長時間サーフをする為に開発されたウェットスーツ
ウェットスーツが誕生したのは1953年。北カリフォルニアにサーフショップを構えていた、ジャック・オニール(JACK O’NIELL)が本格的なウェットスーツ作りに着手したことが始まりだと言われています。
「I just wanted to surf longer.」それは、もっと長い時間サーフィンがしたいという、単純な欲求からでした。
完成した最初のウェットスーツは、ベストタイプだったそうです。やがてオニールのウェットスーツは、世界中のサーフポイントの為にバリエーションを増やし、瞬く間に世界中へと広がります。寒冷地の海も例外ではありません。凍てつくような水温を攻略する事、それはサーファーにとってだけでなく海洋研究や海上保安の発展にも大きく貢献しました。
ウェットスーツを着る意味
南国のサーフスポットでは、海パン一丁でサーフィンをしているイメージがあります。では、暖かければウェットスーツは不要かというと、決してそうではありません。サーフボードとの身体の接触による怪我防止、漂流物やクラゲから身を守り、身体を浮かせてくれる作用もあります。
太平洋と日本海に狭まれた日本列島では、季節によって潮の流れや水温が大きく変化します。そのため、南国の様なイメージでサーフィンが出来るポイントはごくわずか。季節に応じたウェットスーツを着用する必要があります。
特に、北海道の様な寒冷地でサーフィンをするなら、ウェットスーツが最重要アイテムであることはいうまでもありません。
既成品とオーダー品、選ぶならどっち?
ウェットスーツには、既製品とオーダー品があります。これからサーフィンを始めようという人が道具を揃える上で、この選択は大きな悩みどころとなります。
既製品:すぐに使えて低価格
多くのウェットスーツブランドは”吊るし”と呼ばれる既製ラインを持っています。既成のウェットスーツは、過去の膨大な採寸データを基に作られており、身長と体重でサイズを割り出します。
店頭に自分に合うサイズの実物が並んでいれば、その場で手に入れることが出来て、比較的低価格であることが利点です。
問題は、完璧なフィット感は期待できないということ。人それぞれの身体のサイズにある程度フィットする、ということが限界です。ただ、海水温が暖かい季節・エリアであれば、大きな問題ではありません。
オーダー:自分だけのフィット感
自分の身体のサイズに合わせて作られたウェットスーツは、動きやすさ・保温力が格段に違います。MOJANEでは、北海道の様な海水温が低い季節・エリアでサーフィンをするなら、自分に合ったウェットスーツが最重要アイテムだ、とお伝えしています。
フィットしていないウェットスーツでは冷たい海水が袖口や襟ぐりの隙間からスーツ内部に流れ込み、すぐに体温が奪われます。それは、体力の消耗だけでなく判断力も奪ってしまうのです。
オーダーではカウンセリングや採寸を行った後、完成までに平均で3週間かかります。また、既成品よりも高額になります。ですが、その価値は十二分に感じて頂けると思いますし、アフターケアも万全です。サーフィンを長く続けるには、快適さと安全面を考慮して、オーダーのウェットスーツを手に入れることをお勧めします。
ウェットスーツの素材
ウェットスーツの主な原料はクロロ プレーン ラバーと呼ばれるゴムです。それをベースに、目的に適したゴムの加工素材を表裏に貼り合わせることで、様々な水温に合わせたウェットスーツが出来上がります。
現在、ウェットスーツの形は10種ほどありますが、どの時期に、どのエリアで、どんなサーフをするかによって形と素材を選ぶ事となります。
サーフィンの為のウェットスーツでポピュラーな素材が、ジャージとメッシュスキンです。動きやすいジャージ素材は、主に運動量を求める際に用いられ、メッシュスキンは防風・保温といった効果が高い素材です。
ウェットスーツの種類とアクセサリ
寒冷地用ウェットスーツ5種
北海道に適したウェットスーツは5種類に絞ることが出来ます。初めてサーフィンにトライする人は、セミドライスーツかフルスーツになるでしょう。どちらを選ぶべきかは、始める季節によります。どの時期にどんなペースで着用するか、サーフライフに合わせて検討しましょう。
例えば、北海道では多くの方が夏にサーフデビューを果たし、翌年はGW開けに再開します。この場合、セミドライスーツを持っていると一足早く4月中旬から始められます。
SEA GULL (シーガル) ジャージ
半袖、股下ロング丈の夏用ウェットスーツ。北海道の7月末〜お盆頃まで活躍します。
FULL SUITS (フルスーツ) ジャージ
長袖、股下ロング丈、最も一般的なウェットスーツの形です。伸縮性に優れたジャージ素材で、北海道では7月〜9月中頃まで使えます。
SEMI-DRY SUITS (セミドライスーツ) ジャージ/メッシュスキン
寒冷地仕様のスーツ。道東や水温の低いエリアでは、夏の間もセミドライが必需品です。仕様によっては年中着用出来ますが、スタンダードなもので4~7月、9~12月までの使用が目安となります。MOJANEでは北海道の海でテストを重ねるDUSK WETSUITSをお勧めしています。DUSKのセミドライは真冬の道東や利尻島でもセミドライが使えるクオリティーです。
LIGHT-DRY SUITS (ライトドライスーツ) ジャージ/メッシュスキン
ブーツ一体型のセミドライウェットスーツ。北海道では4〜6月の期間をこのスーツで過ごす方が多いです。セミドライスーツよりも保温力があり、ドライスーツ(防水スーツ)よりも軽いので、寒がりな女性にも人気があります。完全防水ではありませんが、中に水が入りにくいので、インナーを着てもOKです。
DRY-SUITS (ドライスーツ) ジャージ
完全真冬仕様の防水ウェットスーツがあれば、真冬の北海道でもサーフィンができます。中に水が入りにくい設計の為、衣類を着た上から着用できます。他のスーツと比較すると保温性と耐久性を優先させているので生地は硬めです。発祥は青森の東北エリアという説があり、日本製に信頼が集まっています。北海道サーフにハマってしまった人が辿り着くウェットスーツの最終形態です。
寒冷地用アクセサリ
ブーツ・グローブ・キャップ。これら3点は、北海道では冬~春秋に活躍するアイテムです。道東や道北では夏でも海水温が上がらない日がありますので、備えて行く必要があります。ウェットスーツ同様、水温によって厚みを選びますが、ブーツは海水に長時間浸る事となるので特に水温や体質を考慮しましょう。キャップは頬周りが圧迫されて息苦しくなりがちです。必ず試着をしてジャストサイズを確かめましょう。ウェットスーツとの相性があるので、同一のブランドで揃えると安心です。
温暖エリア用ウェットスーツ5種
暖かいエリアや季節に適した形から順に紹介します。北海道での出番は、年に数日の猛暑日程度、海水温が高い夏でもロングスプリングを着用する事をお勧めします。 温暖な地域へのサーフトリップをする方はチェックしてください。TAPPER (タッパー)
ジャケットタイプのウェットスーツ。ボトムにはボートショーツを合わせます。
SHORT JOHN (ショート・ジョン)
袖なし、股下ショート丈のウェットスーツ。
SHORT SPRING (ショート・スプリング)
半袖、股下ショート丈のウェットスーツ。水温が暖かく、波のサイズが大きい場合にも有効。
LONG JOHN (ロング・ジョン)
袖なし、股下ロング丈のウェットスーツ。
LONG SPRING(ロング・スプリング)
長袖に、股下ショート丈のウェットスーツ。外気は肌寒いが水温は暖かい、という時に着用します。
日本の技術が光るウェットスーツ事情
世界トップレベルのサーファーたちが、日本製のウェットスーツを愛用していることをご存じですか?
日本で製造される素材の品質や、裁断・縫製技術は世界に認められています。千葉にあるサンコーは、世界有数のサーフブランドHURLEYのウェットスーツを製造する工場で、海に面した立地を活用し日々開発とテストが繰り返されています。
宮城県石巻市にあるモビー・ディック社は、日本の海上保安庁御用達。初めてウェットスーツを作ったO’NIELLの工場としても有名で、多くのウェットスーツ職人を輩出しています。
東京五輪でウェットスーツが進化する!?
東京オリンピックで新たに競技種目に加わったサーフィン。1年の開催延期が決まった(2020年5月現在)ところですが、日本の海にトップサーファーが集結するまたとない機会を楽しみにしている方も多いことでしょう。
大会では、日本製のウェットスーツに身を包んだアスリートが多く参戦する点にも注目してください。HURLEYのコロへ・アンディーノ(USA)、O’NIELLのジョーディー・スミス(南アフリカ)、そしてクイックシルバーからはブランドが注力するプロジェクト「1mmウェットスーツ」を纏った五十嵐カノア(日本)が出場予定。
この大会をきっかけに、ハイパフォーマンス・スーツの開発が一気に加速すると思われます。より快適なウェットスーツが僕たちの手元に届く日も近いのかも知れません。