が心地よいと感じるサイジングを探ってみるのも良いでしょう。
ジェンダーを気にせず体型に合ったサイズを活用しよう
サイズさえ適応していれば、足が小さく小柄な男性がレディースモデルを使うことはもちろん、大柄で脚力のある女性がメンズモデルを使用するのも大いにアリです。
また、レディースモデルは、ユースモデルから大人モデルに移行途中の成長期の男子にもおすすめです。足が大きなキッズがいきなりメンズモデルを使用すると、硬さで負けてしまう事があるので、レディースモデルを活用していただけると良いと思います。
ただし、大人がユース・キッズモデルを使用することはお勧めしません。足のサイズは合っていても、そもそもの体重やパワーの差はカバーできないからです。
装着のポイントとセッティング
ブーツの踵をヒールカップに合わせて、ストラップを締める。ビンディングは、サイズさえ合っていれば装着自体は簡単です。
改めておさらいしてもらいたいポイントは、ヒールカップとブーツをしっかり密着させて装着できているか。
ストラップビンディングは、ヒールカップとブーツの踵がピッタリ固定されて初めて機能が活きるものです。
ビギナーの皆さんは安全面から座って装着しているかもしれませんが、ストラップビンディングは立ったまま装着する方が、踵に重心がかかるのでヒールがビタっと合いやすくなります。
立ったまま装着できるとスノーボーダーとしても「やってる感」が出るので、座って装着する癖を付けず、少しずつでも立って装着できるよう練習してみてください。
スタンスセッティングについては過去記事をご参考ください。
極寒の日は丁寧に扱おう
北海道の厳冬期、山頂は−20°になる日もあります。その様な環境下ではビンディングのラチェットのバネ、コネクター、ラダーパーツが寒さで壊れやすくなります。
新しい状態でも、パーツを踏んづけてしまったり、雑に扱うと割れてしまう可能性があるので、丁寧な脱着を心がけましょう。
ビンディングの調整とセッティングのアレンジ
次に、ビンディングのセッティングについてです。パーツについては①の記事で詳しく触れていますが、ビンディングはブーツやライディングスタイルに応じて、各部の調節が可能です。
モデルによって調節できる部位や度合いは異なりますので、ここでは全バイン共通のストラップとハイバックの調整のみ触れることとします。
わずかな角度の違いで、ビンディングの印象は大きく変わります。まずはデフォルトで乗り味を確かめてから、可能な範囲で変化させて、滑りやすく感じるセッティングを見つけましょう。
ストラップ:ブーツに合わせて調整を
ブーツの足首の前中心にアンクルストラップの一番細くなる部分がくるようにストラップの長さを調整しましょう。ブーツは実際に履いてビンディングと合わせます。ライディングによる変化やブーツによる差も生じるので、気になったらその都度調整します。
ビンディングによっては、ブーツに合わせてストラップの長さを調整したり、左右のストラップを付け替えることで使用感が変わるリバーシブルタイプのストラップなどもあります。 更に、装着時にストラップをしっかり固定するのか、ちょっとルーズにするのか、など、スタイルや好みにより、自分が最も動きやすい感覚を探りましょう。
フォワードリーン:クイックなターンへ
フォワードリーンは、ハイバックに角度を付ける機能です。角度を付けると、かがむ姿勢をとりやすくなり、反応の変化も感じられます。ただ、角度を付けると疲れやすくなるという副作用もあるので注意。
初級者には不要かもしれませんが、ある程度ターンを習得したら、フォワードリーンを調整してみましょう。
ビンディング大手2ブランドの取り扱い注意点
BURTON:ハイバックローテンションの要、ハイバックとベースプレートを止めている箇所のベースプレート側のネジ山が壊れない様に注意しましょう。ここがナメってしまうと、ハイバックローテーションが効かなくなります。
UNION:ヒールカップとハイバック、アンクルストラップまでが一つのビスで繋がっています。このビスが緩むと、ライディング中にセンタリングがずれるので、滑る前にチェックしましょう。
日常のお手入れと保管方法
スノーボードから帰ったら、できるだけボードからビンディングを取り外し、十分乾かしましょう。
毎度外すのは面倒だと思われるかもしれませんが、3日以上ライディングから遠ざかるなら、ビンディングを外すことをお勧めします。※ドライバーサイズ3番を使用すると、ビスの溝が守れます。
ビンディングが付いたままのボードは、ボードのビス穴に水が溜まったまま乾きにくいので、錆びやすくなります。
ビンディング以外の道具(ボード / ブーツ)も同様で、毎回しっかり乾かすことが大切です。
たまに行うケアとしては、ラチェットのバネに潤滑油(ラスペネ等)を差すこと。バネ跳びを防ぎ、寒さによって動きが鈍くなることも減るでしょう。(雪の詰まりは防げませんが…。)
錆はビスとビス穴の大敵
ビスにサビが現れたら、すぐに交換してください。錆びたビスを使ってしまうと、ボードのインサートホールにサビが移り、ビスが回らなくなる可能性があります。
ビンディング側のビスは交換可能ですが、ボード側のビス穴が錆びてしまうとボードの修理専門店に依頼しなければならず、大がかりな作業になりますのでご注意下さい。
ビスは毎年取り替えても良いものです。常に予備を持っておくと安心です。
オフシーズンの保管
ボードにビンディングを付けっぱなしで何年も使い続けている、という方もいるかもしれません。 ですが、長期間使用しない時は、ボードからビンディングを外すのがベストです。ボードが変形したり、ビス回りがサビてしまうことがあるからです。
取り外したビンディングは、本体の各パーツに緩みがないか締め直し、ストラップなどの柔軟なパーツに負荷がかからないよう、直射日光が当たらない場所で保管してください。ディスクやインサートホールビスも、無くさないようまとめます。
そして次のシーズンが始まる前は、本体、パーツ、ビスの状態を今一度チェックして初滑りに備えましょう。
憧れのライダーのビンディングをチェック
全3回にわたり、初級者のためのビンディング選びをまとめました。
最後に、多くの道具を使い継ぎ、技術を磨いてきたスノーボードのエキスパート達が今、どんなバインで、どんな滑りを見せてくれているのかを少しご紹介します。
初級者の道具選びには直接役立たない情報かもしれませんが、憧れの存在や目標を持つことは、スノーボードマインドを盛り上げてくれるはずです。是非彼らをフォローして刺激をもらってください。
フリーライディング
山頂から山麓まで、様々なシチュエーション、コンディションの中を自分らしく滑り降りるスタイル。スピード域や地形変化への対応力が求められます。圧雪では加速していくターンやカービングを、パウダーではサーフィーなスタイルであらゆるエリアを楽しみましょう。
中井孝治プロ SALOMON HPS District
藤田 一茂プロ KARAKORAM LAYBACK
オールマウンテン・フリースタイル
90年代後半に活躍したヨハン・オロフソン氏を筆頭に、フリーライディングの中に、トリックやスイッチライディングを積極的に取り入れるスノーボーダーが登場。僕たち一般のスノーボーダー、特に北海道での遊び方の手本となるスタイルです。
大久保 有利プロ ROME KATANA
BROCK CROUCH BURTON CARTEL-X
グランドトリック
スノーボードのノーズ、テールを使い、跳ねたり、プレスしたり、ボードを使った”遊び”を表現するスタイル。ボードのフレックスを損なわないバインが好まれており、日本でも海外でもUNION ULTRAが人気。
JOEY FAVA UNION ULTRA
MIKE RAV UNION ULTRA
アルパイン・フリーライディングスタイル
断崖絶壁の岩肌を滑り降りる、究極のフリーライディング。僕ら一般スノーボーダーには無縁ではありますが、限りなくシビアな環境を滑るライダーはどんなバインを使っているの?と興味津々!!
JOHN JACKSON FLUX XV
モロのつぶやき
いつものボードに新しいビンディングを乗せた時、乗り慣れたはずのボードの違った一面を知る事があります。これがビンディングの面白さです。
また、ユーザー自身で調整ができるので、使用環境や滑り方に合わせてどこまでも深堀りしていけます。
ゲレンデで、ストラップやハイバックを組み替えたり、左右逆にしている人を見かけると、「きっと色々と実験を繰り返しているんだろうな」と嬉しくなります。
ビンディングの構造自体は複雑ではないので、興味があればネジを緩めて、動かして、どんどん試して楽しんでいただけたらと思います。
いつもためになる記事ありがとうございます。
記事ではバインについて28cmがMとLの境目になっておりますが、Burtonのバインでしたら28cmはMが最適だと思います。
私はCartelのMサイズにSalomonのDialogueやNitroのVenture(いずれも28cm)に合わせましたが、どちらも問題なく装着することができました。
逆にLサイズと合わせると、バインのほうが大きすぎてフィット感がないように感じました。
kyamiさん
活きた情報を、ありがとうございます。
記事内のサイズは目安として掲載させていただきました。
最近のブーツはアウターがシュッとしているものも多いので、具体的なマッチングの事例は読者のみなさまの参考になると思います。
ありがとうございました!
ブーツサイズ25.5なのですが、SMサイズ選びにずっと悩まされています。
サロモンのシャドーフィットのようにブーツがヒールカップに入らなければサイズアップに躊躇しないのですが、ユニオンやバートンのSサイズは余裕があります。
ですが、Sサイズは足の中心(母指球と踵の中心)が踵寄りになり、センタリングできません。
そこでヒールカップを前に出すと今度はガスペダルからつま先が出過ぎてしまい、トゥー側のパワーロスが発生しそうです。
経験が足りないので記事に書かれている方のように使い分けの域まで達していませんし、私のセンタリングの考え方が限定的なのかもしれないです。
人によって足の中心は踵寄り、爪先寄りなんて話もありますし、ますます答えが出ないです。
センタリングの考え方についても是非投稿をお待ちしています。
「Sサイズは足の中心(母指球と踵の中心)が踵寄りになり、センタリングできません。」は、「爪先寄り」の間違いです。
失礼しました。
Thorさん
25.5cmは、特に悩みが多いサイジングですね。
当店ではゴツめのDEELUXEブーツの方はMを選んでいる傾向が多く、BUROTONやNITROなどアウターがシャープなものはSサイズをお使いの方もいらっしゃいます。
センタリングについても、使いたいギアで叶わない場合もありますね。センタリングの記事も考えてみたいと思います。ありがとうございました。