REVIEWスノーボードショートファットショートワイド

浮く、動く、遊べる。北海道でショートボードがアツい理由

MOJANE流、ショートワイド~ファットボード考察

パウダーからカービングまで、リゾート全体を1本で

短く太いスノーボード、ショートファットやショートワイドが、スタンダードとなりつつあります。

これらは、パウダーでの浮力とターン性能を併せ持ち、ダックスタンスで楽しむパウダーボードとしても有効です。

沢や地形、コース裏、そして完璧にグルーミングされたバーンまで、大型リゾートの全てのシチュエーションに対応していることから、海外では”リゾート・パウダー・スティック”とも呼ばれています。つまり、ふんだんなパウダースノーとダイナミックな地形に溢れる北海道にを堪能できるボードだという事です。

この記事では、ショートレングスの登場からファット~ワイドボードへと発展する過程を振り返りつつ、北海道にぴったりなモデルをご紹介します。

ショートボードとワイド/ファットの定義

YES.20/20

ショートレングスに分類されるボードの基準は、具体的な数値ではなく「極力短いサイジングで乗る」というボードのコンセプトが決め手となっているように思います。

次に、太さです。150cmの通常のボードのウエスト幅は25.0cm未満。それ以上の太さになると、徐々にワイド→ファットと呼ばれるようになります。ただ、ここでもワイドとファットの明確な区切りは無く、レングスやシェイプといった全体像の中で区別されているようです。

ちなみに、MOJANEではウエスト幅26.0以上27.5cm未満をワイド、27.5cm以上ならファットとしています。ほんの少しの違いですが、明確に別ジャンルとして成立しています。

ショートレングスボードのサイズ例

通常154~158cmのボードに乗る人の場合
YES. THE420 / 142(28.6WW)
ロシニョール SUSHI / 144(27.8WW)
BURTON BOTTOM FEEDER / 150(27.0WW)

ショートファットの誕生

細くて長いボードが主流だった90年代から、スノーボードの形状が枝分かれしてゆく中で、様々なブランドからパウダーでの浮力に特化したボードが同時多発的に生まれました。

90年代後期から2010年にかけて徐々に発展してきたパウダーボードですが、ショートワイドよりも先に人気を得たのは、ショートファットでした。

2010年頃に巻き起こった世界的なパウダーボードブームにより、GENTEM STICKが脚光を浴び、北海道の雪質が注目され、浮遊感を強烈に感じられるショートファットボードが一躍、定番化したのです。

ショートファット系ボードの元ネタはFISH?

2002年のBURTON FISHは、そんなパウダーボードブームの先駆けとなったモデルの一つです。

FISHは、大きなノーズにセットバックとテーパードが加えられ、ボードの長さに頼らなくても浮力が得られることを証明した革命的なボードでした。また、サーフライクなパウダーライディングスタイルも特徴の一つです。

ショート”ファット”と言えるほどウェスト幅は太くはありませんが(太さだけで言うとワイドの範囲)、ショートファットの原型になったのではないかと推測しています。

長さによる浮力、太さが生む浮力

平山雅一 キロロ

90年代のボードの多くは、長いボードで急斜面を滑るときのスピードを利用して浮力を得ていました。

浮力の目的も現在とは違い、大きな斜面をダイナミックに滑り降りることが主でした。ハイスピードで縦にラインを取っていくようなイメージです。そのため、この時代のボードを振り返ると、156cmのボードでウエスト幅が25cmを切るものが主流でした。

ただ、パウダーはあらゆる場所に存在します。サイドカントリーやツリーラン、地形遊び…そういった場面では、中低速でも浮く必要がありました。

ボードに太さがあると、スピードが無くても浮かせることができます。短ければ、小回りが利くようになります。ただ、太くなりすぎると操作性は衰え、短すぎると安定感を欠いてしまいます。

FISHの開発者は、ボードの長さ・太さ・サイドカーブやテーパードのバランスを見極め、パウダー遊びの幅を拡張しようと試みたのです。

FISH以降のBURTONパウダーボード

BURTONはFISH(2002)の後継機としてMALOLO(2006)、更にその後継機としてBARACUDDA(2012)を発表しています。

2006年の時点で、僕のボードは依然ツインシェイプでしたが、FISHの後継機としてリリースされたMALOLOに乗り、パウダーブームの大きな波を肌で感じました。

MALOLO(2006)

FISHをフリースタイル化させたモデルで、FISHよりもテールが長く、浮力とフリースタイル性を備えていました。また、テーパードによりディレクショナルボードでのライディングスタイルにバラエティー性が加わりました。

BARRACUDA(2012)

新たにSロッカー(今でいうディレクショナル・フライングV)が追加され、中低速でも十分な浮力が感じられるようになりました。マロロより簡単なパウダーボードとも言えるでしょう。

MALOLOやBARRACUDAの原型となったFISHも、アップデートを繰り返しながら残っていました。ただ、2012年時点でそれらのウエスト幅はミッドワイド以上にはなっていません。

ショートファットの名作YES.THE420の登場

YES.THE420

2006年から2010年にかけて、各ブランドはFISHとMALOLOに触発されたかのように、あらゆるパウダーボードを開発していきます。それと同時にパウダーボードという言葉もどんどん浸透しました。その中で最も成功したボードの一つがYES.THE420(2012-2013)です。

僕の初めてのショートファット体験は、2シーズン目のYES NOW BOARD THE420でした。148cmでウェストが28.6cm、立派なショートファットです。短いボードをビッグマウンテン仕様にした個性的なモデルでした。

当時は、あらゆるスノーボードブランドがテック化を進める真っ只中でしたが、THE420は中身の勝負というよりもボードシェイプで一石を投じ、それまでには無かった浮力と圧雪での操作性を打ち出しました。

そしてTHE420は、その後リリースされるJONES HOVERCRAFTや、ロシニョールのSUSHIをはじめとする多くのモデルに影響を与えることとなります。

(代替テキスト)
YES IT’S A MOVIE 2

因みに、DVD【YES IT’S A MOVIE 2】では、FUSE TADASHIとDCPのニセコでのセッションで(楽曲はなんとX JAPANの紅‼) ショートファットと日本の雪や地形との相性の良さが映し出され、来日するツーリストや日本のスノーボーダーを大いに刺激しました。


ショートファットとサーフの関係

2011年、チャネル・アイランド・サーフボードからリリースされた、スパム・ホールというサーフボードがありました。

デーン・レイノルズがフリーハンドで削ったという事で、大変注目を浴びたモデルです。その形状は、スノーボードで言うショートファット。

この時、サーフ界でも現役バリバリのハイパフォーマンス・サーファーが、短くて太いファンボードをリリースしていたのです。この関連は、ただの偶然でしょうか?

YESの中心人物DCPは、サーファーとしても知られています。推測ですが、スパム・ホールがYESのショートファット開発のヒントとなったのではないか?と踏んでいます。

スケートスタイルの再燃、ファットからワイドへ

RIDE WARPIG

2020年代に入り、90′-00sの音楽やファッションがリバイバルされていますが、スノーボードにも同様のブームが起きています。

単機能ボードで全てのシチュエーションを攻めていた90年代の遊び方を現代に落とし込むような形で、ショートファットからショートワイドへと向かう新しい文脈が生まれました。

ショートファットボードをのウエストを、少しだけ絞ったシェイプがショートワイドです。このアレンジを上手に行っているのがRIDE WARPIG、JONES HOVERCRAFT、YES OPTIMISTICではないでしょうか。

これらの特徴は、パウダーはもちろん、パークを含むゲレンデ全体での遊びを取り入れて、ファットを進化させた点にあります。更に日本では、DEVGRUがジビングを強調した面白いショートワイドボードTRAUTを作りました。このモデルは90’sのボードによく似ていると思います。

RIDE WARPIG
RIDE WARPIG
YES OPTIMISTIC
YES OPTIMISTIC
DEVGRU TRAUT
DEVGRU TRAUT

こうした短くて太いボード群は、ニュースクール全盛期のスケートスタイルから派生していると考えられますが、ジャンプの抜けや、着地、オーリーのタイミングなどは通常のボードとは異なるので、パークでのジャンプがメインであれば、既存のフリースタイルボードを選ぶべきでしょう。

BURTONのショートワイドを開拓したNUG

BURTON FISHにショートファットの原点を感じるのと同じく、ショートワイドの原型として思い当たるBURTONボードがあります。2011年にスタートしたJAKE肝入りのプロジェクト、NUG(ナグ)です。

NUGもショートレングスで、太めのウェストワイドを持ち、スケートスタイルを強化した実験的なボードでした。リリース当時は目立った存在にはなりませんでしたが、コンセプトは今のショート・ワイドそのもの。今思うとNUGは時代を先取りし過ぎていたのかもしれません。

その後、2015-16シーズンのリミテッドエディションとして、Craig Kellyの冠が付いた「CK NUG」がリリースされています。

当時の僕は、その特性に気付けずにスルーしていましたが、CK NUGこそショート・ワイドの完成形ともいえるスペックでした。

BURTONのショートワイド代表作BOTTOM FEDERPOW WRENCH。NUGはその下地として大いに役立ったはずです。唯一、NUGに足りていなかったフリーライディングの要素は、近年のBURTONのショートワイドにしっかりと込められています。

ショートレングスのサイズ選びはとにかく、短く。

ファットもワイドも、ショート系ボードのサイズ選びのポイントは、素直に推奨サイズに従う事です。

21-22シーズンのBURTON POW WRENCH(ショートワイド)を監修したDAVE DOWNINGは、サイズの選び方について「できるだけ小さいサイズ」を推奨していました。少しでもサイズが大きければ、妙な重さが出てしまい、本領発揮とはなりません。

さて、ここで僕の失敗談です。

長いボードに興味を持っていた僕は、ショートワイドRIDE SUPER PIGを長めのサイズで選んでみたくなりました。キレがいい、という評判を耳にしたからです。

本来151を選ぶべきところを、154で乗った結果は、完全にオーバーフロー。ショートレングスのボードはコンセプトが明確なので、余計な目論見や深読みは抜きに、推奨サイズを選択するべきだと実感しました。どうか皆さんは無駄な実験を繰り返しませんように…。

そんな僕を、呆れ顔で見守ってくれていたのはMOJANEの先輩、鶴田さんです。

鶴田さん 旭岳

鶴田さんからのアドバイス

「分かってきたかい、モロちゃん?長さは特に必要ないんだ。適正なウエストとサイドカーブさえあれば、スノーボードは楽しいものなんだよ。」

ショートボードの「キレる」は、カービングボードの「キレる」とは違い、フロントサードターンでは少し詰まるような感覚があります。あくまでもダックスタンスのフリースタイルなターンの切れ味だったのでした。

また、短いボードは凹凸の多い地形で遊びやすく、荒れたパウダーでも最高に楽しめます(これは、THE420が切り開いた新しいスノーボードの楽しみ方です)。

小さい山でも大きい山でも、テクニカルなカービング以外のすべてを1本でスノーボードの楽しめるショートボード。ベテラン勢から支持される理由は、あらゆるジャンルのボードを乗り倒してきたからこそ辿り着く境地なのかもしれません。

MOJANE推薦、北海道向けモデル

LIB TECH JAIMIE SHORT WIDE

LIB TECH JAIMIE SHORT WIDE
JAIMIE SHORT WIDE

過去のLOST x LIBコラボのショートファットとは違い、レングスを伸ばし、ウェストを絞っています。ルックス的にもバランスが良い進化系のショートファット(ワイド)です。

ディレクショナルが強めなので、フリーライディング向きです。ダイナミックにも、細かくも、ターンが刻めるモデルなので、ショートワイドのターン性能に疑いを持っている方に是非乗っていただきたい1本。ニセコモイワのアンベツの滝方面の様な、タイトながらも斜度もあり、途中、沢で入り組む様な地形で遊べるのが想像できます。


RIDE WARPIG / SUPER PIG

RIDE SUPER PIG
RIDE SUPER PIG

スケートからのアプローチを上手に取り入れたのはRIDEのWARPIGシリーズ。ショートレングスで一歩リードしていますが、「ひっかかるんじゃない?」と不安になるシェイプです。ラウンドノーズ、テール仕様もみたいところですね。

WARPIGは遊びながらあらゆる地形を舐め回す様に滑れるのに対し、SUPER PIGはバンピーで荒れた場面でも、キャンバー×硬めのフレックスが走破してくれます。


K2 PARTY PLATTER

K2 PARTY PLATTER
K2 PARTY PLATTER

K2のショート・ワイドボードは、スタンスセッティングが超ツイン。ルックスはディレクショナルなので、まるでオールドスクールのプールデッキに乗っている気分になれそうです。

21-22はスケーターにとってたまらないブランドとコラボモデルが登場しました。


FJELL Mt HOKKAIDO 150

FJELL Mt HOKKAIDO 150
FJELL Mt HOKKAIDO

情報交換を重ね、ノルウェーのブランドが北海道を想像し、出した答えが150のショートワイドでした。

ショートワイドにある、ノーズの短さが解消され、ターンにも集中出来るモデルです。急斜面にも段斜面にも対応、それでいて圧雪、非圧雪も選ばない。このオールラウンド性は見た目をはるかに越えています。

太いボードに好相性のビンディング

ショートファットやショートワイドボードは、ウエスト幅が太いため、足先や踵からエッジが遠くなり、その結果、ウェストが細いボードと比べて切り返しが鈍くなりますが、その微妙な乗り味の変化をカバーできるビンディングがあります。

UNION CONTACT PRO / ULTRA LTD(18-19モデル)

ULTRA LTDがリリースされる前は、UNION CONTACT PROを頼りにしていました。CONTACT PROは、同ブランドの中でも柔軟性に長けていて、THE 420とのマッチングはバッチリ。

ULTRA LTDはCONTACT PROのベースプレートに、ハイバック、アンクルストラップが調整され、軽量な事もあり圧雪にも強い一面が感じられました。

NOW BINDING IPO / SELECT

テコの原理を利用してパワーを倍増させるNOWの独自設計スケート・テックは、ワイズのあるボードでも大きなアドバンテージが得られます。 荷重が楽にかけられるので、切り返しが楽です。

21-22シーズンより展開されるSELECT ハンガー3.0のパフォーマンスにも期待。

UNION ULTRA(22-23)

22-23シーズンに大幅リニューアルされるUNION ULTARAにも注目してください。パウダーシチュエーションでの柔らかなフィーリングが期待できます。

RIDE A-9

ファイバーグラスやカーボンのコンポジットが主流の中でメタルベースを貫くビンディングです。

ワイズのあるボードに乗せると反応がよくなるので、切り返しを求める人には良いと思います。センタリングの微調整ができる点は、他ブランドを圧倒しています。

短く太いボードは、北海道に似合う。

ショートファットの誕生以前。細く長いボードが徐々に短く太くなっていく過程に、ミッドワイドの傾向がありました。

例えば、2004-2005シーズンのニセコでよく見かけたGENTEM STICKマンタレイです。マンタレイは154cm、ウエスト25.8cm。これはまさに、今でいうミッドワイドの立ち位置です。

マンタレイは、丸山隼人プロ が監修したボードだったと記憶しています。丸山プロは、セガサターンのゲーム「ZAP!スノーボーディングトリックス’98」を監修したフリースタイラーの1人。マウントフットでのバックフリップワンカットはスノーボード史に残る1枚です。

そんな彼のフィードバックにより、GENTEM STICKのラインナップは一気にフリースタイルの空気感が持ち込まれました。

そしてもう一つ。マンタレイと同じシーズンに、故・市村慎吾プロがニセコでPEACE SNOWBOARDSを発表していたことを覚えている方もいることでしょう。

当時のボードとしては異端的に短く、太いボードです。今回の記事を書くにあたり、PEACE SNOWBOARDSはNUGの原型とも呼べるような形状だったことに改めて気付きました。

残念ながら、当時は脚光を浴びることは無かったと思われますが、ニセコの雪山で遊ぶためのボードを考え抜いた結果、2004年の時点でショートファットという答えに辿り着いていた市村慎吾プロに感服します。

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