バンクド、カービング、コブ!
雪の変化に合わせて春雪を滑ろう
3月。北海道のスノーリゾートでは滞在者や来場者が急に少なくなっていきます。
それもそのはず、軽く柔らかな雪と1日中戯れていられたハイシーズンから一転、春の陽射しを受けた雪面は、夜の間に凍り付いてカリカリのアイスバーンに…。降雪量も減るため、雪は日に日に汚れと湿度を蓄えて滑走スピードを奪います。
一見、苦行のような環境ですが、実はこれも対策次第。ローカルにとってはまだまだシーズンの折り返しです。
軽装で広々と遊べる春のゲレンデは、ハイシーズンとは全くカラーの違う楽しみ方が待っています。
この記事では、3月以降のゲレンデコンディションの変化と対策、遊びのポイントについてまとめます。
ハイシーズンだけで滑り終えるなんて、もったいない!道内全てのゲレンデがクローズするまで、今シーズンを滑り切りましょう。
春はスキルアップの季節
3月に入ると1日の中でも雪質がどんどん変化していきます。
朝のビシッと締まったバーン → 雪面が緩み思い切り踏み込める昼時 → 日陰から硬くなっていく午後。この変化に合わせてセクションを移動しながら遊ぶのが春スノーボードの基本です。
陽当たりと時間帯を優先するので、コースの方角や天候がマッチすれば、飽きずに1日遊ぶことができます。外気が暖かい日は、リラックスして体を大きく動かせるので、トリック練習にも最適です。
中でも春にこそ取り組みたいのが、カービングターン、バンク、コブ。大きくこの3つです。
3月上旬の朝は、多くのゲレンデで踏み応えのある綺麗なピステンが楽しめます。寒気が戻り、硬いバーンが続く日はエッジを利かせたターン練習を続けましょう。
気温の上昇と共に雪面が緩む日中は、深くエッジが入るので、初中級者はターンでボードを立てる感覚を掴む事ができます。
雪解けが進みシャバシャバ雪になったら、転んでも痛くないので、バンクやコブに挑戦する絶好のチャンス!
来場者もめっきり減るので、スピードやスキルに自信がない人でもコブコースに入ったり、小さなキッカーやバンクも積極的に攻めてみましょう。
この時期、見よう見真似で挑戦した体験が、次のシーズンに必ず生きてきます!
春雪のためのセルフチューン
「ボードが走らなくなった。」という問い合わせが増えるのも、3月からです。
春雪を滑ったボードの滑走面は、目視で確認できるくらいの汚れが付いています。その汚れをこまめに除去しながら滑ることが、ボードを走らせる最善策です。
ソールの汚れの正体は…
花粉、黄砂、PM2.5、塵埃、砂や泥、松脂、1シーズンの間に雪に蓄積されてきたワックスなどが挙げられます。それらがミックスされて摩擦を生み、滑走性能を大幅に下げるのです。
季節が進み、外気が暖かくなるほど汚れの濃度は高まっていきます。
ホットワクシングよりも、現場でのひと手間
滑走面に塗ったワックスは摩擦で消耗されるので、春の湿雪ではすぐに効果が失われてしまいます。
そのため、ショップに持ち込んでホットワックスを施しても、ハイシーズンのような持久力は期待できません。むしろ、汚れた雪に費用や労力をかっさらわれていくようなもの!
これまでチューンナップに縁がなかった人も、春遅くまでみっちり滑るなら、最低限の道具は備える必要があります。
必要な道具と使用法
まず揃えたいのがブラシとファイバーテックスです。ホットワクシングで使うスクレーパーもあると良いでしょう。
こうしたツールで滑走面の汚れを取るだけで、走りは良くなります。
もし、作業時間が取れるならソールクリーナーを使用するのもおススメです(野外で使用する際は、環境に配慮した製品選びを心がけましょう)。
さらに、春雪用のワックスを直塗りで薄く重ねてファイバーテックスで塗り広げれば、数本はストレスなく滑走できます。
滑走ワックスは、ペースト・固形・液体などさまざまな種類がありますが、春雪で効果を得るには、ワックスの種類よりもワクシング前のソールの汚れ落としの方が重要です。
また、効果を期待してワックスを厚く塗ると、逆に雪の汚れを拾ってしまうので、極力薄くが鉄則!量よりも回数で走らせます。
春に向けたボードの準備は、2月中旬には開始したいところ。エッジを立て直したり、春用のボードにベース+滑走ワックスを仕込みましょう。
1本のボードで春まで滑る人は、一度クリーニング+ホットワクシングでソールをリセットしてから春用ワックスを重ねると、現場で汚れが取れやすくなります。
おすすめワックスの一例
クリーニング:DOMINATOR BR PASTE / WEND WAX MF NATURAL CREANER&CONDITIONER
春向け滑走ワックス:DOMINATOR HYPERZOOM PASTE(~3月末) / DS(ホットワックス) BUTTER(固形生塗) / DR PASTE(4月~)
3月からのコンディションの変化と対策
3月:数日前からの気温に注目
上旬は、真冬並みの日が続いたり、春らしい日があったりと不安定です。 標高の高いエリアではまだまだ降雪日があり、パウダーを狙うことも十分出来ますが、前日までの気温の影響を受けるので、週間予報をチェックしましょう。
急に気温が下がれば、ガリガリになる可能性大。エッジはシャープに整えておく必要があります。気温が上がってくると雪面も緩みはじめ、バーンの状態がよくなります。
まだ雪の汚れに神経質にならなくても良い時期ですが、新雪とザクザクの雪が混じり始めると、ボードが急に走らなくなります。標高の低いエリアから春雪用のワックスを使い始めましょう。
3月末には、ローカルゲレンデは概ね営業を終了します。特に2023年は異例の温かさなので、クローズが早まる可能性もありそうです。時間券を持っている方は早めに消化したいところです。
4月:降雪=ストップ雪
4月からは大型リゾートが遊び場となります。新生活が始まるタイミングなので、旅行者はもちろん、家族連れも少なく静かな時期ですが、営業時間の短縮やコースの縮小があるかもしれないので下調べをお忘れなく。
パウダーは期待できないものの、午前中のうちに雪面が緩み、バンクやコブが最も楽しい季節です。
4月に降る雪は水分を多く含むので、ほぼ100%ストップ雪となります。雪解けが進み汚れも目立つので、滑走コンディションとしては最悪の状態です。
雪の汚れは、裸眼よりもゴーグル越しの方が確認できます。明らかに汚れている場所を避けたり、気温が上がってくるタイミングは休憩し、気温が下がり始める時間帯に遊んだりと工夫して滑りましょう。
ストップ雪は、1~2本滑る度にワクシングするしか対応策はありません。僕はドミネーターのBUTTERやDSペーストを使用します。ハイフッ素なので効果は絶大。それでも、数本に1度の作業が必要です。
GW: シーズン最後は汚れ対策
北海道では、ゴールデンウィークを以て営業を終了するリゾートがほとんどです。連休中は、最後のライディングを楽しもうと、スキーヤーやスノーボーダーが標高の高い山に集まります。
エンドシーズンの雪には花粉や松脂が加わり、ソールが激しく汚れる季節です。4月に続き、セルフチューンは「面倒がらずにこまめに行う事」が鉄則です。
おすすめは、比較的雪がきれいな層雲峡黒岳や旭岳。ただ、ストップ雪には注意しましょう。
バンクドスラロームに参戦しよう!
春のゲレンデでは、スキルを問わず気軽に参加できるオープンなイベントが多く開催されます。
特にここ数年、ムーブメントを巻き起こしているのがバンクドスラロームの大会です。
大きなS字を繰り返すコースは、同じラインを何度も繰り返し滑走することで作られます。
滑走者が多くなるほどS字のカーブは立体的に掘られていき、大きな壁(バンク)が出現。その壁とパンピング技術(ボードを踏んで加速させる)を駆使して、次のS字へ、次のS字へとターンを繋げていくスリリングな競技です。
機械整備されたコースとは違い、狭いセクションもあれば、ウェービーな部分もあり、傾斜も様々です。スタートからゴールまでの間に、次々と狙いを定めて思い切り体を動かして滑る。これが、ゲーム感覚でとても面白い!
バンクドスラロームの競技ルールは、速い=勝ち。
優勝を狙うならスキルは必須ですが、ある程度の滑走レベルで楽しめるので、大人から子供まで、幅広いレベルのスノーボーダーが挑戦できます。
滑走のポイントは、遠心力に負けない様になるべくバンクの上部を狙って加速すること。ボードがはみ出るくらいのラインを狙えば、速さ+カッコ良さも表現できます。
北海道でもニセコモイワや手稲山でバンクドスラロームの大会が行われるようになりました。バンクドスラロームが春ゲレンデの風物詩になる日も近いかもしれません。
バンクドで上位を狙うワックスは?
速さを競うバンクドスラローム。上位を狙おうと、ワックスに力を入れる人も増えています。
「ショップのチューンを頼れば間違いない!」と、大会目前にボードを持ち込む方がいらっしゃいますが、残念ながら急な対応が出来るお店はなかなかありません。MOJANEでもご要望に添えないことがほとんどです。
ワックスは水分に強い高フッ素のものを選び、失速を感じたらその都度クリーニング&ワクシングを行いましょう。
ただ、大切にしたいのがローカルカルチャーとしてのバンクドスラロームです。 春に催されるイベントや大会の多くは、運営の方々がスノーボードの”ファン”な部分を幅広い層に体験してもらおうと準備をしています。
スタートラインの横で一生懸命ワクシングするよりは、参加者同士の応援やイベントの空気感も楽んでもらえたらと思います。
ポケットに入る程度の最低限の持ち物で、板が全く走らずに困っている人を見かけたら声をかけて協力する、そんな心がけがバンクドでのワクシングをクールに行うコツです。
必殺、ストラクチャー加工
滑走面に細かな溝を掘る、ストラクチャーというチューニングがあります。平らな滑走面に水分の通り道を作り表面張力を抑え、春雪での滑走性を上げようというものです。
本州の雪を滑るスキーヤー/スノーボーダーや、選手たちの間では認知度の高い加工ですが、最近は北海道でも必要とする人が増えてきました。
ただ、ストラクチャーにはメリットとデメリット両方があることも知っておきたいところ。ボードによってはスライドターンがし難くなってしまうこともありますし、一度加工してしまうと元に戻すことは難しくなります。
ストラクチャー加工はチューニングの中でも特殊な作業です。ボードの特性を把握し、用途を明確にした上で、ノウハウを持ったチューンナップ店で行いましょう。
※MOJANEではストラクチャー加工を行っておりません。
ストラクチャーに定評があるショップの一例
BONTAK ボンタック|北海道虻田郡ニセコ町 / GET-UP ゲットアップ|北海道札幌市東区 / CALLA FACTORY キャラファクトリー|名古屋市瑞穂区 / ICE TUNE アイスチューン|埼玉県八潮市 / SHIFT シフト|千葉県船橋市 / KRYPTON クリプトン|神奈川県横浜市
22-23の北海道は、寒暖差が激しいシーズンでした。例年よりも雪解けが早く、札幌ではすでに路面が乾いていることに驚きます。5月まで雪が残るのだろうか…と心配されている方も多いかもしれません。
とはいえ、今はまだ雪が生きています。昼間の良い時間帯だけを狙うも良し、早めに切り上げて温泉や食事を楽しむもまた、良し。
いつもより早めに春ワックスを準備して、最後まで存分に楽しみましょう!