フルオーダーのウェットスーツで過ごす
自分だけのサーフタイム
既製品やお下がりのウェットスーツでサーフィンを始めたという方も多いと思いますが、本格的にサーフィンを続けようというタイミングでぜひ手に入れたいのが、自分の体に合わせて作るフルオーダーのウェットスーツです。
この記事では、はじめての寒冷地用オーダースーツを検討している方に向けて、完成までのプロセスやオーダー事例をご紹介します。
過去記事、【北海道版】ウェットスーツの基礎知識と選び方の続きとなる内容です。合わせてご覧ください。
フルオーダーなら密着性・保温性が格段にアップ
海水温が低い北海道でのサーフィンは、1年中ウェットスーツが必要です。夏のひと時を除けば、冷たい海水がウェットスーツの隙間から侵入すると、すぐに体温が奪われてしまいます。
理想的なウェットスーツは、手首や足首、首回りからの浸水を最小限に抑えるようにフィットしつつ、しなやかで動きやすいこと。季節に合わせた素材で仕立てれば、真冬の海にも入れます。
超贅沢な北海道の冬サーフ
僕のおすすめは、9月末~雪が降るまで、そしてスノーボードシーズンが終わりを迎える3月末〜5月末までのサーフィンです。
海水温はとても低い時期ですが、装備さえ整っていれば意外と寒くはありません。(最も寒いのは海から上がった後の着替えです。)
北海道の冬は、低気圧の影響で良い波が届くポイントがたくさんあるのですが、海に入る人はとても少ないので、周囲を気にせず思う存分練習ができます。
たった1枚のウェットスーツに守られているというスリルも相まって、波が小さかったとしても冒険感が半端じゃない!混雑とは無縁の、贅沢なサーフシーズンです。
フルオーダーのウェットスーツができるまで
サーフショップでオーダーしたウェットスーツは、完成までに3週間~1ヶ月半ほどかかります。
注文が集中する季節の変わり目やキャンペーン期間は、それ以上日数がかかることも。また、昨今は素材の確保が難しい時期もあるようです。予め納品予定を確認しましょう。
①カウンセリング
使用環境やご予算、現在使用中のウェットスーツで改善したいところなど、細かくお聞きします。
②モデル選び
カウンセリングの内容に応じて、候補をご提案します。ベストなモデルを選びましょう。
③採寸
全身の採寸をします。正確な採寸を行うために、身体に密着した服装または薄着になれる服装でご来店ください。
④オプションの選択
生地の色、ブランドロゴのサイズや位置を選ぶことができます。
⑤発注
体質(体型の変わりやすさ/筋肉のつきやすさ)、インナー着用の有無、使用環境等を考慮して各部のサイズを決定し、オーダーシートを作成します。メーカーはその内容を基に、型紙を調整し裁断・縫製を行います。
⑤完成・お渡し
完成したウェットスーツを試着し、生地や縫い目などに初期不良がないかをチェックします。腕を回したり、サーフィンの動作を行い、サイズやフィット感を確かめましょう。
ウェットスーツはモデル毎に着脱方法が違います。無作為に着ると破れてしまうこともあるので、必ずレクチャーを受けてください。
アクセサリ類(ブーツ・グローブ・インナーなど)はウェットスーツとの相性の善し悪しがあるので、必要な場合は相談を。
参考価格
夏:ジャージ 価格帯 7〜12万円台
春秋:セミドライ 価格帯9〜14万円台
冬:セミドライ/ドライ 価格帯14〜17万円台
寿命と買い替えのタイミング
ウェットスーツの寿命は約3〜5年です。
使用環境や日頃のお手入れにもよりますが、概ね、手首・足首・股・脇の縫い目から劣化が進んでいきます。摩擦の影響を受けて生地の厚みがなくなってきたと感じたら買い替え時です。
使用回数に関わらず素材の経年劣化が起きますので、水温の低い時期はウェットスーツの状態をよく確認しながら使用しましょう。
ホームビーチを良く知るサーフショップへ
寒冷地では、ウェットスーツが命綱の役割を持ちます。安全にサーフィンを行う為にも、ウェットスーツに関する相談事は、実際に使用するサーフポイントの知識があるお店を選びましょう。修理が必要な時の窓口としても機能しますので、通える範囲が便利です。
仕上がりを左右する採寸と応用技術
近年は、セルフ採寸したデータを入力するオンラインオーダーも広まっていますが、ウェットスーツの仕上がりを左右するのは正しい採寸と、ひとりひとりに合わせたアレンジです。
例えば、運動中に筋肉量の多いパーツのサイズが大きく変わる人がいます。特に多いのが胸回り、二の腕、肘下の筋肉や首の筋肉です。 筋肉が付きやすい、体重の増減が激しい、インナーレイヤーを着用するなど、些細なことでもカウンセリングで伝えましょう。全体のシルエットバランスをどう整えるかもこの時点で決まります。
大切にしたいのは、ブランドが持つ世界観
スノーボード専門店であるMOJANEが提案するのは、混雑を避けてマイペースに過ごすサーフィンです。
季節や時間に捕らわれず、気ままにブレイクを探すためにも、道具の品質は抜かりなく。 心地よいことはもちろん、作り手の価値観に共感できることも重要だと考えています。
O’NIELL/オニール
ジャック・オニール氏が立ち上げた、ウェットスーツの元祖とも言えるブランド。トップサーファーを育てるなど、サーフカルチャーへの貢献にも積極的です。高性能ウェットスーツの製造で信頼を得る日本のモビーディックとライセンスを共有しています。陸・海上自衛隊、海上保安庁が使用するウェットスーツを手掛けた実績を誇る工場です。
DUSK/ダスク
未開拓の波を探し求める越後将平さんによる、着る人を主役にするスーツブランド。真冬の北海道でテストを繰り返し、寒冷地に適したクオリティーを完成させました。”その時を待つ、その時を着る-wearingthetime-”というテーマを掲げた、シンプルで絵になるウェットスーツです。
みんなのウェットスーツオーダー事例
外気温や海水温を問わず、波があれば冬でも全道各地のポイントへ向かうKくんとIくん。2人のドライスーツの仕立てや、3シーズン目のレビューは、オーダーの際のヒントになるかもしれません。
彼らが求めていたのは、耐久性、防水性、ヘビーローテーションが可能でスタイリッシュなドライスーツでした。
1日の中で休憩を挟みながら何度も海に入ったり、連日使用することも考慮すると、「絶対に浸水しないけれど重たいドライスーツ」よりも、「多少濡れてもすぐに乾くスーツ」にしようと話し合いました。
選んだモデルは、胸から開閉するストレスフリーのDUSK DRIFT ICE。完全防水ジップではないものの、ジップの動きに柔軟性があるので、生地が固くなってくる2~3シーズン後でも胸周りの柔軟性が保てます。
肌に触れる内側の素材、THERMO BLACK PLUS(旧プレミアムサーモブラック)は、軽く水捌けが良い起毛で、摩擦によって生まれた熱を逃さず温かいのが特徴です。
長期的に見ても大幅な体重の増減がなく体型を維持し、身体能力と筋力を備えた2人。作りたての状態だけでなく、3~4シーズン目の着心地も考え、動きの大きい部位はやや大きめに設定しました。
とはいえ、ハードチャージを繰り返すには、大きすぎるのもドルフィンスルー(ダックダイブ)の弊害になってしまうので、難しいところです。
上半身は胸、肩、肘周りを大きめに、お腹や腰はピッタリサイズ。お尻、太もも、膝周りの動きがあるパーツも少し大きくしました。
膝から下にかけてはドルフィンで脱げないようにフィット感を意識しましたが、少し脱ぎにくいというレビューをもらったので、今後に役立てたいと思います。
そして最後のポイントは、全身のバランスです。
一般的な完全防水ドライスーツは、ブカブカとしたシルエットのものが多く、またそれは、機能性を重視すれば妥協点にもなっていましたが、DUSKのアウトラインは、すっきりとシンプルです。コールドウォータースーツに対するDUSK越後将平さんの美学が感じられます。
完成したスーツは、週2~3回の使用ペースで4シーズン(50~70回)を乗り切ります。 お手入れを行っていれば、大がかりな修理は1回あるかないかです。
Kくんのレビュー
ドライスーツは12月から4月いっぱい着用します。浸水しにくいセミドライスーツがあればドライスーツの使用期間は短くなりますが、着心地も良くストレスを感じることが少ないので、着替えの時も暖かいドライスーツを選択しています。 どちらでも行ける時期で、デカ波の場合は水が抜けて安全なセミドライです。
使用頻度と使用上気を付けていること
週2回前後、1セッション2時間から3時間。入水時のエア抜きは、するのとしないのではドルフィンの持っていかれ具合とフィット感が変わってきます。
お手入れの頻度
表裏、両面を洗うのは月に1度、普段は表と袖口から多少は入るので袖口のみ裏も洗っています。
次回のオーダーでリクエストしたい事
同じブランドでもその年によってブーツのラバー部分が違うと思うのですが、今使用しているブーツは砂を取り込んでしまいなかなか取れません。無限に砂が出るので家の中と風呂の中が砂まみれになってしまいます。砂がつきにくくなるようなアップデートを期待しています。
Iくんのレビュー
ドライスーツは12月〜4月(入る海によって前後するので最大値)。セミドライとドライは、波のサイズ、水温気温で使い分けています。 グローブと袖口にシワができないようにすることと、エア抜き(水中でエアが抜けると水が入ってくるため)に気を付けています。
お手入れの頻度
使用の都度濡れた場所メインで部分洗い、シーズン2回程丸洗いします。
次回のオーダーでリクエストしたい事
今着ているドライスーツは4年目になりますが、問題ありません! 強いて言えば、濡れてしまった状態で脱ぐ際に足が抜けにくく、引っ張ることによって足首周辺に負担が掛かっていないかが心配です。
それと、足首付近の縫い目はリーシュのマジックテープでホツレやすい気もしてます。(それらが原因かわかりませんが、やはり右足首付近から浸水がありました…) とりあえずボンドで縫い目をコーキングして、様子を見ています。 膝下付近に少し余裕があるデザインだと脱ぎ易いようなので、参考になればと思います。
モロの場合
僕自身がセミドライスーツを作る時に気を付けていることは、使用する時期と1回の入水時間、そして自分のサーフレベルです。
僕のサーフィンの目的はリラクゼーション要素が大きく、基本的には小〜中サイズの波で天気が良い日を狙います。また、寒くて辛いのは嫌なので、多少動きにくさがあっても、暖かさ優先。水温が3~4℃でも、2時間遊べるようにウェットスーツを作ります。
小波では、一生懸命パドリングする必要がないので、体が冷えがちです。オプションは、極力手足首、首からの浸水を防ぐために、ダブルリスト、ダブルアンクル。フードも一体型にしています。 運動の邪魔にならない程度に厚い生地を選び、インナーでも調整できるようにしています。
サーフィンとどう向き合うかによって、ウェットスーツの選び方は大きく変わると思います。機能性はもちろん、シルエットにもこだわって、信頼の一着を手に入れてください。