北海道の小さな山を、いかに遊ぶか。
想像力が膨らむショートワイド
北欧ノルウェーのスノーボードブランドFJELL SNOWBOARDSのシェティル(Kjetil)さんは、自身が監修するボードのコンセプトをノルウェーの山の標高で表現し、モデル名にしています。例えば、 MT1542はSKARASALEN、MT1230はFINSEといったように…。
2021-22シーズンに完成したMT1180|HOKKAIDOのテーマはずばり北海道のパウダースノー!1180はノルウェーの山FINGERENの標高です。
このボードを形状で分類すると”ショートワイド”になりますが、乗り味はとても個性的。「マウント北海道」という1つのジャンルになる、と言っても大げさではありません。
北海道が誇る大規模リゾートはもちろんのこと、ハイシーズンのぴっぷや美唄、かもい岳、ニセコモイワといった、僕らの大好きな中規模ゲレンデが最高の遊び場になります。
150cmワンサイズの板に遊びの要素を、全て。
この冬、多くのMOJANEユーザーにMT1180|HOKKAIDOのサンプルボードを試乗していただきました。
短くて太いパウダーボードには十分慣れ親しんでいるはずの北海道ローカルが一様に驚いたのは、想像以上のスピードとターン性能です。
少しのパウダーでも深雪でも、万能に効く浮力。壁遊びや地形をこなす軽快さと安定感。大小自在なターン。パウダーと圧雪の境界を軽やかに越えて、ぐんぐん加速していきます。
盛りだくさんの要素が、これほどシンプルなボードデザインで実現できるなんて!スイッチこそ不向きですが、北海道のパウダーシーズンを滑る冒険ボードとしてはパーフェクトの域です。試乗者・購入者のレビューは後日UPします。
大きなターンもできるパウダーボード
多くの方に親しまれたショートファットの代表といえば、YES.THE420です。その浮力は、感動的ですらありました。
斜度やスピードがなくてもフワ~っと浮き、地形でのオーリーもかけやすい。まるで筋斗雲のようなボードです。ただ、その性能は今や全てのショートワイド~ファットボードが持つ基本性能となりました。
MT1180|HOKKAIDOにも、やはり同様の浮力と、パウダー上でも機敏に動ける操作性が備わっています。圧倒的な違いは、長いボードに乗っているかの様なダイナミックなターンまでが楽しめること。
パウダー上での小刻みなターン、ツリーを切り裂いていくターン、沢や地形をトレースしていくターン、大きなターン、どれをとっても面白く進んでいきます。THE420の様なスイッチスタンスが難しい分、メインスタンスでの楽しみ方を追及しているモデルです。
数字だけでは見抜けない!独特のサイドカーブ
FJELLのボードは一見シンプルですが、どのモデルもサイドカーブが綿密にデザインされています。
MT1180|HOKKAIDOのサイドカーブは7.2m。ノーズの強いカーブと、テールの流れるようなカーブが150cmという短いボードの中で融合しています。ボードをウェストから上下に分けて考えると、全く別のボードのようです。この大胆なサイドカーブが、素早い動きと多様なターンを生み出すのでしょう。
ちなみに、FJELLのフラッグシップモデルMT1543にも、同様のサイドカーブが採用されていました。MT1543はとにかく速いボードです。MT1180|HOKKAIDOのスピードも、サイドカーブからの影響があるのかもしれません。
地形をなぞるハイブリッド形状
MT1180|HOKKAIDOはローキャンバー、ローロッカーのハイブリッド構造です。
ロー・ロッカーの特徴は、パウダー上で加速すること。「ロッカーがないからノーズが埋まりやすいのでは?」という心配は無用です。MT1180|HOKKAIDOの大きなノーズは、埋まる暇を与えません。
ブワっ!と全体が浮くのではなく、常にノーズの先端が雪の上から出ている状態です。前を踏んでも沈まず、圧雪での荷重バランスそのままでパウダーに入っていく事ができます。
ロッカーが交わるハイブリッド形状のボードの多くは、どこかしらにフラット部分があったり、プレスが雑だったり…。直接乗り心地に影響しないものもありますが、FJELLが生み出すこの綺麗なロッカーとキャンバーベンドの融合には、ブランドの美学と技術力を感じます。
ノーズとテール、異なるフレックスで操作する
MT1180|HOKKAIDOはノーズが柔らかくテールが硬い、ディレクショナル・フレックスを採用しています。
ノーズの柔らかさは、雪面の起伏をいち早く捉えて対応してくれます。そして、テールに向かうにつれてフレックスは硬くなり、オーリーや圧雪テレイン、壁への当て込み、パウダースノー上での回転力をサポートしてくれます。
このテールフレックスは、室内で触れるだけでは硬すぎるように感じるかもしれません。実は僕自身、ちょっと不安な硬さでしたが、乗ってみるとこのフレックスがボードを印象的な乗り味にしていることを直ぐに理解できました。
特にオーリーが決まった時の浮遊感は、パウダーボードの枠に収まらない楽しさです。
ノーズとテールの感触
ノーズ:雪をかき分けて捉える感覚。ノーズを丸ごと操作している感触。
テール:短く引っかからない。素早く反応し、板が返る。
NOWのスケートテックと相性抜群
この、特別なパウダーボードに合わせるバインについて、僕の感想を残しておきます。
ハンガー3.0にリニューアルされたNOWのSELECTは特に相性の良いモデルだと思います。
スケートテックは、太いウェストのボードでも反応しやすくコントロールが鈍りません。両足で踏み込めるMT HOKKAIDOに、NOWのスケートテックを合わせれば、ロングターンからクイックな動きまで、思うままに操作できるはずです。
また、NOWバインディングに付属するハイカップのみでMT HOKKAIDOを楽しむ事もできます。僕は前足にハイカップ、後ろ足はハイバックという設定で、膝上30cmのディープパウダーを狙います。
MT1180|HOKKAIDOが誕生するまで
シェティルさんから初めてこのボードのプランを聞いたのは、2020年。ちょうど、STRAIGHT CHUTERやSENSEIが発表され、ナローボードのリバイバルが新鮮だった頃です。
メールに添付されていたのは、150cm/ウェスト幅27cmのアウトラインが描かれたファイルでした。
その時の北海道は、THE420が巻き起こしたショートファットブームがすっかり鎮火し、僕自身「ショートファットやショートワイドにこれ以上の感動は無いな…」という心境でした。どのブランドも代わり映えしないシーズンが続いたこともあり、パウダーボードへの好奇心よりも、圧雪で遊ぶ方向に興味が移っていたのです。
僕はシェティルさんに、ショートファット系のボードが日本で大流行した経緯と、北海道特有の自然環境やスノーボード事情を細かく伝えました。
北海道といえば、ニセコや旭岳といったビッグマウンテンのイメージがある一方で、中規模で斜度のないゲレンデが全道に多く点在し、ローカル達はそんな山々で遊んでいること。ゲレンデ内でツリーランが楽しめるので、とにかく浮力が大切だということ。そして、パウダースノーを圧雪した柔らかなピステンバーンが最高の贅沢だということも。
ノルウェーと北海道では、気候も環境も遊び方も違いますが、上質なパウダースノーを知るスノーボーダーという点は同じです。僕たちはその共通点を掘り下げるように、意見交換を続けました。
そして、完成したのがMT1180|HOKKAIDOです。
フィヨルドのピュアバックカントリーをプレイグラウンドとするシェティルさんが、北海道のゲレンデをどのように滑ろうと考えたのかが伝わるボードです。そんな、クリエイティブな乗り心地を是非皆さんに体験していただきたいと思います。
因みに、シェティルさんはまだ北海道に来たことがありません。もしかすると、その客観的な視点があったからこそ生まれた乗り味なのかもしれません。
北海道のスノーボードシーンに興味と敬意を持ってくれたFJELL SNOWBOARDSに感謝します。
INFORMATION
FJELL SNOWBOARDSの各モデルはMOJANEで展示・販売中です。ご予約も随時承っております。
MT1180|HOKKAIDO SIZE:150 PRICE:¥95.500+TAX
本記事を読んでから、MT1180|HOKKAIDO に興味があります。実製品を見たいのですが、国内取扱先はMOJANE様だけでしょうか?関東在住のため、関東近辺で取扱店があれば教えて頂きたく宜しくお願い致します。
増田良平 さん
コメントありがとうございます。FJELL SNOWBOARDSは現在日本でMOJANEのみの取り扱いです。通販も承っておりますが、現物をご覧いただけるのは店頭のみとなります。1年中展示販売しておりますので、札幌にお越しの際は是非ご来店いただければと思います。