REVIEWバートンスノーボードファミリーツリー2020-2021ビッグガルプ

BIG GULP|北海道のタイトなツリーランで潜在能力を発揮!?

2020-2021 BURTON FAMILY TREE

初中級者のパウダーボード

2020-21のFAMILY TREEでは、SENSEISTRAIGHT CHUTERといった印象の強いボードに人気が集まっていますが、他にも知ってもらいたいモデルがあります。
その一つが、アメリカコロラド州、アスペンのRADIO BOARDSHOPとの共同開発で生まれたBIG GULP(ビッグガルプ)です。

BURTON BIG GULP
BIG GULP¥87.000+TAX

BURTONでは、世界各地のスノーエリアからアイディアを汲み上げる新たなプロジェクトが始まっています。
カチコチバーンが日常的なリゾートエリアにあるRADIO BOARDSHOPがBIG GULPに込めたのは、「パックされたハードバーンを楽しむ為のボード」というテーマです。
ただ、一言にハードバーンとは言っても、コロラドと北海道では雪環境も遊び方も違います。

そこでMOJANEは、BIG GULPが備えるグリップ力と総合滑走性に着目し、初~中級レベル層が楽しめるパウダーボードとして推薦することにしました。BIG GULP本来のテーマとは少し違った解釈ですが、ボードの魅力が浮かび上がって来るはずです。

北海道流のBIG GULP

BIG GULPに乗る田中岳宏

日本では、ハードバーンで技術を競うテクニカルスノーボーディングという分野が独自に発展してきました。テクニカル競技者は、有効エッジの長いハンマーヘッドやアルペンボードで硬い急斜面を高速滑走します。また最近は、ボードの全長は短めでも長い有効エッジを持つボードが人気傾向にあります。

有効エッジの効果

スノーボードの全長とは別に、エッジの長さに注目してください。ボード全長が長く有効エッジが短い場合、実際の長さよりターンの動作が楽に行えます。一方、有効エッジが長ければ、全長の短いボードでもボードが長く感じられます。スウィングウェイト(振り回し)は軽く、ターン中に荷重をかける事が容易で、体がボードに乗りやすくなる。つまり、有効エッジが長いほど、ターン中にスノーボードに身を任せる事ができる仕組みです。スペックを見る際は、スタンダードなモデルや乗ったことのあるモデルと比較するとイメージしやすくなります。また、試乗の機会があれば、チェック項目に追加しましょう。

BIG GULPを見ると、太く短めのデザインです。ウェスト幅の広さはハードバーンでの安定感とドラグ回避には役立ちますが、ハードバーンをコンセプトとしているにも関わらず、有効エッジは定番モデルCUSTOMと比較しても短いのです。例えば、181cmの僕なら推奨サイズは154。この長さで硬いバーンを攻めるには抵抗感を持ってしまいます。

「BIG GULPで本当にハードバーンを攻められるのか?」北海道での試乗会では、そのテーマを試す環境がありませんでした。それでも実感できたのは、初級者から楽しめるオールマイティ性です。
ノーズの浮力とテールの高い操作性は、パウダーボードとしても有効ですし、北海道のトリップボードを選ぶ際の候補にもなるでしょう。また、体格や足サイズが大きく、ドラグ問題を抱えている方の味方になると思います。

BIG GULPノーズフレックス
BIG GULPトーション
BIG GULPテールフレックス

名機を集約したデザイン

BURTONとRADIO BOARDSHOPのコラボレーションは今回が初めてではありません。BIG GULPでは、2018-2019のコラボ作、MISTRESS(ミストレス)とBURTONのDUMP TRUCK(ダンプトラック)を織り交ぜて完成したデザインだそうです。

また、試乗したMOJANEレビュアーからは、DUMP TRUCKの他にもSTUN GUN、GATE KEEPER、LAND ROADなど、様々な類似ボードの名前が挙がりましたが、どのモデルも同じベクトル上に並ぶ要素を持っていると思われます。

ノーズ:DUMP TRUCKのDNA

BIG GULPはショートファットボードに分類こそされないものの、かなり太めのボードです。154でウェストは26cm。これは身長180の僕が乗るサイズになります。日本人の多くが149と154の2サイズを選ぶ事となり、159以上は足の大きな人や、体格がずば抜けて大きな人に向けられています。これは2016-17に発表されたDUMP TRUCKに似たデザインです。154に乗っているはずが、158かと錯覚する乗り心地。大きなノーズと太めのウェストは、まさにDUMP TRUCKの上半身です。オーバーサイズ的なデザインはあくまでも体格を重視したものだと思います。

テール:LAND ROADのDNA

BIG GULPのテール部分は、操作性の高いLAND ROADに似ています。LAND ROADは昨シーズン”Mystely Land Road”として復活し、コアなファンを沸かせました。このボードが多くのスノーボーダーを熱狂させた理由は抜群の操作性と言えるでしょう。大袈裟なピンテールではなく、すこしラウンドさせたピン・テールが深雪での回転性を生みます。今後もこの要素は、様々なモデルに受け継がれていくと思います。

上級者には平凡すぎる?

BIG GULP に乗る竹田礼

試乗会でのBIG GULPのフィーリングは上々でした。ボードは軽く、太いウエスト特有の安定感を備えながら、長いストロークのターンが楽しめる。硬くないのでポップ感もあり、短くてもパウダーではしっかりと浮く。
こうして改めて書き出してみても、悪いところは見当たりません。ですが、じゃじゃ馬ボードの楽しさを知っているスノーボーダーにとって、クセの無い優秀なオールマイティー性が仇となり、「滑りやすいけれどつまらない」という印象になってしまうかも知れません。

オールマイティー性だけで比較するなら、HOME TOWN HEROの感動には勝てなかったというのが正直なところ。ですが、BURTONが単に乗りやすいだけのボードをFAMILY TREEから出すだろうか?BIG GULPのオールマイティ性を北海道で活かすには?という疑問が僕の中にずっと残っていました。

新たな解釈の糸口は、ハードローカル鶴さんと行った3月中旬の札幌国際スキー場で見つけることが出来ました。

北海道の3月のパウダー

BIG GULPを開花させるアイディア

昨今の北海道は、3月でもパウダースノーが楽しめる日があります。たとえ札幌市街が雨でも、山では見事な雪が迎えてくれる日があるのです。
その日も季節外れのパウダーでした。新型コロナの影響で来場者は少なく、コース内はノートラック状態。それだけでも僕は満足でしたが、国際を知り尽くす鶴さんが案内してくれたのは、コース外のタイトで深いツリーラン。起伏が激しく、ラインを読み間違えると一瞬でストップしてしまうような、そして飛べるポイントがあちこちに。
こういった状況では、スピードとボードのコントロール性能はもちろん、経験と技術、セッティングまでもが試されます。

そこでふと、試乗会での記憶と目の前の状況が結びつき、「BIG GULPはこうした入り組んだ地形で威力を発揮するに違いない!」と閃きました。
RADIO BOARDSHOPの意図とは違うかも知れませんが、BIG GULPを検討中の方は是非似たようなシチュエーションで秘めたポテンシャルが爆発する瞬間を確かめてもらいたいと思います。そしてもちろん、ハードバーンでの乗り心地も…!

BIG GULP 試乗レビュー

試乗会は、1月のキロロスキー場。ハードバーンでのテストは実現しなかったものの、北海道らしいパウダーとピステン環境での試乗となりました。テストライダーからは、パウダーやトーションでの評価が高く、ボードのコンセプトとは少し違った結果となりました。

メローでルーズに遊べるパウダーボード

BIG GULPに乗る竹田礼
Rai Takeda

パウダーでの、ノーズからすぅっと浮き上がってくる感覚は、2018-19のスタンガンに近い印象です。ノーズからキャッチしたパウダーがテールへと流れ抜けていくような、スムースな気持ち良さがあります。ソールの面を意識して乗ると、浮き感が楽しめ、レールを意識して滑ると、面乗りとは違った操作性があり、パウダーコンディションの中でも滑り方次第でテイストの違う乗り味を持ったボードでした。

スピードは、速くても遅くても対応出来ますが、若干スピードを押さえて心地良く流すような乗り方がフィットします。メローに流しながらでも浮き感があるので十分に楽しめました。高速域が得意なSTRAIGHT CHUTERに対して中・低速域が得意で横の動きにストレスがないので、ルーズに遊ぶことが出来ると感じます。

また、トラバースの途中の壁に当てに行く事も良い流れでこなせたので、バンク攻めも楽しめそうです。スイッチは、ノーズの形状やボリューム感が邪魔をしてしまいますが、180着地等には対応出来ます。グルーミングバーンでは、ボードのウェストがワイドな分、板を立たせたカービングが気持ち良く、ワイドでもターンレスポンスが軽い印象でした。

2020-21シーズンのBURTONは、大半のモデルで「ターンではしっかりエッジバイトを感じ、レスポンスは軽い」乗り味があり、カービングでのストレスがありません。BIG GULPも同様ではありますが、グルーミングばかりだと飽きてしまうかも知れません。パウダーありきかと思います。十分な浮力を備え、メローなライディングにも対応出来るので、キロロで流しながら乗りたいボードです。

竹田くんのBIG GULP採点

インパクト:6 フレックス:7 カービング:6 グラトリ:6 バンク:6 テクニカル:5 トーション:8 ジャンプ:5 スイッチ:3 パウダー:9

竹田礼プロフィール画像
竹田 礼 Rai Takeda

1986年生/181cm/58kg
レギュラースタンス
試乗ボード:BIG GULP159
試乗コース:余市1A/B
使用バイン:CARTEL X,12/-9
このボードを一言で表すなら?「パウダーありき。」


ゆっくりとエレガントに、大きく。

試乗の評価を付ける平山雅一
Masaichi Hirayama

ダンプトラック、ゲートキーパーのDNA、しかしノーズはスタンガン、テールはランドロードの様な感覚。
ノーズ側はBURTONの「ザ・ パウダーボード」といった感じで、気持ち良いフロート感があり、テール側はピステンでも大きなターンが楽しめるグリップ力がある作りで、誰でも簡単にパウダー&カーブが楽しめる良いボードでした。

「パウダー」と「カーブ」というイメージでは、ストレートシューターと同じテーマですが、ストレートシューターが縦に直線的に、かつ機敏に動くのに対して、こちらはゆっくりとエレガントに、大きく。といった感覚でしたので、同じパウダーコンディションでも幅が広く、比較的緩斜面が多い国際やルスツの様なスキー場で使いたい、と感じました。
キロロや富良野のような、横幅がそこまで広くない場所、テイネやヒラフのようなタイトなフィールド、コンディションが多様にの変化し、急斜が多いスキー場をホームゲレンデとしている方は、ストレートシューターの方がお勧出来るかなと思いました。肩肘を張らず、1日をメロウに楽しみたい方にはお勧めです。バインとの相性として、MALAVITAやGENESISが合いそうです。

平山くんのBIG GULP採点

インパクト:6 フレックス:ノーズ4・テール6 カービング:7 グラトリ:3 バンク:4 テクニカル:4 トーション:7 ジャンプ:3 スイッチ:3 パウダー:8

平山雅一プロフィール画像
平山 雅一 Masaichi Hirayama

1982年生/174㎝/65㎏
レギュラースタンス
試乗ボード:BIG GULP154
試乗コース:センターC
使用バイン:FALCOR
このボードを一言で表すなら?「パウダー&カーブ」


テクニカルなツリーランへ!

BIG GULPに乗る諸橋正太
Shota Morohashi

ハードバーンで攻めれるといった謳い文句には疑問が残りますが、来季FAMILY TREEの中でも特に癖がなく、乗りやすいボードでした。僕は159を試乗しましたが、154を乗ってみたいなと思いました。パウダーを想定すると、僕と竹田君は154で、平山君は149のサイジングだ適性だったのかもしれません。

北海道なら黒岳や札幌国際、美唄国設などの、斜度がなくパウダーがモリっとあるようなゲレンデで、楽しく乗れると思います。類似モデルはSTUN GUNやLAND ROAD、YES NOW BOARD OPTIMISTICにも似た気質が感じられます。

>諸橋のBIG GULP採点

インパクト:5 フレックス:5 カービング:6 グラトリ:6 バンク:5 テクニカル:5 トーション:7 ジャンプ:4 スイッチ:2 パウダー:10(テクニカルなツリー)

BIG GULPを持つ諸橋正太
諸橋 正太 Shota Morohashi

1982年生/181cm/75kg
レギュラースタンス
試乗ボード:BIG GULP159
試乗コース:余市1A/B
使用バイン:STEP ON


STEP ONを取り付けたBIG GULP
モロのつぶやき

僕がBIG GULPを見て思い出したのは、DEUS EX MACHINAのTHE MULE(2016-17)のアウトラインです。
THE MULEは、FAMILY TREE(2015-2016)のグラフィックを担当したサーフボードビルダー吉川”TAPPY”たくや氏が手掛けたボードだということもあり、過去のリレーションシップからアイディアの共有があったのでは?と推測してしていました。
実際には違った経緯から生まれたデザインだった訳ですが、僕は「もしもハードバーンを想定するなら、THE MULEの様に有効エッジの前後の先端にデザインされたウィングの様な、滑るためのギミックが必要ではないか」と思うのです。

また、BIG GULPがハードバーンでは不要とも思われる浮力を備えている件に関してですが、FAMILY TREEのテーマ上パウダーでの浮力は外せない条件だったのではないかと想像します。結果的にその浮力が北海道で”使える”要素となりました。因みに、BURTONの「いつでもどこでも飛べるボード」という哲学も、BIG GULPは当然クリアしています。

THE MULE

DEUS THE MULE(2016-2017)

ハンマーヘッドの様な大きなノーズとピンテール、ノーズウェスト、テールウェスト付近のウィングデザインが特徴的。
圧雪時にはウィングまでを有効エッジとして使い、ハードにカービングさせる。ノーズには浮力、テールにはコントロール性能を持たせたボードでした。
圧雪と深雪でのスノーボーディングを、サーフボードシェイパーの視点で解読したボードです。


BIG GULP DETAILS

BURTON INFORMATION
BEND: Directional Camber
SHAPE/FLEX: Directional, 12mm Taper, Twin
CORE: Super Fly II 700G Core with Dualzone EGD,Squeezebox
FIBERGLASS/BASE: Triax with Carbon I-Beam,Recycled Sintered WFO
EXTRAS: The Channel®, Super Sap® Epoxy, Balanced Freeride Geometry, Pro-Tip, Infinite Ride
ARTIST: Ty Williams ty-williams.com
PERSONALITY: 5 – 8 (Medium – Aggressive)
TERRAIN: Park: 3, Groomers: 7, Powder: 8

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