3つのキャンバーが生み出す驚異のエッジバイト
2023年春、氷上をカービングする動画がSNSを賑わせました。
ハードバーンを得意とするNEVER SUMMERが発表したニューテック、トリプルキャンバーの動画です。
クリス・コーニングと共に開発を続けてきたというその乗り味は、急斜面のアイスバーンを物ともしない圧倒的な力強さが特徴です。
雪面が荒れていても、硬柔が入り混じっていてもノープロブレム。ボードをヒョイと立てるだけで硬い雪面に噛みついていくので、頑張って踏む必要はありません。
まさに、大きな山のTOP to BOTTOMをガンガン攻めるためのボード形状です。
ダブルキャンバーとはどれほど違うの?
ダブルキャンバーとトリプルキャンバーは、構造は違えど同系統の乗り味だと思います。
特に、ネバーサマーのボードは「板を立てれば噛む」という基本特性があるので、トリプルキャンバーならではのインパクトというよりは、ネバーサマー”らしさ”が最大値化されたイメージです。
トリプルキャンバーのボードは、基本的にはどんな技術レベルでも乗ることはできますが、MOJANEでは既存のボードに飽きてしまっている方や、ロングキャリアの方々にお勧めしたいと思っています。
様々なボードに乗った経験がある人ほど、瞬時に違いを体感でき、遊び心が刺激されるからです。
トリプルキャンバーの仕組みと効果
ダブルキャンバーボードは、両足元にひとつづつキャンバーアーチがあり、それらを踏むことでグリップを操作しました。ここまではトリプルキャンバーも同じです。
トリプルキャンバーでは、更にボードの中央(ダブルキャンバーではロッカーエリアだった股下)にキャンバーが追加され、板上に3つのウェーブがはっきりと確認できます。
平らな場所にボードを置いてみると、ダブルキャンバーはボード中央が支点となり、シーソーのように傾きますが、トリプルキャンバーは、中央のキャンバーアーチの両端2点で支えられ、ボードはピタっと安定します。
実際のライディングでは、ダブルキャンバーでは荷重を前後に移すことでエッジングのオンオフを操作しますが、トリプルキャンバーはエッジングの要点が次々と食い込んでいくような力強さと安定感があります。後方のキャンバーに頼らず、より自然なポジションで立つことができると感じました。
コンタクトポイントでグリップを操る
また、板を立てると噛む仕組みはネバーサマーの標準装備ですが、トリプルキャンバーでは噛むだけでなく、エッジ離れの良さも際立ちます。
これは、キャンバーアーチが1つ増えたことで、グリップのきっかけとなるコンタクトポイントの数も比例して増え、「噛む」と「離れる」動きへの反応が高まったためと推測します。
ノーズワイドの頂点、各キャンバーアーチの始点と終点、そしてテールワイドの頂点。これらがコンタクトポイントとなります。
各ポイントがそれぞれのタイミングで雪面にプレッシャーをかけ続けるので、ハードバーンでも安心して身を任せられ、全てのポイントが次の動きのきっかけとして使える、という仕組みです。
ちなみに、LIB TECHの波打つエッジ「マグナトラクション」は、これと同様の効果をエッジで表現したものだと考えることができます。
ロッカーとキャンバー、2タイプのトリプルキャンバー
現在、NEVER SUMMERのトリプルキャンバーは、ロッカーベースが3種類、キャンバーベースが1種類。モデルのコンセプトに適したトリプルキャンバーシステムが搭載されています。
22−23モデルとしていち早く登場したのはクリスコーニング監修のPROTO ULTRA,レイトモデルとしてVALHALLA、23−24には新たにイージー、クーガー、プロトFRがトリプルキャンバーモデルとして発表されています。
ロッカーベース
TRIPLE CAMBER
現在ネバーサマーが発表しているトリプルキャンバーのバリエーションの基本形となる、ディレクショナルのトリプルキャンバー。ロッカーとキャンバーの特性をシンプルに交互配置した構成です。
TRIPLE CAMBER TWIN
文字通り、ツインチップに搭載されるトリプルキャンバーシステム。両足下とその間にキャンバーが配置されます。
TRIPLE CAMBER FUSION
“FUSION”では、後ろ足のキャンバーアーチが深く入ります。全体的にキャンバーとロッカーがセットバックされているので、メインスタンスでのライディングで特にその力を発揮します。
キャンバーベース
RECURVE TRIPLE CAMBER
23-24に新たに登場した”RECURVE TRIPLE CAMBER”は、大きなシングルキャンバーをベースに、更に小さなキャンバーを3つ配置。別次元のエッジングを提案しています。
MOJANE PICK UP MODEL
PROTO ULTRA:スピードの限界に挑戦したいエキスパートへ
USAスロープ / ビッグエア代表 クリス・コーニングのシグネイチャーモデルです。さすがプロ仕様のハイパフォーマンスモデル。とにかくスピードが出るので、乗り手の熱量に限界まで応えてくれます。
ウエストワイドの数字(157で26.2)からは想像がつかない程のクイックネスと直進安定性は、VARIO SIDE CURVE(サイドカーブそのものでエッジがかかる仕組み)によるもの。
EASY RIDER:NEVER SUMMERの最初の1本にオススメ
NEVER SUMMERのPROTO ULTRAがハードチャージボードに対し、EASY RIDERは文字通り”EASY”な乗り心地。コンペ向けの本格派が多いフルツインチップの中では珍しいファンボードですが、単純にファンでイージーな板ではありません。
トリプルキャンバー構造によるエッジグリップとロッカーベースならではの板離れの良さ、NEVER SUMMER特有の重厚な作りに、ライトフレックス、そしてDUMPが見事に調和して、PROTOシリーズには無いリラックスした乗り心地が実現されていると思います。
ネーミングの由来があの名作映画かスラングかは定かではありませんが、本気で遊ぶ大人たちにお勧めしたい激プッシュモデルです!
VALHALLA:刺激的なフリーライディングボード
VALHALLAはトリプルロッカー”フュージョン”を備えた、超攻撃的なフリーライディングボードです。
コンディションはお構いなし。アイシーだろうが、パウダーだろうが、たとえ氷でも突き進む走破性とコントロール性能は、刺激物を欲しているスノーボーダーにピッタリ!
NEVERSUMMERでは最も硬いフレックスと表記されていますが、ULTRAよりも踏みやすく、ビギナー以外なら広く受け入れてくれる懐の深さもあります。僕はトマムやサホロで乗りたいと思い、160cmをオーダーしました。
COUGAR:遊びが詰まったカービングボードの新提案
NEVER SUMMERのトリプルキャンバーボードのラインナップでは最もカービング向きな、セミハンマーライク(だけどチップは強め)なモデルです。
PROTO ULTRAのエッジバイティングも驚きでしたが、COUGARが持つ不思議なまでの板離れの良さは、もはや言葉で表現が出来ないレベル!
正確なライン取りと、ボードの切り返しの速さは、バンクドスラロームやテクニカルなジャンルに最適です。
MOJANEでは、長年フリースタイルボードCUSTOM Xのカービング力を推してきましたが、COUGARはそれを超えるポテンシャルです。
モロのつぶやき
MOJANEにとってNEVER SUMMERのトリプルキャンバーは23-24シーズンの研究案件です。
22-23シーズンに行った試乗では、ダブルキャンバーを凌ぐエッジバイトを体験できましたが、触れられたのは表層のごく一部。限られた環境と短い時間では計り知れない面白さが眠っていると感じました。
特に検証したいポイントは「コンタクトポイントが荷重を弾く様に反応するのか?」です。
次のひと冬を通して、トリプルキャンバーの遊び方やギアマッチングを試そうと、今からワクワクしながら計画しています。